歩く災害と呼ばれた【薄幸の美少女】を救ったら、俺にしか懐かない最強の守護者になった件。~運を下げるスキルで追放されたけど、彼女と一緒なら無敵

ジョウジ

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第87話:第三の天の楔:天空の塔

 荒野を抜け、山岳地帯を超え、俺たちが辿り着いたのは、雲を突き抜けるほど巨大な塔の麓だった。 『天空の塔』。 遥か神話の時代より存在すると言われる、天に最も近い場所。

「でっけぇな……。てっぺんが見えねえぞ」

 グレンが首が痛くなるほど見上げて呟く。 塔の周囲には激しい乱気流が渦巻き、さらに強力な対飛行結界が張られている。ヴォルグの『殲滅馬車』の飛行機能(ニトロ・ブースト)をもってしても、直接頂上へ乗り付けることは不可能だ。 地道に内部を登るしかない。

「行くぞ。ここを折れば、残る楔はあと一つだ」

 俺たちは塔の内部へと足を踏み入れた。

       ◇

 塔の内部は、複雑怪奇な立体迷宮となっていた。 重力が歪み、階段が途切れ、足場が浮遊している。 落ちれば奈落の底へ真っ逆さまだ。

「ひぃぃ……! た、高いですぅ……!」

 ティアが顔面蒼白で壁に張り付いている。 彼女は以前、ワイバーンから落下した経験がトラウマになっているらしく、足元が見えるような場所に来ると極端に挙動不審になる。

「情けねえな聖女様。俺の背中に乗るか?」 

 グレンが親切で背中を向けるが、ティアは首を横に振った。

「だ、駄目です! グレンさんの背中は揺れるから怖いです!」 

「贅沢言うんじゃねえ」

 そんなやり取りをしながらも、俺たちは上層階を目指した。 魔導生物の襲撃をリリとグレンが蹴散らし、ヴォルグがトラップを解除する。 連携は完璧だ。

 だが、最上階直前。 俺たちは最大の難所に直面した。 塔の外壁に沿って設置された、幅数十センチしかない螺旋階段。手すりはない。 強風が吹き荒れ、一歩踏み外せば数千メートル下まで自由落下だ。

「ここを通るのか……?」 

 カエデがごくりと喉を鳴らす。

「行くしかない。リリ、先導しろ。俺が続く」 

「はい」

 リリは平然と細い足場を進んでいく。彼女のバランス感覚なら、綱渡りでも余裕だろう。 俺も風を計算に入れて慎重に進む。

 問題はティアだ。

「む、無理ですぅ……! 足が動きません……!」

 ティアが階段の入り口で座り込んでしまった。 ガタガタと震え、涙目で首を振っている。 あの落下事故の記憶がフラッシュバックしているのだろう。

「置いていくわけにもいかんな」

 俺はため息をつき、ティアの元へ戻った。 そして、彼女の前に手を差し出した。

「立て、ティア。俺の手を掴め」

「ジ、ジン様……でも、私、手が震えて……」 

「大丈夫だ。俺が握ってやる」

 俺はティアの手を強引に取り、強く握りしめた。 そして、もう片方の手で彼女の腰を支える。

「掴まれ。ここはリリの次に安全な場所だ」

 俺の言葉に、ティアが顔を上げた。 不安に揺れていた碧眼に、少しだけ光が戻る。

「……二番目、なんですね」

 ティアは泣き笑いのような表情で、俺の手を握り返した。

「でも……温かいです。信じます、ジン様」

 ティアが立ち上がる。足の震えはまだ止まらないが、俺に体重を預けることでなんとか一歩を踏み出した。 俺たちはゆっくりと、しかし確実に螺旋階段を登りきった。

       ◇

 頂上に到達すると、そこには見慣れた光景――純白の柱『天の楔』が鎮座していた。

「着いたぞ。……ヴォルグ、派手にやれ」 

「おうよ! 高所作業は苦手だが、爆破なら任せろ!」

 ヴォルグが設置した魔導爆弾が起動する。 俺たちは物陰に退避し、カウントダウンを待った。

 ドゴォォォォォンッ!!!!!

 爆風と共に、白い柱が粉々に砕け散る。 破片が雲海へと落下していく。 同時に、塔を覆っていた圧迫感が消滅した。 第三の楔、破壊完了。

「……これで、あとは王都だけだな」

 俺は空を見上げた。 遥か西、故郷の方角。 そこに最後の楔があり、そして全ての決着をつけるべき場所がある。

「帰りましょう、ジン様。私たちの家に」

 リリが隣に立ち、俺の手を握る。 反対側の手は、いつの間にかティアが握っていた。

「あの……怖かったので、もう少しだけ……」

  ティアが顔を赤くして俯いている。

 やれやれ。 俺は二人の少女の手を引いたまま、帰りのルートへと向かった。 世界を取り戻す旅は、いよいよ最終局面へと向かおうとしていた。
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