38 / 71
第37話クズな三連星3 青の三等星下
しおりを挟む「て、てめぇ……誰が卑怯者だってぇ! そこになおれ! 俺が叩き斬ってくれる!」
顔を真っ赤にして、八相の構えを解き長剣を右に振ると、俺に切っ先を真っすぐ向けてけてくる。
「やれるもんならやって見ろ! お前の剣速で俺を叩き斬れるもんならなっ!」
「減らず口をっ!」
「魔剣士同士、互いの剣技で語ろうぜ? 今はこれ以上言葉で語る必要はない!」
「貴様と意見が同じとは不愉快だが、貴様に同意する!」
地味な装飾の鞘を手にし、腰を低く落として居合の構えを取る。床の化粧板を強く踏み締めると、ヒビが入り、雷光のような速度でナイジェルへと迫る。
先ほどまでの【瞬歩】よりも早い。
長剣を持った少年は、剣を使い反撃する。
しかし、腕を真っすぐ伸ばし、切っ先を俺に向けているのだ。今の状態から俺の攻撃を止める方法は限られている。
考えられる攻撃は、魔術による射撃や弾幕、長剣の長い射程を有効活用した。刺突攻撃。のいずれかだろうと辺りを付ける。
来ると分かっているのだから、避けるのはそう難しい事ではない。
ナイジェルの刺突を首を曲げて回避し、魔術以外で防ぐ事の出来ないがら空きの右側へ回り込むと、再び足をやや前後に「ハ」の字に開くと、半身をとって重心を低くし腰だめに構える。
脚の指先、腰、肩から腕へと魔力を漲らせ、身体を強化する。右足を前に出し地面を踏み締める。
バキ!
化粧板の石材が砕け。ナイジェルの刺突攻撃によって生み出された。
予備動作すらほぼ見えない。
視覚外から最高、最速の一刀が今、鞘から自然と抜け落ちるように放たれる。
通常、居合や抜き、抜刀術と言うものは、「左から右への横薙ぎ払い」と言う固定観念を持たれる事が多い。だが実際には「左下から右上へ逆袈裟斬り(切り上げ)」で行われる事も多いのだ。
先ほどまどの一刀目の抜刀術で確信した。この速度の一撃であっても、学園の上級魔剣士なら何かしらの手段で、防いで来る。
ならば一刀目で仕留める必要はない。抜刀術の使い手としては癪だが、二刀目、三刀目で仕留めればいい。
首筋目掛けた一撃目。だが相手が避ける事はない。
それどころか俺の一撃を、防ごうと言う意思を筋肉の動きから感じることは無い。
そのまま吸い込まれるように、首筋へ俺の刃が届く寸前――――
防御魔術が展開され、首筋の約20センチ手前で刃は防がれ弾かれる。
「――――ちっ!」
想定通りとは言え、悔しいものは悔しい。
防御魔術は、パリン! と、言うガラスが割れるような音を立てて、薄氷のように崩れ落ちる。
刹那。
しかし、一瞬生まれたその隙を、見逃す相手ではなかった。
突きを放つ際に踏み込んだ右足を、左脚を軸にして、日本の武術、芸能の基本の摺り足のように、足を宙に浮かせる事無く素早く移動させ、そのまま両手で長剣を振りかぶり、真っすぐ振り下ろす。
ナイジェルの放った真っ向斬りを、息をつかせぬほどの刹那の時間に、流れるように返す二刀目が、衝突する。
周囲数メートルを振動させるほどの壮絶な斬撃。
両者共に魔力の籠った。良い攻撃が衝突した事により、衝撃波となって周囲に放出される。その威力は隣接する試合会場まで届く程で、余りの衝撃で周囲の魔剣士たちは試合そっちのけで、アーノルドとナイジェルの試合を観戦している者さえいる。
互いの魔力が行き場を失い。生じた衝撃波によって、アーノルドは左後方へ、ナイジェルは後方へと弾き飛ばされる。
「――――」
錐揉み回転のように数秒空を舞う中で、魔術を発動させ姿勢を制御する。俺の十八番の風魔術は攻撃力、防御力、汎用性の全てにおいて他の属性の下位互換だが、このような場合においては、何よりも優秀な属性になる。
刀を納刀しながら地面に着地し、【瞬歩】を連続で使用しまるでスキップでもするように、転がって距離が離れるナイジェルを追撃する。
「一閃ッ――――!!」
構えや型などと言う美しいモノはなく。ただ相手を倒すと言う執念だけで放たれた一刀は、防御魔術を発動する余力さえないナイジェルの防御魔術を全て削り切る。
その瞬間。ビーと言う音が鳴り。勝者が確定する。
「そこまで! 勝者! アーノルド・フォン・クローリー! 両者の健闘に拍手を!」
審判の宣言で俺の勝利が周知される。
65
あなたにおすすめの小説
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい
ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆
気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。
チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。
第一章 テンプレの異世界転生
第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!?
第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ!
第四章 魔族襲来!?王国を守れ
第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!?
第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~
第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~
第八章 クリフ一家と領地改革!?
第九章 魔国へ〜魔族大決戦!?
第十章 自分探しと家族サービス
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~
エース皇命
ファンタジー
学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は仕事でダンジョンに潜っている、最近話題のAランク冒険者だった。
そんな黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。
「才斗くん、これからよろしくお願いしますねっ」
なんと白桃は黒瀬の直属の部下として派遣された冒険者であり、以後、同じ家で生活を共にし、ダンジョンでの仕事も一緒にすることになるという。
これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。
※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。
元・異世界一般人(Lv.1)、現代にて全ステータスカンストで転生したので、好き放題やらせていただきます
夏見ナイ
ファンタジー
剣と魔法の異世界で、何の才能もなくモンスターに殺された青年エルヴィン。死の間際に抱いたのは、無力感と後悔。「もし違う人生だったら――」その願いが通じたのか、彼は現代日本の大富豪の息子・神崎蓮(16)として転生を果たす。しかも、前世の記憶と共に授かったのは、容姿端麗、頭脳明晰、運動万能……ありとあらゆる才能がカンストした【全ステータスMAX】のチート能力だった!
超名門・帝聖学園に入学した蓮は、学業、スポーツ、果ては株や起業まで、その完璧すぎる才能で周囲を圧倒し、美少女たちの注目も一身に集めていく。
前世でLv.1だった男が、現代社会を舞台に繰り広げる、痛快無双サクセスストーリー! 今度こそ、最高に「好き放題」な人生を掴み取る!
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる