歩く災害と呼ばれた【薄幸の美少女】を救ったら、俺にしか懐かない最強の守護者になった件。~運を下げるスキルで追放されたけど、彼女と一緒なら無敵

ジョウジ

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第100話:天空へ

 黄金の飛行戦艦『クイーン・リエル号』の甲板に降り立った時、俺は足元の感触に違和感を覚えた。 揺れている。それも、船の揺れではない。 船体そのものが悲鳴を上げている振動だ。

「……酷い有様だな」

 周囲を見渡せば、豪華絢爛だった装飾は剥がれ落ち、甲板は穴だらけで、至る所から煙が上がっている。 物理的には墜落していないのが不思議なレベルだ。

「失礼ね! 私の船はまだピンピンしてるわよ!」

 艦橋からリエルが駆け寄ってくる。 ドレスは煤け、自慢の縦ロールも解けてボサボサだ。だが、その瞳の輝きだけは、宝石よりも強く煌めいていた。

「よく無事で……とは言えない状況みたいね」

 リエルの視線が、俺の腕の中――黒い毛玉の繭に向けられる。 ラクが必死に維持している結界の中で、リリの命が明滅している。

「……ああ。時間がない。急いでくれ」 「わかってるわよ。……総員、配置につきなさい! これより本艦は、あのふざけた『空の城』へ殴り込みをかけるわ!」

 リエルの号令一下、生き残っていた船員たちが動き出す。 俺たちは艦橋(ブリッジ)へと通された。

       ◇

 艦橋の窓から見える景色は、絶望的だった。 頭上に浮かぶ白亜の『天空城』。 そこから、無数の天使がイナゴの大群のように降下してきている。

「ヒャハハ! こりゃあ歓迎されてるなァ!」

 ヴォルグが操舵輪の横で計器を睨む。

「おい女王様! エンジンがイカレてるぞ! これじゃあ高度が上がらねえ!」 

「うるさいわね! 気合で回しなさいよ! ……いいえ、私の『運』で回すわ!」

 リエルが操舵輪を握りしめる。 彼女の【絶対強運】が発動する。 焼き切れかけていた魔力回路が「偶然」繋がり、パージ寸前だった推進器が「奇跡的」に再点火する。

「上昇開始! 振り落とされないようにね!」

 ズズズズズ……ドォォォンッ!!

 満身創痍の黄金船が、物理法則を無視して急上昇を始めた。 迫りくる天使の群れ。 光の槍が雨のように降り注ぐ。

「迎撃する!」

 カエデとグレンが甲板へ飛び出し、襲いかかる天使を撃ち落とす。 ティアも艦橋の中で杖を掲げた。

「わ、私も! 『ホーリー・バリア』!」

 相変わらずの確率バグにより、バリアは「鏡のように光を反射する壁」となって展開された。天使の放った光弾が跳ね返り、同士討ちを誘発する。

「道が開いたわ! 全速前進ッ!」

 リエル号が光の弾幕を突破する。 目指すは天空の頂。 雲を突き抜け、蒼穹の彼方へ。

       ◇

 高度が上がるにつれ、空の色が濃くなっていく。 眼下には、小さくなった王都と、荒廃した大地が広がっていた。

 俺は繭を抱いたまま、窓の外の天空城を見据えた。 あそこには、この世界の全てを書き記した『天理』の中枢がある。 リリを道具として生み出し、使い潰そうとした元凶。

「ジン様……」

 繭の中から、微かな思念が伝わってくる。 リリの声だ。

『……引き返してください。このままでは、皆さんが……』

 まだ、そんなことを言っているのか。 俺は繭を強く抱きしめた。

「断る。ここまで来て手ぶらで帰れるか」

 俺は軍師だ。 かけたコストに見合う成果(リターン)がなければ動かない。 今回、俺が支払ったコストは莫大だ。 平穏な日常。積み上げた資産。そして何より、お前が傷つき、泣いた時間。

「高くつくぞ、天理(かみさま)」

 俺は呟いた。 怒りではない。もっと冷たく、鋭い感情。

「お前は、俺の所有物に手を出した。俺のシナリオを勝手に書き換えようとした」

 天空城が近づいてくる。 神々しい白亜の城壁。威圧的な尖塔。 世界を見下ろす玉座。

「リリ。よく見ておけ」

 俺は宣告した。 世界に向けて。天に向けて。

「神だろうが、運命だろうが関係ない。……俺の女を奪おうとしたことを、魂の髄まで後悔させてやる」

 ドォォォォォォォンッ!!!!!

 リエル号が、天空城の城門に特攻を仕掛けた。 轟音と共に、神の居城が揺らぐ。 黄金の船首が城壁を粉砕し、内部へとねじ込まれていく。

「着いたぜ、大将!」 

「乗り込むぞオラァッ!」

 ハッチが開く。 俺はラクの繭を抱え、粉塵の舞う天空城へと第一歩を踏み出した。

 ここが終着点。 確率の向こう側にある未来を掴み取るための、最後の戦場だ。
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