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第25話 転生陰陽師と嵐の前の

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『本日のニュースです。本日午前十時頃東京西部で穢度えどは6.5の大禍津日オオマガツヒ『牛鬼』が出現しましたが駆けつけた吉田直毘人・特級魔術師によっておよそ三分で修祓されました。と……これは大変なことですよね?』

 司会の名物アナウンサーがコメンテーターに話題を振る。

「そうですね。吉田魔術師は最年少で特級に任命された逸材ですから、三分での修祓はおかしなことではありません」

『はい。ありがとうございます……どうして他のケースでは即時修祓ができないのでしょうか?』

「基本的にはできません。救急車のような緊急車両でも到着まで平均15分かかると言われています。それは魔術師も同じです移動手段は、車やヘリ、式神あるいは術、肉体です。しかし吉田魔術師は霊脈を用いた移動術『禹歩《うほ》』が使えるので霊脈上であれば高速で移動できます」

『その『禹歩《うほ》』なんですが……そんなに難しいんですか? 多くの魔術師が出来れば即時解決に繋がると思うんですが……』

「『禹歩《うほ》』は中国の道教や日本の陰陽道でも伝えられてきた技ですが、難易度が高く使い手が少ないのが現状です。使い手の中でも土地神の神力を用いて使えるとか、限定的な条件でのみといった人間が殆どです。息をするように使えるのは仙人ぐらいのものですよ。それによしんば使えたとしても魔力切れになったら意味がありません」

『はい。ありがとうございます続いても、吉田魔術師のお話なんですが……魔道科高校へ入学されるそうですね? 特級ともなれば国の戦力と言っても過言ではありませんが婚約者問題はどうなっているのでしょう?』

「陰陽三大宗家の土御門、倉橋、勘解由小路の三姫との婚約は有名ですが、国内外問わず婚姻の申し出が絶えないそうですよ? 関係者の話によると魔道科高校へ編入あるいは進学している十三家の方は多いですから……」

『十三家からも打診があるとは……しかし一人の男が複数妻を持つというのはどうなんでしょう? 一般的ではありませんよね?』

「ええ、しかし明治期の法改正時にも議論された問題ですが法解釈で問題ないと結論が出ています。ただでさえこの国は【黄泉津大神ヨモツオオカミ】が『葦原中国《トヨアシハラノナカツクニ》』――現世に放った呪いと三〇年続く不景気で、少子高齢化が進んでいますからそれに抗うという意味でも意義のあることです」

『不謹慎な発言ですけど男としては羨ましい限りです』

「世界を統べる王のような十三家から狙われるのは、私は勘弁願いたいですね……それにもし十三家から声がかかる場合は婿入りでしょうね」

『吉田家は日本の魔術師一門ですが海外へ移住するなんて可能性はないのでしょうか?』

 別の専門家が割り込んで答えた。

「可能性としては十二分にあるでしょう。吉田家は徳川幕府の元で天文方――まあ簡単に言えば陰陽師のようなことをしていました。そして現代でも武器を使った魔術師は軽んじられる傾向にあり、日本古来の魔術である『鬼道』の流れを汲んだ呪禁道を用いる吉田家にとって、賀茂氏の祖先と言われる吉備真備が行った呪禁道を潰し陰陽道に編入させた行為は許せるものではないでしょう……」

『しかしそれは千年以上も前のことなのでは?』

「正確には1200年ほど前の話です。例えば京都人に「先の戦」といえば500年以上昔の「応仁の乱」のことを言うそうです。時間の感覚が我々とは根本的に異なるのです」

『……』

「なので日本としては吉田・特級魔術師にいかにして残ってもらうのか? こういった部分が大切になると思います」

「愛国心があれば残るでしょ?」

 コメンテーターが頓珍漢なこと言う。

「不当な冷遇を受ければ居を移すのは当たり前です。ヨーロッパ全土からアメリカに新教徒と伝統魔術師――俗にいう魔女が移住したように」

「私からすると、十五年も住んだこの国を捨てるなんてありえないね!」

「そうでしょうか? 活躍できる人材も企業も既に海外進出しています。国内有数の魔術師でも海外で活動する方は多いですよ? 海外はインフレで報酬が多いですから、日本から出たこともないのに日本凄い海外は駄目って言っているのは滑稽ですよ? そのまた逆もそうですが……」

「……」

「それに現代では武器を使う魔術師というのは珍しくありません。日本の魔術師の内8割以上が何らかの武器を用いて修祓を行っています。これをバカにするのは愚かです」

「しかし危ないでしょ。銃刀法の埒外にいる人間なんて……」

「魔術師は不可視の拳銃を既に持っていますよ? 見える武器一つで今更何が変わるというのでしょう?」

 放送事故スレスレの生放送は続き、この番組は珍しくSNSのトレンドに乗ることになる。






イギリス・某所

 豪勢な室内では壮年の男性と、十代中頃の若い娘が話をしていた。

「予定通り日本の魔術学校に通ってもらうことになった」

「異論はありませんわ」

「我ら『十三王家』は人類の守護者でなくてはならない」

「分かっています。吉田直毘人を伴侶とすることが目的の留学ですよね?」

 『十三王家』とはいうもののその血統の由来は明確でないものが多い。
 かく言う我がペンドラゴン家もそれは例外ではない。
 来歴がハッキリしているのなんて半分も居なかったと思う。

「その通り! 王家はその子弟を既に学園に送り込んでいるお前も気をつけなさい」




フランス・パリ某所

 夜景が美しいと評判の老舗の三ツ星レストランの客は疎らだった。
 時間と曜日からして満席であるハズの客席には一組しか席におらず。接客に慣れた従業員にも緊張感が走っていた。

「言付け通り日本の魔術学校に通うのよね?」

「ああそうだ」

「ナオビト・ヨシダを伴侶として連れ帰れ」

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