歩く災害と呼ばれた【薄幸の美少女】を救ったら、俺にしか懐かない最強の守護者になった件。~運を下げるスキルで追放されたけど、彼女と一緒なら無敵

ジョウジ

文字の大きさ
29 / 111

第29話:脳筋傭兵グレン

しおりを挟む
 ヴォルグへの発注を終え、俺たちが屋敷に戻ったのは昼過ぎだった。

 最強の家事道具(凶器)が完成するのは数日後だ。それまではリリの家事は「見学」に留めておくしかない。

「……それにしても、広いな」

 改めて、我が家の広さを実感する。広大な庭。高い塀。そして森に囲まれた立地。  静かで良い環境だが、防衛の観点から言えば死角が多すぎる。リリの感知能力はずば抜けているが、彼女には俺の護衛という最優先任務がある。屋敷の外周警備まで手が回らないのが現状だ。

「番犬が必要ですね」

 リリも同じことを考えていたらしい。

「ラクちゃんに巡回させますか? 不運を撒き散らせば、侵入者は勝手に転んでくれると思いますけど」

 「みゅ~(やだ)」

 ラクがリリの頭の上で、フルフルと毛玉を振った。どうやら労働拒否らしい。

 その時だった。裏庭の方から、何やら騒がしい声と、鈍い衝撃音が聞こえてきた。

「……誰かいます」

 リリの目が瞬時に鋭くなる。

「侵入者です。数は……三人。いえ、四人?」 

「行ってみるか」

 俺たちは足音を殺し、裏庭へと回った。そこには、予想外の光景が広がっていた。

「あ、兄貴ぃ! なんだこいつ、剣が通らねぇぞ!?」 

「魔法だ! 魔法を撃ち込め!」

 黒装束に身を包んだコソ泥三人組が、一人の男を取り囲んで必死に攻撃を仕掛けていた。この屋敷が「呪われた空き家」だと思って盗みに入ったのだろうが、運悪く先客と鉢合わせたらしい。

 その先客――囲まれている男は、とんでもない巨漢だった。身長は二メートルを超えているだろう。丸太のような腕、岩盤のような胸板。着ているシャツは筋肉に張り裂けそうで、背中には巨大な大剣を背負っている。

「うおおお! 死ねぇぇ!」

 コソ泥の一人が、男の背後からショートソードを突き立てた。

 ガキンッ!!

 硬質な音が響く。剣が折れた。鎧を着ているわけでもない、ただの筋肉に弾かれたのだ。

「あ?」

 巨漢がのそりと振り返った。

 眠たげな目。ボサボサの赤髪。彼は自分の背中に突き立てられた折れた剣を見て、首を傾げた。

「なんだ、蚊か?」

 男は鬱陶しそうに腕を振るった。

 ブンッ。

 ただの裏拳。だが、その風圧は暴風だった。

「ぶべらっ!?」

 直撃を受けたコソ泥が、枯れ葉のように吹き飛び、庭の木に激突して気絶した。

「ヒィッ!? か、火炎弾(ファイアボール)!」

 もう一人が魔法を放つ。

 ドォン!

 男の胸板で爆発が起きる。煙が晴れると――そこには、煤(すす)けて少し黒くなっただけの男が、欠伸をしながら立っていた。

「あったけぇな。……おい、昼寝の邪魔だ」

 男は面倒くさそうに、魔法使いの額にデコピンをした。

 パチィンッ!!

