悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗

文字の大きさ
32 / 71

第31話昇級戦・初戦中

しおりを挟む



「東はジャックソン・フォン・ナッシ! 対する西はアーノルド・フォン・クローリー! 両者互いに卑怯な手段を用いないことを国王陛下及び神に誓うモノとする……」

 審判役の教師が決まり文句を口にする。

 まるで決闘みたいだ。 胸が高鳴る。
 イーリアスで語られる兜煌かぶときらめくヘクトールと、俊足のアキレウスなどの英雄同士の対戦は、胸が熱くなるものがあるが……この見るからに雑魚と俺の戦いが、その偉業に並ぶとは到底思えない。
……が、練習ぐらいにはなるだろう……

「試合開始!!」

 審判役の教師の手刀が振り下ろされると同時に、互いに抜剣する。

 俺も相手も互いの得物は濶剣ブロードソード
 みすみす俺本来の戦闘スタイルを大勢の前で晒してやる必要ない。
 前回第一話は、不意を突かれたので愛刀である魔杖刀・流櫻りゅうおうを抜いてしまったが、この程度の相手でこちらの手札を見せてやるほど俺は程度の低い男ではない。

 鎧が発生させる防御魔術シールドを削り切った方が勝ち。
と言う極めた単純なルールだがそれが奥深い。

相手は右手だけで剣を持ち大振りに構える。

(防御を捨ているのか……本来は盾を持つ流派なのか……気にしていても仕方がない先ずは相手の攻撃を往なし、捌きつつ様子を見るか……)

 体重の乗った大振りの袈裟斬りが放たれる。

「――――危ね!」

 ひらりと身を翻し華麗に除けたハズだった……。
次の瞬間衝撃が走り、俺の防御魔術シールドが三割ほど削られている。
 俺は考えるよりも先に、後方へ飛び退いて態勢を立て直す事にした。

(何が起こった?)

 通常右手で袈裟斬りを行う場合。右上から左下に斬り下ろす斬撃になるハズなのだが、コイツの攻撃は変則的だった。
 右手で剣を持っているのに手首をスナップさせ、左上から右下に斬り下ろすと言う剣術の常識を破壊する攻撃だったのだ。

なるほど……今は完全に理解した。

 奴が行ったのは【瞬歩しゅんぽ】と言うこの世界の武芸技術による。短距離高速移動術で……その加速力と彼自身の体を砲弾として使った「殺人タックル」と言った所か……それにしても彼の防御魔術シールドが、全くと言っていいほど削れていないのは、恐らく試合開始から発動していた。局所的な魔術のお陰だろう……

 今の一撃で奴がどういう戦い方をする魔剣士かは理解できた。

「良いタックルでした。しかし、通用するのは一度目だけです。
二度目は通用しないな……」

 剣を中段から上段に構え攻撃の意思を示す。

「――――ちぇ! 腐ってもクローリー家の魔剣士か……俺の必殺技の仕組みを理解しやがったか!!」

 最初は相手に試合の主導権ぺースを持っていかれたけど、相手の戦術を見破る事までは出来た。これだけでも相当な精神的負荷ストレスをかける事が出来る。

この勝負貰った!!

「――――なーんてね。今のタックルは本気じゃなェ。ワザと見切れるレベルで打ってやったんだ。今から見せるのが俺の流派! マンチェスター闘牛流の神髄だァ!!」

 そう叫びながら左半身を盾にしながら、凄まじい速度で突進してくる。
 
 闘牛流は重装騎士を主軸にした密集陣形で用いられてきた戦場剣術を、改良・発展させた近代魔術を合せた剣術で、高いレベルの足捌きや体捌きをを求めない。
 盾を構え突進し、盾で相手の攻撃を受け、一撃必殺の剛剣で相手を撲殺する事を目的にした地味で堅実な流派のハズなんだが……一対一と言う制約の中で先輩が出した結論は……防御魔術を盾にしながら突っ込んで来ると言う単純明快な戦法!
 
 突進攻撃チャージかわしたり受け止めたとしても、次の手である剛剣に対処しなければならない。

 新選組の局長である近藤勇こんどういさみはこう言ったと伝えられている……「薩摩者の初太刀は外せ」と。
 この場合の薩摩者と言うのは、当時薩摩で流行っていた示現流じげんりゅうや、その派生流派である薬丸自顕流やくまるじげんりゅう等の事を言う。その剛剣ぶりから「二ノ太刀要らず」や「受けた刀ごと相手を斬った」と伝わっている。

 当時の日本やこの国でもそうだが剣術が武士道教育……この国では貴族教育の一環になってしまい、技術よりも精神論を解いている。その中でも生き残った数少ない実践剣術が、天然理心流てんねんりしんりゅう示現流じげんりゅうであり、この国で言えば闘牛流なのだ。

 今の俺の状況は、二ノ太刀要らずで刀ごと相手を斬る剛剣の必殺技を二連続で放たれているようなものだ。

なんだこのクソゲーは……

 相手は間違いなく近接攻撃しか出来ない近接攻撃型インファイター今のまま相手の受ければ・・・・・・・・・・・初撃は防御できても、二撃目を完璧に防ぎきる自信はない。
 
 だから先ずは下ごしらえから始める。



しおりを挟む
感想 32

あなたにおすすめの小説

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい

ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆ 気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。 チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。 第一章 テンプレの異世界転生 第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!? 第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ! 第四章 魔族襲来!?王国を守れ 第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!? 第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~ 第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~ 第八章 クリフ一家と領地改革!? 第九章 魔国へ〜魔族大決戦!? 第十章 自分探しと家族サービス

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~

エース皇命
ファンタジー
 学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は仕事でダンジョンに潜っている、最近話題のAランク冒険者だった。  そんな黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。 「才斗くん、これからよろしくお願いしますねっ」  なんと白桃は黒瀬の直属の部下として派遣された冒険者であり、以後、同じ家で生活を共にし、ダンジョンでの仕事も一緒にすることになるという。  これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。 ※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。

元・異世界一般人(Lv.1)、現代にて全ステータスカンストで転生したので、好き放題やらせていただきます

夏見ナイ
ファンタジー
剣と魔法の異世界で、何の才能もなくモンスターに殺された青年エルヴィン。死の間際に抱いたのは、無力感と後悔。「もし違う人生だったら――」その願いが通じたのか、彼は現代日本の大富豪の息子・神崎蓮(16)として転生を果たす。しかも、前世の記憶と共に授かったのは、容姿端麗、頭脳明晰、運動万能……ありとあらゆる才能がカンストした【全ステータスMAX】のチート能力だった! 超名門・帝聖学園に入学した蓮は、学業、スポーツ、果ては株や起業まで、その完璧すぎる才能で周囲を圧倒し、美少女たちの注目も一身に集めていく。 前世でLv.1だった男が、現代社会を舞台に繰り広げる、痛快無双サクセスストーリー! 今度こそ、最高に「好き放題」な人生を掴み取る!

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

処理中です...