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第70話
しおりを挟む「叶えたい事があるって言ってたよね? 俺達の力を束ねたそう言う刀が作りたいんだけ」
その言葉で俺は目的を再び強く認識し、よろよろと力なく立ち上がる。
「その気概は気に入ったよ。じゃぁ行くよ?」
すると放たれたのは、縦横無尽に繰り出される攻撃の数々。そのばでの回転など剣術からすれば、奇想天外な動きを織り交ぜているのだが、徒手空拳が織り交ぜられたそれには不思議と隙を感じさせない。
斬撃の方向は、『米』の八方向+付きの合計9パターンしかないのに反応した時にはもう遅いのだ。
往復ビンタのような殴打によって意識は遠退き、やっと防御できたと思えば、それは囮で低い姿勢から放たれたのは、鋭い腹パンがお見舞いされる。
手加減しているのだろうが、痛いモノは痛い。
痛みに耐えて体制を整えるために及び腰になれば、「下るな!」と言わんばかりに、連撃が酷くなり逃げ道を封じられ、すらりと伸びた健康的なカモシカのような足から放たれた上段蹴りで俺の意識は刈り取らる。
「――――グフ!!」
鞭のように良くしなった上段蹴りが顎から耳のラインに直撃したようで赤く腫れており、意識を取り戻した時には脳が揺れたのか気分が悪く吐き気を感じる。
「気分悪いだろうから、そのままの状態でいいから聞いて欲しいんだけど、騎士は高い身体能力を獲得するから、俺見たいに体術を織り交ぜる人が多いんだ。もちろん槍とか戦斧みたいな長柄武器では一般的ではないけど、片手剣と盾とかの構成だと結構多いよ……」
そう言うと小瓶に入った回復薬を渡してくれる。
回復薬って、筋肉の回復にも効果あるんだ……まぁ高価なものに違いはないからバカスカは飲めないけど……
「ありがとうリチャード兄さん」
そう言って回復薬を受け取り口を付ける。
味と匂いは何というか、『飲む湿布』と揶揄されているルートビアそっくりなのだが、化粧水が入っているような小瓶に封入されているので、苦手な人には苦痛の時間が少ないのは良いと思う。
因みに俺は大好きな味だ。逆にドクペは微妙って感想だ。
「でもアーノルドは凄いと思うよ……人に刃物を平気で向けられる。そりゃ俺みたいな魔剣士なら「避けられる」「深手にはならない」「魔術で防げる」って思ってるんだろうけどさ……普通の人間は分かっていても躊躇するんだだから一年生は上級生に勝てない。
心の強さって言うべきなのか……覚悟、信念、割り切り、心構え……表現は何でもいいんだけど……例えるとネズミから犬サイズこれはヒトに寄るんだけど、殺すのに抵抗を覚えるんだよ。でもアーノルドはそれが感じられないんだ」
そう言うと喉が渇いたのか、コップに入った水に口を付けた。
ごくごくと喉が鳴り、美味しそうにスポーツ飲料を飲む。
まるでCMのようだ。
「新人騎士にはモンスターを殺しただけで、嘔吐する軟派者もいるなかで剣を振り魔術を操るお前には、騎士の才覚があると俺は思っている。
前当主であるひいお爺様のように、「騎士になれ」とは言わないけど、騎士のように誰かを守れる存在になって欲しいとは思っているんだ」
兄はタオルで汗を拭うとこう言った。
「俺は学園に入学する意味は無い。と思っていたけど生涯の伴侶を得た。コレは得難いものだし、学園では色んな経験を積んだ。アーノルドにもそう言う得難い何かを掴んで欲しいと思っている。好きなように生きろとは言えないけど、アーノルドが好きに生きる手伝いぐらいはお兄ちゃんとしてやってやりたいと思ってる。遠く離れた場所に居るけど遠慮なく頼ってくれ」
兄はそう言うと道場をあとにした。
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