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第13話

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「ジュリョクはコめられた?」


「だいじょうぶ」


「できた!」


 と三人とも難なく出来るようだ。

血統の成せる技と言ったところだろうか?


「じゃあわたしがオニをやるね」


 最年長のミナトちゃんが自ら鬼役を買って出る。
 クマの人形は二足歩行で走りだした。
 狐は四足で駆け出し、よくわからない鳥は飛びペンギンはえっちらおっちら走り出した。

 完全な式神術ではないらしく、呪力の糸が四肢を操っている。

有線の傀儡、無線の式神と言う感じだろうか? 技術として残っているのだから何かしらの有用性があるんだろうけど……


「まてー」


 そんなことを考えながら、クマの猛攻を避ける。
 なかなかの速度だ。
 あれだけ速度と細かい命令を出してガス欠にならないのは、先ほど見せて貰った呪力量で納得からも納得できる。

 鬼に自ら名乗り上げたのは、自分の腕に自信があったからだろう。
 恐らく式神鬼ごっこ自体降魔師こうましの子供の間ではメジャーな遊びで呪力操作《ぎじゅつ》と呪力量《たいりょく》を向上させるのに丁度いいのだ。

 でも、同年代では恐らく圧倒的な実力を持つ彼女に並ぶ存在はここにいる四人ぐらいだろう。
 それはあまりよくない。
 挫折の経験は早いうちに経験した上で乗り越えた方が、自己肯定感が養われる。

 幼少期にスクールカースト上位の奴が比較的成功しやすいのは、自己肯定感……成功体験が養われているからだ。
 勉強でもスポーツでも成功体験は他の分野にも役立つ、年上に負けても仕方がないと言い訳が立つだけど……圧倒的な呪力量を持つとはいえ俺に負ければミナトちゃんは俺の事をライバル視するようになる。

 ということで間一髪の回避を続けることにした。


「もう! なんでつかまらないのよ!」


 胸で床を滑り加速し避ける。
 移動速度順で言えば、狐《セオリ》・ペンギン《俺》、熊《ミナト》、鳥《イブキ》となるものの、鳥《イブキ》は飛べるためあまり不利になっていない。


「こっちきた」


ミナトちゃんがおこったぁぁああああ」


 呪力さえ込めればイメージ次第で空だって飛べるのが式神だ。しかし実力の無い3~5歳児にはそこまでの芸当は難しいようだ。

 ミナトが操るクマの縫いぐるみは速度を上げた。
 二足歩行から四足歩行に変化したクマの縫いぐるみは素早く、今までは距離を取れたカーブでも食らいついて来る。

 先にガス欠寸前になった二人はなけなしの呪力を込め、一人は空へ、一人は自慢の脚で駆け抜ける。
 どうやら俺は追い詰められたようだ。


「おいつめたわよ」


 ドヤ顔でそう言った彼女には申し訳ないが俺には奥の手がある。
 ペンギンの縫いぐるみは空を飛んだ。


「うそ」


 イメージ力と圧倒的呪力量によって実現する。
 飛行ならぬ空中水泳はペンギンの移動速度を、先ほどまでとは別次元のモノへと昇華させる。


「ずるい」

 
 ミナトちゃんは地団駄を踏んだ。
 少し危ない所だった。
 縫いぐるみが飛べると信じることが出来なければ追いつかれていた。
 現作の事もあるしもっと訓練をつまねば……

 俺とミナトちゃんとの接戦(に見える)鬼ごっこは、周囲の大人も子供も関わらず視線を奪っていた。
 あんぐりと口を開けている。
 

「凄い……勇樹《ユウキ》……」


 人形の操作を忘れ俺の術に見惚れているようだ。
 その声は周囲の人間の声を代弁しているかのようだった。
 才気溢れる五歳児にとっての初めての挫折は強烈なようで……


「つぎはわたしがいちばんなんだから!」


 と涙交じりに宣言する。
 皆のお姉ちゃんとしての意地が、癇癪を起させなかったのだろう。
 着飾った洋服の袖で涙を拭う。
 真っ赤に腫れた目元のままこう宣言した。


「まけないんだから、はやくつぎやるわよ」

「「うん」」


 少女達は返事を返すと人形を操り始める。
 子供特有の自己中心的な心ではなく、周りまでキチンと見えておりオマケに配慮まで出来るミナトちゃんの凄さに恐れおののいた。
 転生者として経験を元にしたニセモノとは違って、生来の人気者なんだと理解した。

 二度目の人生だから上手くやれる。

 それは攻略本を片手にゲームを遊ぶようなものなのだ。

知っているから出来る・・・・・・・・・・

 つまり、応用性の無い人間でしかない。

 全く羨ましい限りである。
 人間性や性格は変えられない。
 行動の基準を変える事で疑似的にそれらを変えることは出来ても、それは外側だけ仮面を外してしまった中身は醜いままだ。

集中力の問題か、呪力操作《ぎじゅつ》や呪力量《たいりょく》の問題だろうか? 俺以外の少女達は代わる代わる鬼が交代していく。


 やはり俺は異物なのだ。
 少女達は切磋琢磨し互いを高め合う。
 しかし、俺は中身は大人、呪力だって多分超越者の力でかさましされただけ……例えるならおからやパン粉でかさましされたハンバーグと言ったところだろう。
 
 前世なんてなければ俺も彼女達と対等に遊べただろうに……


「勇樹《ユウキ》くんもあそぼ? でもそらをとぶのはなしだよ」


 俺の心を知ってか知らずかそんな言葉を掛けてくれる。


「あれはずるいもん」


「ペンギンのうごきリアルだねー」

 
 彼女達はそう言って俺の手を引いてくれる。
 それはまるで私たちの一員なのよ。と言って貰えたみたいだ。
 今世で生を受けて三年と少し……初めて自分を受け入れられた気がした。


「でしょー、もうとばないよ」


 この子達となら婚約してもいいかな? 上から目線かもしれないけれど、そう思えた。
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