歩く災害と呼ばれた【薄幸の美少女】を救ったら、俺にしか懐かない最強の守護者になった件。~運を下げるスキルで追放されたけど、彼女と一緒なら無敵

ジョウジ

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第50話:国境へ

 王都を出発して数日。 俺たちを乗せた『殲滅馬車』は、順調に街道を走り抜け、ついに王国の最東端にある国境検問所へと差し掛かっていた。

 窓の外には、荒涼とした荒野が広がっている。 ここから先は、魔物の脅威度も上がり、文化も風習も異なる未知の領域だ。

「おいおい、止まれ! なんだその怪しい乗り物は!」

 検問所の衛兵たちが、槍を構えて馬車の前に立ち塞がる。 無理もない。黒光りする装甲板に覆われ、巨大な衝角を備えたこの車両は、どう見ても軍事兵器か魔王軍の戦車だ。

「ああん? 誰が怪しいだコラ。俺様の最高傑作を侮辱すんじゃねえ!」

 運転席からヴォルグが身を乗り出して怒鳴り散らす。 火に油を注ぐ天才か、この鍛冶師は。

「騒ぐな、ヴォルグ。俺が出る」

 俺はため息をつきながら馬車を降りた。 警戒心を露わにする衛兵隊長に向かって、一枚の羊皮紙を提示する。 ミライが用意してくれた、ギルド発行の『特別通行許可証』だ。これには王家の印章も押されている。

「……こ、これは! 失礼いたしました!」

 隊長の顔色が変わり、直立不動で敬礼した。 権力の力は偉大だ。俺は少しだけミライに感謝しつつ、手続きを済ませた。

「では、お気をつけて。この先の『東方緩衝地帯』は無法地帯も同然です。くれぐれも警戒を怠らぬよう」

「忠告感謝する」

 俺は馬車に戻った。 中では、リリが窓に張り付いて、検問所の向こう側に広がる景色を見つめていた。

「……リリ?」 

「あ、ジン様」

 リリが振り返る。 その瞳は、不安と期待が入り混じった複雑な色をしていた。

「この先が、東方……。私の、生まれ故郷かもしれない場所……」 

「怖いか?」 

「……少しだけ。でも」

 リリは俺の手をギュッと握った。

「ジン様がいてくださるなら、私はどこへでも行けます。たとえ地獄の底でも、天国の果てでも」 

「地獄は御免だがな。ま、精々美味いものでも探しに行こう」

 俺は笑って、彼女の肩を抱き寄せた。 リリもふわりと微笑み返す。

「へっ、湿っぽいのはナシだぜ! 新しい狩場だ、腕が鳴る!」

 グレンが大剣を磨きながらニヤリと笑う。 ラクも「みゅう!(しゅっぱつ!)」と元気に跳ねた。

 馬車が再び動き出す。 重厚な車輪が、国境のラインを越え、乾いた大地を踏みしめた。

 その瞬間。 俺はふと、背筋に冷たいものを感じて振り返った。

「ジン様?」 

「……いや、なんでもない」

 王都の方角。遥か彼方の空が、淀んだ黒色に染まっているような気がした。 気のせいかもしれない。 だが、あの腐敗した執念(アルス)が、そう簡単に消えるとは思えない。 奴は必ず来る。より強大な力を手に入れ、より深い闇を纏って。

(来るなら来い。何度でも返り討ちにしてやる)

 俺は視線を戻し、前を向いた。 今は、この新しい冒険を楽しむとしよう。

「ヴォルグ、全速前進だ!」 

「おうよ! しっかり捕まってな! ニトロ噴射ァァッ!!」

 ドゴォォォォォンッ!!

 馬車が爆発的な加速を見せ、荒野を疾走する。 舞い上がる砂塵。遠くに見える未知の山脈。 俺たちの物語は、まだ始まったばかりだ。

 かつて「不運」と呼ばれた少女と、それを愛した軍師の旅路は、国境を越え、さらなる混沌と興奮の渦中へと突き進んでいく。
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