歩く災害と呼ばれた【薄幸の美少女】を救ったら、俺にしか懐かない最強の守護者になった件。~運を下げるスキルで追放されたけど、彼女と一緒なら無敵

ジョウジ

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第61話:ヤマトへの船旅

 翌朝。 俺たちはカジノ都市の裏手にある港へと来ていた。 そこには、朝日を反射して輝く白亜の豪華客船が停泊していた。 そして、そのタラップの前で、腕を組んで仁王立ちしているドレス姿の女性――リエルの姿があった。

「遅いわよ! 私が直々に手配してあげた『クイーン・エリザベス号』を待たせる気!?」

 リエルが不機嫌そうに扇子で時間を刻んでいる。 どうやら、わざわざ見送りに来てくれたらしい。

「悪いな。準備に手間取った」 

「ふん。まあいいわ。……これ、通行許可証と船の権利書よ。感謝しなさい」

 リエルが書類を押し付けてくる。 素直じゃないが、彼女なりの誠意だ。

「……おい、ヴォルグ。船はこれか?」 

「ああん? 誰があんなトロくさそうな船に乗るかよ」

 ヴォルグがニヤリと笑い、愛車(殲滅馬車)のボディを叩いた。

「こいつには水陸両用モードが搭載されてるんだよ! タイヤを格納して、魔力スクリューを展開すれば、海の上だって爆走できるぜ!」

 どうやら、この鉄塊で海を渡るらしい。 リエルの顔が引きつった。

「はぁ!? ちょっと、私の用意した最高級客船を無視する気!? 信じられない! バカなの!?」

 「バカはテメェだ! 男ならドリルとキャタピラだろうが!」 

「意味わかんないわよ!!」

 ギャーギャーと言い争うヴォルグとリエル。 俺は苦笑しながら仲裁に入った。

「すまない、リエル。気持ちは嬉しいが、俺たちにはこっち(馬車)の方が性に合っているみたいだ」 

「……っ、もう! 勝手にしなさいよ!」

 リエルはぷいと顔を背けたが、すぐにチラリとこちらを見て、小さな声で付け加えた。

「……死なないでよ。貴方は私のペット候補なんだから」 

「善処するよ」

 俺が答えると、リエルは視線をリリに向けた。

「貴女もよ。……次は負けないから」 

「ふふっ。いつでも受けて立ちますわ」

 リリが余裕の笑みで返す。 火花が散っているが、そこには確かな信頼関係(?)が芽生えていた。

「それじゃ、行くか」

 俺たちが乗り込もうとした時だった。

「待たれよ!」

 凛とした声が響き、一人の女性が走ってきた。 情報屋ジャックの用心棒、カエデだ。 彼女は大きな荷物を背負い、息を切らせて俺たちの前に立ち塞がった。

「……何しに来た? 見送りなら間に合ってるぞ」 

 グレンがリエルの方を親指で指しながら面倒くさそうに言うと、カエデは彼を指差して叫んだ。

「見送りではない! 拙者も同行する!」 

「はぁ?」

 全員が目を丸くする。 カエデは顔を赤らめながらも、真剣な眼差しでグレンを見据えた。

「昨日の手合わせ……拙者の刃が通じなかったのは、貴殿が初めてだ。その強靭な肉体、そして得体の知れない強さ……。武芸者として、その秘密を見極めるまでは帰れん!」

 建前だ。 俺の【確率操作】の勘が告げている。 彼女の視線の奥には、純粋な武への探究心とは別の、もっと個人的で熱っぽい感情が混じっている。

「なんだお前、俺に惚れたのか?」

 グレンがニカっと笑って茶化す。 瞬間、カエデの顔が湯気を上げるほど真っ赤になった。

「た、たわけ! 誰が貴様のような野蛮で、無神経で、筋肉だるまな男に……!」 

「あ? なんだとコラ」 

「と、とにかく! 拙者はついていく! ジャックの旦那からも許可は得ている!」

 カエデは強引に馬車の後部ドアを開け、荷物を放り込んだ。 そして、居直るように腕を組んで座り込む。

「……どうする、旦那?」 

 グレンが俺を見る。

「戦力が増える分には構わん。それに、ヤマトは彼女の故郷だろ? 案内人がいるのは助かる」

 俺は許可を出した。 カエデの腕は確かだし、何よりグレンとの掛け合いが面白そうだ。

「よし、出発だ! 野郎ども、しっかり捕まってな!」

 ヴォルグがレバーを引く。 ガション、ガション! と音を立てて車輪が変形し、車体下部からフロートが展開される。

 ドッポォォォォンッ!!

 巨大な水飛沫を上げて、鉄の要塞が海へと着水した。 リエルが「きゃあっ! 水がかかったじゃない!」と悲鳴を上げているのが聞こえる。

 魔力エンジンが唸りを上げ、スクリューが回転する。

「うおおお! すげぇ! 本当に浮いてるぞ!」 ティアが窓に張り付いてはしゃぐ。

「海……広いです」

  リリが俺の隣で、青い水平線を見つめて呟いた。 その瞳には、これから向かう故郷への不安と、期待が揺れている。

「大丈夫だ。何があっても、俺が守る」

  俺は彼女の手を握った。 リリは驚いたように俺を見て、それからふわりと微笑んで握り返してきた。

「はい。信じています、ジン様」

 船(馬車)は白波を蹴立てて進む。 港では、小さくなったリエルがいつまでも手を振っているのが見えた。

 目指すは東の果て。桜舞う島国、ヤマト。 そこで俺たちは、リリの過去と、世界の真実の一端に触れることになる。
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