歩く災害と呼ばれた【薄幸の美少女】を救ったら、俺にしか懐かない最強の守護者になった件。~運を下げるスキルで追放されたけど、彼女と一緒なら無敵

ジョウジ

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第56話:情報屋ジャックと女侍

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「……ふぅ。あの女王様、思ったより面倒なタイプだったな」

『ロイヤル・フラッシュ』を出た俺たちは、ネオンの光が届かない路地裏へと移動していた。 カジノホテルの煌びやかさとは対照的に、そこはゴミと汚水、そしてアンダーグラウンドな住人たちの気配が漂う場所だ。

「ジン様。あの女、追いかけて斬らなくてよかったのですか?」

 リリがまだ少し不満そうに、俺の腕にしがみついている。 さっきの「所有権宣言」が効いているのか、機嫌は良さそうだが、リエルへの対抗心は燃え上がっているようだ。

「斬るのは最終手段だ。あいつはこの街そのものだ。殺せば街の機能が麻痺して、俺たちの旅にも支障が出る」

 俺は懐から一枚のメモを取り出した。 ヴォルグが「カジノで揉めたらここに行け」と教えてくれた場所だ。

「正面突破がダメなら、裏口を叩く。この街には、女王の支配を快く思っていない連中もいるはずだ」

 俺たちが目指したのは、路地裏の奥にある古びたバー『ブラック・ジャック』だった。

 ギィィ……。

 錆びついた蝶番が悲鳴を上げ、扉が開く。 紫煙が充満する店内。客はまばらだ。 カウンターの奥には、目深に帽子を被り、グラスを磨いている男が一人。

「いらっしゃい。……見ない顔だな。観光客向けの店は表通りだぜ」

 男が低い声で告げる。 俺はカウンターに歩み寄り、ヴォルグから預かった『紹介状(という名の爆発寸前の手榴弾のオブジェ)』を置いた。

「ヴォルグの紹介だ。あんたが『ジャック』だな?」

 男――ジャックの手が止まる。 彼は帽子を少し持ち上げ、鋭い眼光で俺たちを値踏みした。

「……あの爆弾魔の知り合いか。通りで、火薬とトラブルの匂いがするわけだ」

 ジャックはニヤリと笑い、グラスを置いた。 情報屋ジャック。この街の裏情報を掌握する男。

「単刀直入に言おう。俺たちは東の島国『ヤマト』を目指している。だが、この街の港と航路は全て女王(リエル)が牛耳っていると聞いた。正規ルートじゃ、出国許可と引き換えにペット契約を迫られるのがオチだ。……リエルの目を盗んで海を渡るための、『裏ルート』を教えてくれ」 

「リエル、だと? おいおい、あの女王様に喧嘩を売る気か?」

 ジャックが呆れたように肩をすくめる。 その時だった。

 店内の空気が、ピリリと張り詰めた。 カウンターの奥、暗がりに控えていた人影が、鋭い視線を俺たちに向けていたのだ。 特に、俺が置いた爆弾のオブジェと、背後に控えるリリとグレンから滲み出る「危険な気配」を見逃さなかったらしい。

「――主(あるじ)に不穏な話を持ちかけ、あまつさえ危険物を持ち込む輩……即ち敵とみなす」

 凛とした、涼やかな声。 同時に、強烈な殺気が叩きつけられた。

 シュパッ!

 音もなく抜かれた刃が、俺の首元を狙う。 リリが瞬時に反応し、短剣に手をかけた――だが、それより僅かに速く、巨大な影が俺の前に割り込んだ。

 ガギィィィンッ!!

「おっと、危ねえな。いきなり斬りかかるとは、随分な挨拶じゃねえか」

 グレンがヴォルグに新調してもらった大剣『岩砕き・改』で、その斬撃を受け止めていた。 リリはグレンが防いだのを見て、即座に俺の背後をカバーする位置へ移動する。完璧な連携だ。

 攻撃を仕掛けてきたのは、一人の女性だった。 黒髪をポニーテールに束ね、東方の民族衣装(着物)をアレンジした戦闘服を纏っている。 手には、美しい波紋を描く刀――『カタナ』が握られていた。

「……ほう。拙者の『神速』を受け止めるとは。只者ではないな、大男」

 女剣士が目を細める。 その立ち姿には隙がない。達人のそれだ。

「やめろ、カエデ。そいつらは客だ」

 ジャックが制止すると、カエデと呼ばれた女剣士は、不服そうに刀を引いた。 残心(ざんしん)を残したまま、流れるような動作で納刀する。

「失礼した。主(ジャック)に害なす輩かと思った故」 

「カエデは俺の用心棒でな。東方から流れてきた侍(サムライ)だ。腕は立つが、少々頭が固いのが玉に瑕でね」

 ジャックが苦笑する。 東方の侍。グレンが会いたがっていた「強者」だ。

「へぇ……サムライ、ねえ」

 グレンが興味深そうにカエデを見下ろす。 その視線に、カエデが眉をひそめた。

「なんだその目は。……品のない男だ。筋肉だけで脳みそが詰まっていないような顔をしおって」 

「ああん? なんだとコラ」

 一触即発。 グレンとカエデの間で火花が散る。

「おい、そこまでだ」

 俺が割って入ろうとしたが、グレンが手で制した。

「旦那、少し時間をくれ。……こいつとは、肌で語り合ったほうが早そうだ」 

「貴様……武士を愚弄するか。いいだろう、その減らず口、拙者が斬り捨ててくれる!」

 二人は店の外、路地裏へと飛び出した。 直後、激しい剣戟の音が響き渡る。

「……やれやれ。うちの用心棒も血の気が多くて困る」 ジャックがやれやれと酒を注ぐ。 

「俺の連れもだ。……で、商談の続きだが」

 俺はグラスを受け取り、本題に入った。 外からは「オラオラァ!」「くっ、硬い! なぜ刃が通らぬ!?」という怒号と、「いいマッサージだ! もっと強く頼むぜ!」というグレンの楽しげな声が聞こえてくる。

 どうやら、グレンにも春(?)が来たらしい。 俺は騒音をBGMに、カジノの女王を出し抜くための策を練り始めた。
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