 銃声のような音が鳴り、魔法使いが白目を剥いてその場に崩れ落ちる。

「ば、化け物……!」

 最後の一人が逃げ出そうと背を向けた瞬間、男は足元に落ちていた手頃な石ころを拾い、軽く放り投げた。

 ドスッ。

 石は正確に逃げる泥棒の後頭部を打ち抜き、彼はカエルが潰れたような声を出して倒れた。

 全滅。所要時間、わずか三十秒。男は「ふぁ~あ」と大あくびをすると、再び芝生の上にゴロリと横になろうとした。

「……おい」

 俺は茂みから出て、男に声をかけた。男は片目だけを開け、俺を見る。

「あ? なんだ、まだいたのか。俺は今、腹が減ってて機嫌が悪いんだ。昼寝させろ」

「ここ、俺の家なんだが」 

「……あ?」

 男が体を起こし、きょとんとした顔をした。 

「ここ、空き家じゃねえのか? 呪われてて誰も寄り付かねえって聞いたから、絶好の昼寝スポットだと思ったんだが」 

「昨日買った。不法侵入だぞ」

 俺が言うと、男はバツが悪そうに頭をかいた。 

「そりゃ悪かったな。……まあ、あいつら追い払ったし、チャラにしてくれよ」  

 男は気絶した泥棒たちを親指で指し、腹をグゥ~と鳴らした。

 俺は素早く【解析のモノクル】で男のステータスを覗いた。

【名前】グレン 【職業】傭兵 【HP】9800/9800 【STR(筋力)】A+ 【VIT(耐久)】S 【AGI(敏捷)】D 【スキル】金剛皮、痛覚鈍麻、怪力乱神、直感(野生)

 HP9800。VIT:S。リリとは真逆の、耐久特化の化け物だ。物理魔法問わず、大抵の攻撃は素通りするだろう。

 それに、「直感(野生)」持ちか。コソ泥の気配に気づいたのもそれだろう。

 ……欲しいな。

 リリが最強の「矛」なら、こいつは最強の「盾」になり得る。

 それに、こいつの性格。細かいことを気にしない大雑把さは、リリの「不運」に巻き込まれても「なんか石が降ってきたな」程度で済ませてくれそうだ。

「なぁ、あんた」

 俺はニヤリと笑い、男――グレンに提案した。 

「腹、減ってるんだろ? 飯を食わせてやる」 

「マジか!?」

 グレンが食いついた。単純な奴だ。

「その代わり、働いてもらうぞ。仕事は簡単だ。この屋敷の『番犬』だ」 

「番犬? ……まあ、飯が食えて寝床があるなら、なんでもいいぜ」

 グレンは立ち上がり、俺に巨大な手を差し出した。

「俺はグレン。しがない傭兵だ。よろしく頼むぜ、旦那」 

「ジンだ。こっちはリリ。……リリ、挨拶を」

 俺が促すと、リリはジトッとした目でグレンを見上げ、冷たく言い放った。 

「……ジン様の敵になったら、その筋肉ごと切り刻みますから」 

「おっかねぇ嬢ちゃんだな。まあ、よろしくな」

 グレンは豪快に笑った。こうして、我が家の防衛戦力に、頼もしすぎる(そして燃費の悪そうな)「肉の壁」が加わったのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

​『イージス艦長、インパール最前線へ。――牟田口廉也に転生した俺は、地獄の餓死作戦を「鉄壁の兵站要塞」に変える』

月神世一
SF
​【あらすじ】 ​「補給がなければ、戦場に立つ資格すらない」 ​ 坂上真一(さかがみ しんいち)、50歳。  かつてイージス艦長として鉄壁の防空網を指揮し、現在は海上自衛隊で次世代艦の兵站システムを設計する男。  背中には若き日の過ちである「仁王」の刺青を隠し持ち、北辰一刀流の達人でもある彼は、ある日、勤務中に仮眠をとる。 ​ 目が覚めると、そこは湿気と熱気に満ちた1944年のビルマだった。  鏡に映っていたのは、小太りで口髭の男――歴史の教科書で見た、あの「牟田口廉也」。 ​ しかも時期は、日本陸軍史上最悪の汚点とされる「インパール作戦」決行の直前。  部下たちは「必勝の精神論」を叫び、無謀な突撃を今か今かと待っている。 ​ (……ふざけるな。俺に、部下を餓死させろと言うのか?) ​ 現代の知識と、冷徹な計算、そして海自仕込みのロジスティクス能力。  すべてを駆使して、坂上(中身)は歴史への介入を開始する。  精神論を振りかざすふりをして上層部を欺き、現地改修で兵器を強化し、密かに撤退路を整備する。 ​ これは、「史上最も無能な指揮官」の皮を被った「現代の有能な指揮官」が、確定した敗北の運命をねじ伏せ、数万の命を救うために戦う、逆転の戦記ドラマ。

無能と呼ばれてパーティーを追放!最強に成り上がり人生最高!

本条蒼依
ファンタジー
 主人公クロスは、マスターで聞いた事のない職業だが、Eランクという最低ランクの職業を得た。 そして、差別を受けた田舎を飛び出し、冒険者ギルドに所属しポーターとして生活をしていたが、 同じパーティーメンバーからも疎まれている状況で話は始まる。

器用貧乏な赤魔道士は、パーティーでの役割を果たしてないと言って追い出されるが…彼の真価を見誤ったメンバーは後にお約束の展開を迎える事になる。

アノマロカリス
ファンタジー
【赤魔道士】 それは…なりたい者が限られる不人気No. 1ジョブである。 剣を持って戦えるが、勇者に比べれば役に立たず… 盾を持ってタンクの役割も出来るが、騎士には敵わず… 攻撃魔法を使えるが、黒魔道士には敵わず… 回復魔法を使えるが、白魔道士には敵わず… 弱体魔法や強化魔法に特化していて、魔法発動が他の魔道士に比べて速いが認知されず… そして何より、他のジョブに比べて成長が遅いという… これは一般的な【赤魔道士】の特徴だが、冒険者テクトにはそれが当て嵌まらなかった。 剣で攻撃をすれば勇者より強く… 盾を持てばタンクより役に立ち… 攻撃魔法や回復魔法は確かに本職の者に比べれば若干威力は落ちるが… それを補えるだけの強化魔法や弱体魔法の効果は絶大で、テクトには無詠唱が使用出来ていた。 Aランクパーティーの勇者達は、テクトの恩恵を受けていた筈なのに… 魔物を楽に倒せるのは、自分達の実力だと勘違いをし… 補助魔法を使われて強化されているのにもかかわらず、無詠唱で発動されている為に… 怪我が少ないのも自分達が強いからと勘違いをしていた。 そしてそんな自信過剰な勇者達は、テクトを役立たずと言って追い出すのだが… テクトは他のパーティーでも、同じ様に追い出された経験があるので… 追放に対しては食い下がる様な真似はしなかった。 そしてテクトが抜けた勇者パーティーは、敗走を余儀無くされて落ち目を見る事になるのだが… 果たして、勇者パーティーはテクトが大きな存在だったという事に気付くのはいつなのだろうか? 9月21日 HOTランキング2位になりました。 皆様、応援有り難う御座います! 同日、夜21時49分… HOTランキングで1位になりました! 感無量です、皆様有り難う御座います♪

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~

名無し
ファンタジー
 突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。  自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。  もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。  だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。  グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。  人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。

没落港の整備士男爵 ~「構造解析」スキルで古代設備を修理(レストア)したら、大陸一の物流拠点になり、王家も公爵家も頭が上がらなくなった件~

namisan
ファンタジー
大陸の南西端に位置するベルナ子爵領。 かつては貿易で栄えたこの港町も、今は見る影もない。 海底には土砂が堆積して大型船は入港できず、倉庫街は老朽化し、特産品もない。借金まみれの父と、諦めきった家臣たち。そこにあるのは、緩やかな「死」だけだった。 そんな没落寸前の領地の嫡男、アレン(16歳)に転生した主人公には、前世の記憶があった。 それは、日本で港湾管理者兼エンジニアとして働き、現場で散った「整備士」としての知識。 そして、彼にはもう一つ、この世界で目覚めた特異な能力があった。 対象の構造や欠陥、魔力の流れが設計図のように視えるスキル――【構造解析】。 「壊れているなら、直せばいい。詰まっているなら、通せばいい」 アレンは錆びついた古代の「浚渫(しゅんせつ)ゴーレム」を修理して港を深く掘り直し、魔導冷却庫を「熱交換の最適化」で復活させて、腐るだけだった魚を「最高級の輸出品」へと変えていく。 ドケチな家令ガルシアと予算を巡って戦い、荒くれ者の港湾長ゲンと共に泥にまみれ、没落商会の女主人メリッサと手を組んで販路を開拓する。 やがてその港には、陸・海・空の物流革命が巻き起こる。 揺れない「サスペンション馬車」が貴族の移動を変え、「鮮度抜群の魚介グルメ」が王族の胃袋を掴み、気性の荒いワイバーンを手懐けた「空輸便」が世界を結ぶ。

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。

重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。 あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。 よくある聖女追放ものです。

婚約破棄?いいですけど私巨乳ですよ?

無色
恋愛
 子爵令嬢のディーカは、衆目の中で婚約破棄を告げられる。  身分差を理由に見下されながらも、彼女は淡々と受け入れようとするが、その時ドレスが破れ、隠していた自慢のそれが解き放たれてしまう。

処理中です...