歩く災害と呼ばれた【薄幸の美少女】を救ったら、俺にしか懐かない最強の守護者になった件。~運を下げるスキルで追放されたけど、彼女と一緒なら無敵

ジョウジ

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第51話:空から女の子が!

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 国境を越えた先に広がっていたのは、赤茶けた土と岩がどこまでも続く荒野だった。 『東方緩衝地帯』。 国家の支配が及ばない無法地帯であり、凶暴な魔獣が跋扈する危険地帯だ。

 だが、そんな場所を我が物顔で爆走する鉄塊があった。

「ヒャッハー! 最高だぜぇ! この振動、この加速! 俺の『殲滅馬車』に不可能はねえ!」

 運転席でヴォルグが奇声を上げながらレバーを倒す。 魔力エンジンが唸りを上げ、巨大な鉄の履帯が荒野の岩を粉砕しながら突き進む。 本来なら馬車など数分でバラバラになる悪路だが、この要塞は揺れひとつ感じさせない。

「……少し飛ばしすぎじゃないか?」

 車内のソファで優雅に紅茶(古竜牙製カップ入り)を飲んでいた俺は、窓の外を流れる景色が速すぎて線になっているのを見て呟いた。

「へっ、これくらい出さねえと魔物に追いつかれちまうぜ! ……おっと、サンドワームか? 轢き殺してやる!」

 ヴォルグがさらに加速する。 進行方向に現れた巨大なミミズのような魔物が、衝角(ラム)の一撃で吹き飛ばされ、星になった。

「すげぇな! これなら寝てても目的地に着くじゃねえか!」

 グレンが窓に張り付いて大はしゃぎしている。 リリは俺の隣で、そんな男たちの騒ぎをBGMに、穏やかに微笑んでいた。

「ジン様、クッキーのおかわりはいかがですか?」 

「ああ、もらう」

 平和だ。 外は地獄のような環境だが、車内は天国だ。 ……そう思っていた、その時だった。

「ジン様」

 リリがふと、天井を見上げた。 彼女の【危機察知】スキルが何かを捉えたらしい。

「……何かが、来ます」 

「魔物か?」 

「いえ……空からです。真っ直ぐ、この馬車に向かって……落ちてきます!」

 落ちてくる? 俺が窓から空を見上げると、雲を突き抜けて急降下してくる「小さな点」が見えた。 隕石か? いや、違う。 あれは――

「人……か?」

 ヒラヒラとした白い服。金色の髪。 人間だ。それも少女に見える。 だが、落下速度が尋常ではない。このままでは馬車の屋根に直撃し、ひき肉になるか、馬車ごとペシャンコだ。

「ヴォルグ、緊急回避だ! 右に切れ!」 

「ああん!? 無茶言うな、この速度で曲がったら横転す……」 

「いいから切れッ!」

 俺の怒声に、ヴォルグが反射的にハンドルを右に切った。 ギュルルルルルッ!! 鉄の履帯が悲鳴を上げ、巨大な車体がドリフトするように横滑りする。 遠心力で車内が傾く。

 ドズゥゥゥゥゥンッ!!!!

 直後、さっきまで馬車がいた地点に、何かが激突した。 凄まじい衝撃波と砂煙。 もし回避していなければ、確実に直撃コースだった。

「な、なんだぁ!? ワイバーンの糞でも落ちてきたのか!?」

 グレンが目を白黒させる。 俺たちは停車した馬車から降り、クレーターの中心へと慎重に近づいた。

 砂煙が晴れていく。 その中心にいたのは、魔物でも隕石でもなく。

「……うぅ」

 一人の少女だった。 地面にめり込んでいるわけではない。 激突の寸前、クッションのように膨らんだ「白い何か」の上に、ちょこんと乗っかっていたのだ。

「みゅ~……(おもい……)」

 少女の下敷きになっていたのは、巨大化したラクだった。 どうやら衝突の瞬間、俺の懐から飛び出して(あるいは窓から放り出されて)、クッション代わりになったらしい。 不運エネルギーを吸収する性質を持つラクが、少女の「落下死」という究極の不運を、物理的な弾力で無効化したのだ。

「……た、助かり、ました……?」

 少女が恐る恐る目を開ける。 金色の髪に、透き通るような碧眼。身につけているのは、教会のシスターが着るような清廉な法衣だが、あちこち破れてボロボロだ。

「あ、あの……ありがとうございます! あなた様が助けてくださったのですか?」

 少女はラクから降りると、ぺこりと深々と頭を下げた。

「私、聖女候補生のティアと申します! 巡礼の旅の途中で、ワイバーンに掴まれて連れ去られそうになりまして……抵抗したら空から放り出されてしまったのです!」

 とんでもない不運だ。 ワイバーンに攫われる確率など、宝くじに当たるより低いぞ。

「ですが、神は私を見捨てませんでした! こうして皆様のような親切な方々に出会えたのですから!」

 ティアと名乗った少女は、満面の笑みで勢いよくお辞儀をした。 だが、勢いをつけすぎた。

「あっ、足が……!?」

 自分のローブの裾を踏んづけた彼女は、バランスを崩してよろめき――そのまま、近くに停車していた馬車の巨大な車輪へと、頭から弾丸のように突っ込んだ。

 ガンッ!!

「あだっ!?」

 ゴィィィン……と重厚な金属音が響く。

「うぅ……痛いですぅ……」

 ティアが涙目で額を押さえて蹲る。 俺たちは顔を見合わせた。

「……おい、ジン。こいつ、大丈夫か?」 

「わからん。だが、一つだけ確かなことがある」

 俺は額を押さえる少女と、彼女の足元で「やれやれ」といった風情で毛繕いをするラクを見比べた。

「こいつからは、リリとはまた違ったベクトルの『厄介事』の匂いがする」

 空から降ってきた聖女候補生。 その出会いが、俺たちの東方への旅路を、さらに混沌としたものに変える合図だった。
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