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第14話返却
しおりを挟む随分と軽くなった台車を引いて、整備され石畳の道路を歩き冒険者ギルドへと向かう。
冒険者ギルドの買い取り帳場《カウンター》は絶賛閑古鳥が鳴いており、俺以外に利用者は居ないようだ。
「依頼の受注書と冒険者ギルドの登録証、そして納品物をご提示ください」
無表情な女性職員は淡々としたした声で定型文を述べる。
目線は相変わらず帳場内の書類に釘付けだ。
「台車の返却と、納品に来たんですが……」
俺がそう言うと顔を上げ、立ち上がると台車を覗いた。
「エドワードさん(俺の冒険者としての名)。お疲れ様です。
台車に大瘤猪の肉が見えませんが、やはり食べられていましたか?」
「いえ。氷魔術のお陰で無事でしたが……近くの肉を紺鎧熊が捕食していたので倒したんです。で、ここへ持ってくる途中知り合いに肉屋が買い取ってくれたんです。なので台車の返却と紺鎧熊の毛皮の買い取りをお願いします」
「そうですか……では毛皮を鑑定しますのでその間に台車の掃除をお願いします。向こうに井戸があるのでそちらでお願いします。汚い状態だと返金金額が下がってしまうので悪しからず」
「分かりました」
早速魔術で水を操り前世のテレビショッピングで見た。高圧洗浄機を再現する。
試しに汚れたレンガに噴射するが、一瞬で黒ずんでいたレンガが綺麗になる。
「うん。使う機会がなかったから初めて試したけど存外上手く行くものだ……さてこのままだと俺の服が汚れてしまうから気流を操って汚水を制御しよう……」
モンスターの血と脂が沁み込んだ台車に、高圧洗浄魔術で水を放ち脂と血を落としていく……
うん。凄く便利だ。魔剣じゃなくて魔道具を作るのも便利そうだ。
暫く噴射し、汚れがある程度落ちたところで、台車を持って帳場に戻る。
「もう終わったんですか?」
「えぇ」
「あ、本当だ。随分と綺麗になってますね……掃除用の魔道具でも持ってるんですか?」
「えぇまぁそんなところです」
俺は誤魔化すように微笑んだ。
「では紺鎧熊の毛皮の買い取り金額が5万ゼニー。台車を無事返却頂いたので6万ゼニーそのままのお返しとなりますので、合計11万ゼニーです。
あなたは適性依頼以上のモンスターばかりと戦っているので、あと一回適正依頼以上の依頼達成で次の階級に上がれます。なので頑張ってください」
この世界の冒険者にも、階級がある事を今初めて知った。
「は、はぁ……」
「もしかして説明を受けていませんか?」
「はい。お恥ずかしながら……」
「では説明しましょう。冒険者は英雄級ともよばれる。神剛鉄級冒険者を最上位として構成されていて上から、
SSSランクの神剛鉄
SSランクの神硬銅
Sランクの魔法銀
AAAランクの白金
AAランクの黄金
Aランクの白銀
Bランクの黒鉄
Cランクの赤銅
Dランクの水晶
Eランクの玉石
Fランクの木片
――――となっていて、なぜAAAとかAAとか文字を重ねるのかと言うと、昔冒険者ギルドに援助を依頼してきた領主が「こんな低ランクの冒険者を送って来て舐めているのか?」と大激怒されたそうでだったら、「ランクを相対的に上げてやれ」という当時のお偉いさんの鶴の一声で、現在の紛らわしいシステムになったんです」
「なるほど……」
でもSSS位階冒険者とか、近年のWEB小説感があって俺は好きだ。チートスキル○○とか、SSSSランクスキルとかそう言う流行を感じる。
「現在F位階……木片級冒険者のエドワードさんは、一つ上の位階のE位階玉石級までの依頼を受ける事が出来ます。
昇級するためには、F位階の依頼を合計10回失敗せず達成するか、E位階の依頼を合計5回失敗せず達成すればいいんです。
まぁエドワードさんの場合は、紺鎧熊の討伐と先日の討伐で、次回来ていただいた時には昇級していると思うので安心してください」
「説明ありがとうございます」
「いえ。説明不足の同僚の尻拭いをしただけです。階位は上昇する度に冒険ギルドからのサポートが手厚くなるので、積極的に上げる事をお勧めします。今回の様に肉などを業者に卸す場合。討伐によって与えられる貢献度しか得られないので、昇級が後回しになってしまいます。エドワードさんの実力なら、そう言った政治を跳ね除ける事が出来ると思いますが気を付けて下さい」
「ありがとうございます」
俺は丁寧な説明の言葉に感謝を告げて冒険ギルドを後にした。
今晩は、第9話ギルドへの帰還俺を案内してくれた男女二人組の冒険者とご飯に行くのだ。
血や汗を流してからでないと失礼に当たる。折角の機会だ。
湯屋にでも寄って汗を流すか……こうして俺の次の目的地は湯屋に決まった。
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