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第104話:頼れる男たち・殿
機械人形が自壊した時計塔の間を抜け、俺たちは天空城の中枢へと続く長い回廊を走っていた。 だが、天理もタダで通してくれるわけがない。
『侵入者、中枢エリアへ接近。最終防衛ライン、起動』
警報と共に、前方の空間が歪み、光の粒子が集束する。 現れたのは、これまでの天使とは桁違いの魔力を纏った、六枚の翼を持つ上位個体――『熾天使(セラフィム)』クラスの三体だった。
「……おいおい、冗談だろ。一体でも国が滅ぶレベルだぞ」
グレンが足を止め、大剣を構える。 さらに後方からも、追跡してきた天使の群れが迫っていた。 挟み撃ちだ。
「ヴォルグ、突破できるか!?」
「無理だ! 弾薬も魔力もスッカラカンだぜ! 今の俺の火力じゃ、あいつらの障壁(バリア)は抜けねえ!」
ヴォルグが悔しげにガトリング砲を叩く。 ティアのバグも、連続使用は期待できない。 ここで足止めを食らえば、リリの命が尽きる。
「……行くか」
グレンが短く呟き、俺の前に出た。
「旦那。ここは俺たちに任せて、先に行きな」
「グレン?」
「リリの嬢ちゃんが限界だ。……それに、こいつらの相手をするには、ちっとばかし場所が狭すぎる」
グレンはニカっと笑い、親指で背後(俺たちの進行方向)を指した。
「最短距離で駆け抜けろ。後ろの雑魚も、前のデカブツも、俺が全部引き受けてやる」
「……死ぬ気か」
「死なねえよ。俺にはまだ、やり残したこと(道場経営)があるんでな」
グレンの瞳に迷いはない。 俺は頷いた。ここで問答している時間はない。
「頼んだぞ。……死んだら給料は払わんからな」
「へっ、ケチな雇い主だぜ!」
俺は繭を抱え直し、ティアの手を引いて走り出した。 グレンの横をすり抜ける。
「待て、筋肉ダルマ。一人でカッコつけるんじゃねえよ」
ヴォルグが足を止めた。 彼は懐から工具を取り出し、ニヤリと笑う。
「この城の構造、興味深いデータばかりでな。少しばかり『解体』して、俺の技術にしてやりたくなった」
「ヴォルグ、お前もか」
「俺は鍛冶師だ。客(テメェ)が最高の舞台で戦えるように、邪魔な石ころを退かすのが仕事だろ?」
ヴォルグがウィンクする。 さらに。
「拙者も残る」
カエデが刀を抜き、グレンの隣に立った。
「おいカエデ、お前は行け。ここは危険だ」
「断る。……言ったはずだ。貴殿の背中は、拙者が見極めると」
カエデはグレンを見上げ、頬を染めながらも凛と言い放った。
「もう離れんよ。貴方の背中は、拙者が守る」
「……へっ、頼もしい嫁さんをもらったもんだ!」
グレンが照れくさそうに鼻をこする。 カエデの顔が湯気を上げるほど赤くなるが、彼女は退かない。
「さて、役者は揃ったか? ……いや、一人足りないな」
その時、物陰から紫煙が漂ってきた。
「やれやれ。感動的な別れのシーンに水を差すのは野暮だが……俺も混ぜてくれないか?」
姿を現したのは、目深に帽子を被った男――情報屋のジャックだった。 手には二丁の魔導拳銃が握られている。
「ジャック!? あんた、カジノにいたんじゃ……」
「リエルの嬢ちゃんの船に潜り込ませてもらったのさ。俺は全財産をお前に賭けたんだ。最後のカードがめくられる瞬間まで、見届ける義務がある」
ジャックは帽子をクイッと上げ、俺を見た。
「行け、ジン。ジョーカーを切る時だ」
最強の盾、狂気の鍛冶師、東方の剣聖、そして裏社会の顔役。 頼もしすぎる男たち(と女傑)が、壁となって立ちはだかる。
「……ああ。行ってくる」
俺は彼らに背を向け、全速力で駆けた。 背後で、激しい衝突音が響き渡る。
「オラァッ! ここから先は通行止めだッ!」
「ヒャハハ! 神様のパーツ、いただきだぜぇ!」
「我が刃、天をも断つ!」
「賭けは俺たちの勝ちだ。……配当(勝利)を持ってこいよ、ジン!」
男たちの咆哮と、爆発音。 俺は一度も振り返らなかった。 彼らが命懸けで作ってくれたこの道を、一秒たりとも無駄にはできない。
目指すは最上階、天理の坐す『玉座』。 全ての元凶が待つ場所へ。
『侵入者、中枢エリアへ接近。最終防衛ライン、起動』
警報と共に、前方の空間が歪み、光の粒子が集束する。 現れたのは、これまでの天使とは桁違いの魔力を纏った、六枚の翼を持つ上位個体――『熾天使(セラフィム)』クラスの三体だった。
「……おいおい、冗談だろ。一体でも国が滅ぶレベルだぞ」
グレンが足を止め、大剣を構える。 さらに後方からも、追跡してきた天使の群れが迫っていた。 挟み撃ちだ。
「ヴォルグ、突破できるか!?」
「無理だ! 弾薬も魔力もスッカラカンだぜ! 今の俺の火力じゃ、あいつらの障壁(バリア)は抜けねえ!」
ヴォルグが悔しげにガトリング砲を叩く。 ティアのバグも、連続使用は期待できない。 ここで足止めを食らえば、リリの命が尽きる。
「……行くか」
グレンが短く呟き、俺の前に出た。
「旦那。ここは俺たちに任せて、先に行きな」
「グレン?」
「リリの嬢ちゃんが限界だ。……それに、こいつらの相手をするには、ちっとばかし場所が狭すぎる」
グレンはニカっと笑い、親指で背後(俺たちの進行方向)を指した。
「最短距離で駆け抜けろ。後ろの雑魚も、前のデカブツも、俺が全部引き受けてやる」
「……死ぬ気か」
「死なねえよ。俺にはまだ、やり残したこと(道場経営)があるんでな」
グレンの瞳に迷いはない。 俺は頷いた。ここで問答している時間はない。
「頼んだぞ。……死んだら給料は払わんからな」
「へっ、ケチな雇い主だぜ!」
俺は繭を抱え直し、ティアの手を引いて走り出した。 グレンの横をすり抜ける。
「待て、筋肉ダルマ。一人でカッコつけるんじゃねえよ」
ヴォルグが足を止めた。 彼は懐から工具を取り出し、ニヤリと笑う。
「この城の構造、興味深いデータばかりでな。少しばかり『解体』して、俺の技術にしてやりたくなった」
「ヴォルグ、お前もか」
「俺は鍛冶師だ。客(テメェ)が最高の舞台で戦えるように、邪魔な石ころを退かすのが仕事だろ?」
ヴォルグがウィンクする。 さらに。
「拙者も残る」
カエデが刀を抜き、グレンの隣に立った。
「おいカエデ、お前は行け。ここは危険だ」
「断る。……言ったはずだ。貴殿の背中は、拙者が見極めると」
カエデはグレンを見上げ、頬を染めながらも凛と言い放った。
「もう離れんよ。貴方の背中は、拙者が守る」
「……へっ、頼もしい嫁さんをもらったもんだ!」
グレンが照れくさそうに鼻をこする。 カエデの顔が湯気を上げるほど赤くなるが、彼女は退かない。
「さて、役者は揃ったか? ……いや、一人足りないな」
その時、物陰から紫煙が漂ってきた。
「やれやれ。感動的な別れのシーンに水を差すのは野暮だが……俺も混ぜてくれないか?」
姿を現したのは、目深に帽子を被った男――情報屋のジャックだった。 手には二丁の魔導拳銃が握られている。
「ジャック!? あんた、カジノにいたんじゃ……」
「リエルの嬢ちゃんの船に潜り込ませてもらったのさ。俺は全財産をお前に賭けたんだ。最後のカードがめくられる瞬間まで、見届ける義務がある」
ジャックは帽子をクイッと上げ、俺を見た。
「行け、ジン。ジョーカーを切る時だ」
最強の盾、狂気の鍛冶師、東方の剣聖、そして裏社会の顔役。 頼もしすぎる男たち(と女傑)が、壁となって立ちはだかる。
「……ああ。行ってくる」
俺は彼らに背を向け、全速力で駆けた。 背後で、激しい衝突音が響き渡る。
「オラァッ! ここから先は通行止めだッ!」
「ヒャハハ! 神様のパーツ、いただきだぜぇ!」
「我が刃、天をも断つ!」
「賭けは俺たちの勝ちだ。……配当(勝利)を持ってこいよ、ジン!」
男たちの咆哮と、爆発音。 俺は一度も振り返らなかった。 彼らが命懸けで作ってくれたこの道を、一秒たりとも無駄にはできない。
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