8 / 65
第05話 転生陰陽師は禍津日を取り込む
しおりを挟むどうやら俺、安部春秋は無事?赤子に転生したらしい。
誕生時の百鬼夜行は無事討伐され、その時の俺の活躍はある意味うやむやになったようだ。
残念な点を挙げるなら、その時使った『力』の暴走で、今『力』が使えないことだろうか。
いって怪我みたいなものだから、その内治るけどね。
結果、現在なんのとりえもない稚児として生活している。
元服を経験している身からすると、稚児と言うのはとにかく頭が重い。重心が上にあるので動作が不安定になる。
できることといえば音の出る玩具を握り、頭上を回る玩具にも興味を示すフリをし愛嬌を振りまく。それが今の俺の日課だ。
「あー?(ん?) ころころ?(なんだあれは?)」
天井や畳の隙間から奇妙なモノが染み出すように現れ、もちょもちょと何だか重そうに動いている。
やがてそれは球体となり、光る珠のようなにフワフワと漂う。
色彩はさまざまで赤、青、黄、緑、茶と綺麗なものだ。
「みりっほー?(禍津日?) な、ぶんぶんぶんぱー(いや、それより下の雑魚かー)」
分っていたけど舌が回らない。
低級はほとんど無害とは言え、祓えるものなら祓っておいた方が良いのも事実。
呪術になる前の『力』は使えず、呪術を発動しようにも呪詞《じゅし》も印相《いんそう》も使えない。
指は握ることしかできず、まだ喋れないからね。
こうなると幾ら前世が陰陽師でも無力なんだよな。
ぼーっとそんなことを考えていると、いきなりその内の一つが口の中に侵入してきた!
「あ、あえおぉぉぉぉぉおおおおッ! (や、やめろぉぉぉぉぉおおおおッ!)」
それは固形物と液体の中間の硬さで、酷い味と匂いがする。
吐き出そうとするも、もぞもぞと動き体内に侵入しようとする速度は早い。
息が……
喉の奥へと入っていき、気が付けば苦しさのあまり反射的に飲み込む行動を取ってしまう。
ごっくん。
呑んでしまったぁぁあああああッ!
「ぎゃぁぁあああああああああああああぁぁっぁっぁぁぁぁっぁああああああああああああああああああああ――――ッ!!」
元服して何年もたった男子としての理性を捨てて叫び、泣き喚く。
「オロロロロロロ――」
「な、直毘人どうしました?」
お手伝いさんは俺を揺すると、吐いていることに気が付いたのか表情が変わる。
「吐いてる……うそッ お医者さま! 誰かー」
お手伝いさんは叫ぶ。
シャン、シャン、シャン。
玩具の中に入っているビーズのようなものが鳴っているのだろう。正直に言ってうるさい。
なんか急に眠たく……
腹が激しく痛んだ。
「ほんぎゃぁ! (いっ――ってぇ!)」
痛みに耐えかね涙が流れる。
「今、お医者さまをお呼びしましたから頑張ってください」
痛い!
痛いと言うかむしろ熱い。刺されたときのそれに近い。
前世で犬型の禍津日に噛まれた時に勝るとも劣らない痛みが内側から外側目掛けて広がっていく。
滝のように汗が吹き出し、体液という体液が穴という穴から漏れる。
呼吸は次第に早く、浅くなり、ただでさえ見えづらい視界は深酔いした時のようにあやふやなものとなる。
俺はその感覚に覚えがあった。
死が迫っている。
嫌だ、死にたくない。
死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。
クソ! 飲み込んじまったアレが蟲みたいに、腹の中で暴れているのか?
冷静に分析していると、胃を針で突き刺すような激しい痛みに襲われる。
表現が難しいが、触れられてはいけない場所を、強引に触れられるようなそんな感覚だ。
クッソ! 十王の加護は働いてないのかよ! 寄生したり乗っ取るタイプの禍津日(マガツヒ)だったのかも……
こんなところで死んでたまるか! 二度目の人生を、俺は物欲にまみれた幸せな人生を生きるんだ!!
うまい食事を食べて高価なモノを使って、美人な嫁とともに暖かな家庭を築くんだ!! それまでは死んでも死に切れない!
前世では諦めていたそれらを思い出す。
苦しみから逃れるため神仏に祈り、全身のありとあらゆるカ所に力を入れ、心の中で叫んだ。
うぉぉぉおおおおおおおおおおおおお!! 目覚めろっ! 俺の加護と呪力ぅぅぅううううううううううううう!!
しかし、何も起こらない。
もうだめなのか……諦めかけたその瞬間だった。
「直毘人くんが……」
そこにいたのは母だった。
俺を一瞥するとこう言った。
「……精霊に当てられたようね。救急車の手配は?」
「は、はい、既に……」
「であれば、できることは呪符を使うことぐらいかしら」
お札が緑色に光ると、体が楽になる。
痛みは耐えられるレベルにまで収まり、放熱感もほぼなくなった。
「すぐに儀式の用意を……」
「は、はい」
何事かと駆け付けていたお手伝いさんに命令すると、俺は運ばれる。
家からほど近い寺社のようだ。
「御当主さま……」
「無駄話はいい。精霊を取り込んだそうだからな。
早く儀式をして病院に運んだ方が良い。
既に手筈は整っておる。
10
あなたにおすすめの小説
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
転生者は冒険者となって教会と国に復讐する!
克全
ファンタジー
東洋医学従事者でアマチュア作家でもあった男が異世界に転生した。リアムと名付けられた赤子は、生まれて直ぐに極貧の両親に捨てられてしまう。捨てられたのはメタトロン教の孤児院だったが、この世界の教会孤児院は神官達が劣情のはけ口にしていた。神官達に襲われるのを嫌ったリアムは、3歳にして孤児院を脱走して大魔境に逃げ込んだ。前世の知識と創造力を駆使したリアムは、スライムを従魔とした。スライムを知識と創造力、魔力を総動員して最強魔獣に育てたリアムは、前世での唯一の後悔、子供を作ろうと10歳にして魔境を出て冒険者ギルドを訪ねた。
アルファポリスオンリー
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。
ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。
剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。
しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。
休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう…
そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。
ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。
その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。
それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく……
※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。
ホットランキング最高位2位でした。
カクヨムにも別シナリオで掲載。
転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚
熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。
しかし職業は最強!?
自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!?
ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。
序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた
砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。
彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。
そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。
死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。
その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。
しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、
主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。
自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、
寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。
結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、
自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……?
更新は昼頃になります。
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる