65 / 71
第64話
しおりを挟むあれから数日が立ち、一族がほぼ全員そろった。この国の一代戦力が勢ぞろいと言って差し支えないメンツだ。
「先ずは我がクローリー家がほぼ全員そろった事。嬉しく思います。皆長旅で疲れているでしょう、今日は贅を尽くした料理を用意しましたのでお楽しみください」
叔母上の挨拶で控えていた給仕達が、一斉に部屋に雪崩込んで来る。
先ずは胃のウォーミングアップの為に、日本で言えばお通しや突き出しである。アミューズが配膳台に乗せられて運ばれてくる。
一口サイズのバゲットにクリームチーズ、生ハム、リンゴ、バジルなどが色鮮やかに乗せられた。料理とグラスに入った食前酒が配膳される。
この世界では食前に祈る人も居れば祈らない人も居る。
クローリー家は初代様が、時には神々にも牙を剥くと恐れられる龍を殺した事から、「神に祈る必要なくね?」と言ったロックな当主が居たらしく、積極的に祈る事は無くなったと言う。
実際当家の年中行事には、宗教色の入った行事は少なく神殿の補修費や寄付を軽く出す程度で、積極的に関わっていないと言うべきだろう。
それを合図に皆が談笑を始める。
大体は大人は、大人子供は子供でだ。
暫く談笑しながらコース料理を食べているとアルコールが回って来る。
機会を伺って本題を切り出した。
「リチャード兄さま、ニール兄さま、コネリー兄さまお話があります」
俺は今までの文句を言ってやろうと決意して話を切り出した。
「何だい? アーノルド」
「学校の授業に付いていけないとか?」
「分かった女の子紹介してとかでしょ!」
――――と三者三葉の反応を見せる。
長兄のリチャードは母親譲りの短い銀髪をかき上げる。長身で細マッチョと、文句の付けようの容姿と戦闘技術を持っている。
次兄のニールはまるで狼の体毛のような色素の薄くツンツンとした頭髪で、見るからにマジそうな容姿をしている。
三男のコネリーも同じく白髪系でおっとりとした雰囲気を与えるタレ目をしているものの、五兄妹の中で一番のバトルジャンキーである。
「俺はアンタたち三人のせいで、入学した時から悪役扱いされてるんだけど……心当たりある?」
すると予想通り、三人はスッと視線を反らした。
「いやぁすまん」
最初に罪を認めたのは長兄だった。
「ウエストコット家があるだろう? 派閥が同じ……」
ウエストコットと言うのは、現在主流である魔剣士派の二番手で活動資金の調達を担っている家なのだが、金のない名誉しかない同派閥の貴族からは、煙たがられている。
「いるね……確か今は……あ、」
そこまで言って思い出した。
「確か兄さんの恋人の一人……」
「そ、で……その年のファイナリストのほぼ全員が俺の彼女……」
兄の彼女は4人おり名門は一人だけと、問題は少ないようにみえるものの、学園のアイドルを取られた男達の怨念という事だろうか。
「まぁリチャード兄ぃはそれも原因だろうけど、当時最強だった先輩を一年で倒して優勝した事の方が恨まれる原因だとは思うケドね……」
――――と次兄のニールが補足する。
「それに、授業を免除される仕組みを使ったのって、確かリチャード兄さんだよね? それも原因だと思うけど……」
「うるさいな……俺だって羽を伸ばしたいんだよ次期当主候補なんてなりたくないのにさぁ……ニールもコネリーも腹芸は出来ないしさぁ……少しくらいいいでしょ!」
と掌を返して開き直る。兄は面倒見がいいのだが、一度手を抜くと決めた事はとことん手を抜くどうしよもないヤツなんだ。
「ついに馬脚を露したな!」
「兄妹一番の面倒くさがりめ!」
「おめーのせいかぁ!」
三者三葉の怒りを見せる。
「それを言うならコネリーの方が問題だろ! 全大会で圧倒的な大差を付けて一位取りやがって……キャラの濃い奴二人に挟まれている俺の肩身の狭さを考えてくれよ!」
兄妹のなかで一番個性の薄い次兄ニールが、意見と言うより鬱憤を吐露する。
56
あなたにおすすめの小説
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい
ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆
気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。
チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。
第一章 テンプレの異世界転生
第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!?
第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ!
第四章 魔族襲来!?王国を守れ
第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!?
第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~
第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~
第八章 クリフ一家と領地改革!?
第九章 魔国へ〜魔族大決戦!?
第十章 自分探しと家族サービス
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~
エース皇命
ファンタジー
学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は仕事でダンジョンに潜っている、最近話題のAランク冒険者だった。
そんな黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。
「才斗くん、これからよろしくお願いしますねっ」
なんと白桃は黒瀬の直属の部下として派遣された冒険者であり、以後、同じ家で生活を共にし、ダンジョンでの仕事も一緒にすることになるという。
これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。
※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。
元・異世界一般人(Lv.1)、現代にて全ステータスカンストで転生したので、好き放題やらせていただきます
夏見ナイ
ファンタジー
剣と魔法の異世界で、何の才能もなくモンスターに殺された青年エルヴィン。死の間際に抱いたのは、無力感と後悔。「もし違う人生だったら――」その願いが通じたのか、彼は現代日本の大富豪の息子・神崎蓮(16)として転生を果たす。しかも、前世の記憶と共に授かったのは、容姿端麗、頭脳明晰、運動万能……ありとあらゆる才能がカンストした【全ステータスMAX】のチート能力だった!
超名門・帝聖学園に入学した蓮は、学業、スポーツ、果ては株や起業まで、その完璧すぎる才能で周囲を圧倒し、美少女たちの注目も一身に集めていく。
前世でLv.1だった男が、現代社会を舞台に繰り広げる、痛快無双サクセスストーリー! 今度こそ、最高に「好き放題」な人生を掴み取る!
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる