歩く災害と呼ばれた【薄幸の美少女】を救ったら、俺にしか懐かない最強の守護者になった件。~運を下げるスキルで追放されたけど、彼女と一緒なら無敵

ジョウジ

文字の大きさ
106 / 150

第106話:裁定者デウス

 巨大な扉を押し開けた先。 そこに広がっていたのは、視界を埋め尽くす「白」だった。 天井も、壁も、床もない。 あるのは、無限に広がる光の空間と、その中心に浮かぶ一つの『座』だけ。

「……ここが、天の頂か」

 俺は繭を抱えたまま、光の床を踏みしめた。 一歩進むたびに、波紋のように光が広がる。 静かだ。 下層での激戦が嘘のように、ここには音がない。風もない。 あるのは、圧倒的なまでの「圧」だけだ。

『……此処まで辿り着くとは。異端なる者よ』

 声が降ってきた。 それは男の声でも、女の声でもない。 数千、数万の声が重なり合ったような、荘厳な響き。

 空間の中央、玉座のような場所に、光の粒子が集束していく。 やがてそれは、一人の巨人の形を成した。 純白の法衣を纏い、顔には目も鼻も口もない、のっぺらぼうの仮面。 背中には、世界を覆うほど巨大な十二枚の光翼が揺らめいている。

『我は裁定者デウス』

 巨人が腕を広げ、名乗りを上げた。

『この世界の理(ことわり)を敷き、管理する、歴史の導き手である』

「随分と待たせてくれたな。おかげで散々な旅だったぞ」

 俺は軽口を叩いてみせたが、内心では冷や汗が止まらなかった。 【解析のモノクル】が機能しない。 ステータスが表示されるはずのウィンドウには、『測定不可』『理解不能』『神域』という警告文字が羅列されているだけだ。 勝てるのか? こんな規格外の存在に。

『我は問う。なぜ抗う』

 デウスが仮面を傾けた。

『天理は絶対であり、円環は慈悲である。  穢れを器(リリ)に集め、勇者がそれを砕く。その循環こそが、この世界を永劫に存続させる唯一の道。  貴様らがしたことは、その救済を拒絶し、世界を滅びへと導く暴挙に過ぎない』

「救済、ねぇ……」

 俺は鼻で笑った。

「誰か一人の犠牲の上に成り立つ平和なんざ、救済とは言わない。それはただの『先送り』だ」

 俺は腕の中の繭を強く抱きしめた。 この中には、世界のために造られ、捨てられ、それでも懸命に生きた少女がいる。 彼女の痛みを、絶望を、慈悲などという言葉で片付けられてたまるか。

「それに、俺は性格が悪くてな。用意された筋書き通りに動くのが大嫌いなんだよ」

『……理解不能』

 デウスの声が、僅かに温度を下げた。

『個の感情で、全の理を否定するか。……愚かしい。極めて愚かしい』

 デウスが右手を掲げる。 その掌に、太陽ごとき輝きが生まれた。

『貴様は歪みだ。世界に不要なノイズだ。  故に、ここで断つ。その穢れた器と共に、虚無へと還れ』

 輝きが閃光となり、俺に向かって放たれた。 速い。 光速そのものだ。回避など不可能。

「くっ……!」

 俺は反射的に【確率操作】を発動しようとした。 だが。
『無駄だ。我の前では、確率などという意味のない概念は存在しない』

 デウスが指を振るう。 それだけで、俺の術式が霧散した。 確率への干渉を弾かれたのではない。 「攻撃が命中する」という結果が、因果の彼方で既に『確定』されているのだ。

【権能:運命固定】。 0%だろうが100%だろうが関係ない。 神が決めたことが、そのまま現実になる。

「しまっ――」

 光が俺を飲み込む。 熱も痛みもない。ただ、存在が削り取られていく喪失感だけがある。 繭を守ろうとした腕が、光の中で崩れていく。

(……ここまで、か)

 俺の意識が白く染まる。 リリを救うどころか、俺自身が消される。 圧倒的な神の力の前に、人の知恵など無力だったのか。

 ――いいえ。

 その時。 俺の意識の底で、凛とした声が響いた。 同時に、後方の扉が爆砕された。

「させませんわよッ!!!」

 ドゴォォォンッ!!

 黄金の光線が、俺を飲み込んでいた神の光を横から弾き飛ばした。 煙の中から飛び込んできたのは、ボロボロになったドレスを翻す、カジノの女王。

「リ、リエル!?」 

「遅くなって悪いわね! エレベーターがなかったから、階段を駆け上がってきたのよ!」

 リエルが肩で息をしながら、不敵に笑う。 さらに、彼女の背後から仲間たちが次々と雪崩れ込んでくる。

「へっ、神様との謁見だろ? 俺たちも混ぜろよ!」

  グレンが大剣を構え、カエデが並び立つ。

「未知のテクノロジーの塊だァ! 分解させろォ!」 

 ヴォルグが涎を垂らしてガトリングを向ける。

「ジ、ジン様! ご無事ですかぁ!?」 

 ティアが転びながら駆け寄ってくる。

 全員、満身創痍だ。 だが、その瞳は死んでいない。

『……増援か。無意味なことを』

 デウスが冷徹に見下ろす。 神対、人とその仲間たち。 絶望的な戦力差は変わらない。 だが、俺の中に消えかけていた炎が、再び熱く燃え上がった。

「……いいや、無意味じゃない」

 俺は立ち上がり、繭をグレンに預けた。 そして、モノクルを正し、神を見据える。

「教えてやるよ、デウス。確定した運命を覆すのが、俺たち『人間』の特権だってことをな!」

 総力戦だ。 確率の向こう側を掴み取るための、最後の戦いが幕を開けた。
感想 0

あなたにおすすめの小説

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

追放即死と思ったら転生して最強薬師、元家族に天罰を

タマ マコト
ファンタジー
名門薬師一族に生まれたエリシアは、才能なしと蔑まれ、家名を守るために追放される。 だがそれは建前で、彼女の異質な才能を恐れた家族による処刑だった。 雨の夜、毒を盛られ十七歳で命を落とした彼女は、同じ世界の片隅で赤子として転生する。 血の繋がらない治療師たちに拾われ、前世の記憶と復讐心を胸に抱いたまま、 “最強薬師”としての二度目の人生が静かに始まる。

掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく

タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。 最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります

しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。 納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。 ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。 そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。 竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。