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第05話 転生陰陽師は禍津日を取り込む

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 どうやら俺、安部春秋は無事?赤子に転生したらしい。
誕生時の百鬼夜行は無事討伐され、その時の俺の活躍はある意味うやむやになったようだ。
残念な点を挙げるなら、その時使った『力』の暴走で、今『力』が使えないことだろうか。

 いって怪我みたいなものだから、その内治るけどね。

 結果、現在なんのとりえもない稚児として生活している。
元服を経験している身からすると、稚児ややこと言うのはとにかく頭が重い。重心が上にあるので動作が不安定になる。

 できることといえば音の出る玩具を握り、頭上を回る玩具にも興味を示すフリをし愛嬌を振りまく。それが今の俺の日課だ。


「あー?(ん?) ころころ?(なんだあれは?)」

 天井や畳の隙間から奇妙なモノが染み出すように現れ、もちょもちょと何だか重そうに動いている。  
やがてそれは球体となり、光る珠のようなにフワフワと漂う。  
色彩はさまざまで赤、青、黄、緑、茶と綺麗なものだ。

「みりっほー?(禍津日?) な、ぶんぶんぶんぱー(いや、それより下の雑魚かー)」

 分っていたけど舌が回らない。  
低級はほとんど無害とは言え、祓えるものなら祓っておいた方が良いのも事実。  
呪術になる前の『力』は使えず、呪術を発動しようにも呪詞《じゅし》も印相《いんそう》も使えない。
指は握ることしかできず、まだ喋れないからね。

 こうなると幾ら前世が陰陽師でも無力なんだよな。

 ぼーっとそんなことを考えていると、いきなりその内の一つが口の中に侵入してきた! 


「あ、あえおぉぉぉぉぉおおおおッ! (や、やめろぉぉぉぉぉおおおおッ!)」  

 それは固形物と液体の中間の硬さで、酷い味と匂いがする。
吐き出そうとするも、もぞもぞと動き体内に侵入しようとする速度は早い。

息が……  

 喉の奥へと入っていき、気が付けば苦しさのあまり反射的に飲み込む行動を取ってしまう。  

 ごっくん。  

呑んでしまったぁぁあああああッ!  

「ぎゃぁぁあああああああああああああぁぁっぁっぁぁぁぁっぁああああああああああああああああああああ――――ッ!!」

 元服して何年もたった男子としての理性を捨てて叫び、泣き喚く。

「オロロロロロロ――」

「な、直毘人どうしました?」

 お手伝いさんは俺を揺すると、吐いていることに気が付いたのか表情が変わる。

「吐いてる……うそッ お医者さま! 誰かー」

 お手伝いさんは叫ぶ。
 シャン、シャン、シャン。
 玩具の中に入っているビーズのようなものが鳴っているのだろう。正直に言ってうるさい。

なんか急に眠たく……

 腹が激しく痛んだ。

「ほんぎゃぁ! (いっ――ってぇ!)」

 痛みに耐えかね涙が流れる。

「今、お医者さまをお呼びしましたから頑張ってください」

 痛い!

 痛いと言うかむしろ熱い。刺されたときのそれに近い。
 
 前世で犬型の禍津日マガツヒに噛まれた時に勝るとも劣らない痛みが内側から外側目掛けて広がっていく。
滝のように汗が吹き出し、体液という体液が穴という穴から漏れる。

 呼吸は次第に早く、浅くなり、ただでさえ見えづらい視界は深酔いした時のようにあやふやなものとなる。  
 
俺はその感覚に覚えがあった。  
 死が迫っている。
 
嫌だ、死にたくない。

死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。

クソ! 飲み込んじまったアレが蟲みたいに、腹の中で暴れているのか?

 冷静に分析していると、胃を針で突き刺すような激しい痛みに襲われる。  
 
 表現が難しいが、触れられてはいけない場所を、強引に触れられるようなそんな感覚だ。

クッソ! 十王の加護は働いてないのかよ! 寄生したり乗っ取るタイプの禍津日(マガツヒ)だったのかも……

こんなところで死んでたまるか! 二度目の人生を、俺は物欲にまみれた幸せな人生を生きるんだ!!

うまい食事を食べて高価なモノを使って、美人な嫁とともに暖かな家庭を築くんだ!! それまでは死んでも死に切れない!

 前世では諦めていたそれらを思い出す。  
 苦しみから逃れるため神仏に祈り、全身のありとあらゆるカ所に力を入れ、心の中で叫んだ。

うぉぉぉおおおおおおおおおおおおお!! 目覚めろっ! 俺の加護と呪力ぅぅぅううううううううううううう!!

しかし、何も起こらない。

もうだめなのか……諦めかけたその瞬間だった。

「直毘人くんが……」

 そこにいたのは母だった。  
 俺を一瞥するとこう言った。

「……精霊しょうりょうに当てられたようね。救急車の手配は?」

「は、はい、既に……」

「であれば、できることは呪符じゅふを使うことぐらいかしら」

 お札が緑色に光ると、体が楽になる。  
 痛みは耐えられるレベルにまで収まり、放熱感もほぼなくなった。

「すぐに儀式の用意を……」

「は、はい」

 何事かと駆け付けていたお手伝いさんに命令すると、俺は運ばれる。  
 家からほど近い寺社のようだ。

「御当主さま……」

「無駄話はいい。精霊を取り込んだそうだからな。
早く儀式をして病院に運んだ方が良い。
既に手筈は整っておる。
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