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第107話:開戦
白亜の空間に、爆音が轟いた。
「ヒャハハハ! 神様だか何だか知らねえが、物理(これ)でぶっ飛ばしてやるよ!」
口火を切ったのはヴォルグだった。 彼が構えた携帯用ガトリング砲から、毎分六千発の魔力弾が吐き出される。 弾幕の雨。 避ける場所などない飽和攻撃が、玉座に立つ巨人を襲う。
『無粋な』
デウスは指先一つ動かさない。 無数の弾丸は、デウスの体に触れる直前で――パチン、とシャボン玉のように弾けて消滅した。 防御障壁ですらない。 「弾丸が命中する」という因果そのものが、世界から抹消されたような消え方だ。
「消えやがった!? マジかよ!」
「隙ありッ!」
ヴォルグの攻撃を囮に、左右からグレンとカエデが肉薄する。
「オラァッ! その仮面、叩き割ってやるぜ!」
「天理とやら、拙者の刃で断ち切ってくれる!」
ヒヒイロカネの大剣と名刀が、左右から同時にデウスの首を狙う。 アルスの魔剣すら防ぎきれなかった最強の物理攻撃。 だが。
ガィィィンッ!!!
硬質な音が響き、二人の武器が弾かれた。 デウスの首元には傷一つない。 何かに阻まれたわけではない。刃が触れた瞬間、そこにある「硬度」が無限大に書き換えられたかのような感触。
「ぐっ……!? 腕が……ッ!」
「骨に……響く……!」
攻撃したはずのグレンとカエデが、苦悶の表情を浮かべる。 絶対的な硬度への攻撃は、その衝撃の全てを攻撃者へと跳ね返していた。 グレンの剛腕から筋肉が断裂する音がし、カエデの手のひらが裂けて血が滴る。
『無駄だ。結果は既に記述されている』
デウスが低い声で告げる。
『我に傷をつけることは不可能。……それは、この世界の前提条件(ルール)である』
デウスの背中から伸びる十二枚の光翼が、ゆらりと動いた。 翼の一枚が、巨大な刃となってグレンたちを払う。
「ぐわぁっ!?」
「きゃぁっ!」
ただの「羽ばたき」に見えた動作が、暴風となって二人を襲う。 見えない圧力がグレンの【金剛皮】を易々と切り裂き、カエデの軽装鎧を粉砕した。 二人は血飛沫を上げながら吹き飛び、壁に激突して動かなくなる。
「させないわよ! 『絶対強運(ヘヴンズ・ラック)』!」
リエルが咄嗟に前に出て、両手をかざす。 彼女の強運が発動し、デウスの追撃の軌道を逸らそうとする。 瓦礫が崩れて盾になったり、床が隆起して足場を崩したりするはずだ。
だが、何も起きない。
「え……? 嘘、私の運が……通用しない!?」
リエルの顔色が青ざめる。 彼女の能力は「確率を自分に都合よく固定する」ものだ。 しかし、デウスの権能は「運命そのものを決定する」もの。 「100%起こる」という神の決定の前では、リエルの強運すらも「誤差」として握りつぶされる。
『小賢しい。運も確率も、全ては我の手のひらの上』
デウスがリエルを見下ろす。
『消えよ』
光の波動がリエルを襲う。 直撃すれば消滅する。
「ええいっ! 『ホーリー・バリア』!」
ティアが杖を振り、リエルの前に飛び出した。 彼女のバグ魔法が発動する。 光の壁が展開される――が、今回は奇跡(ミラクル)は起きなかった。
バリンッ!!
デウスの波動は、バグった障壁をガラス細工のように粉砕した。 余波だけでティアの杖が折れ、リエルのドレスが引き裂かれる。 二人は人形のように宙を舞い、地面に叩きつけられた。
「ティア! リエル!」
「ヒャハ……嘘、だろ……」
ヴォルグがガトリングを構えたまま凍りつく。 彼の自慢の兵器も、デウスの視線を受けただけで、まるで玩具のようにひしゃげ、スクラップと化していた。
圧倒的だ。 攻撃が通じない。防御もできない。 こちらの「理外の力」すらも、さらに上位の「理」によって封殺されている。
これが、神の力。 世界を管理する者の、絶対的な権限。
「……クソッ」
俺は歯を食いしばる。 モノクルで解析しようにも、表示されるのは『アクセス拒否』の文字ばかりだ。 弱点が見えない。攻略の糸口が見つからない。
『理解したか、人よ。これが格の違いだ』
デウスが、ゆっくりと俺の方へ歩み寄ってくる。 その一歩ごとに、空間が軋む。
『諦めよ。そして、その穢れた器を差し出せ。そうすれば、苦しまずに無へと還してやろう』
「……断る」
俺は繭をグレンに預けたまま、一歩前に出た。 震える膝を叱咤し、神を見上げる。
「俺は諦めが悪いんだ。……それに、お前のその『絶対』ってやつが、どれほどのもんか試してやるよ」
ハッタリだ。 だが、ここで引けば終わりだ。 俺にはまだ、切っていないカードがあるはずだ。 仲間たちの力、リリの想い、そして俺自身の「強欲」。 それらを組み合わせて、神の計算を狂わせる「バグ」を生み出すしかない。
「総員、構えろ! まだ終わっちゃいない!」
俺の檄に、倒れていた仲間たちが立ち上がる。 血を流し、息も絶え絶えで、立っているのがやっとの状態。 満身創痍。だが、その瞳から闘志は消えていない。
神殺しの戦いは、まだ始まったばかりだ。
「ヒャハハハ! 神様だか何だか知らねえが、物理(これ)でぶっ飛ばしてやるよ!」
口火を切ったのはヴォルグだった。 彼が構えた携帯用ガトリング砲から、毎分六千発の魔力弾が吐き出される。 弾幕の雨。 避ける場所などない飽和攻撃が、玉座に立つ巨人を襲う。
『無粋な』
デウスは指先一つ動かさない。 無数の弾丸は、デウスの体に触れる直前で――パチン、とシャボン玉のように弾けて消滅した。 防御障壁ですらない。 「弾丸が命中する」という因果そのものが、世界から抹消されたような消え方だ。
「消えやがった!? マジかよ!」
「隙ありッ!」
ヴォルグの攻撃を囮に、左右からグレンとカエデが肉薄する。
「オラァッ! その仮面、叩き割ってやるぜ!」
「天理とやら、拙者の刃で断ち切ってくれる!」
ヒヒイロカネの大剣と名刀が、左右から同時にデウスの首を狙う。 アルスの魔剣すら防ぎきれなかった最強の物理攻撃。 だが。
ガィィィンッ!!!
硬質な音が響き、二人の武器が弾かれた。 デウスの首元には傷一つない。 何かに阻まれたわけではない。刃が触れた瞬間、そこにある「硬度」が無限大に書き換えられたかのような感触。
「ぐっ……!? 腕が……ッ!」
「骨に……響く……!」
攻撃したはずのグレンとカエデが、苦悶の表情を浮かべる。 絶対的な硬度への攻撃は、その衝撃の全てを攻撃者へと跳ね返していた。 グレンの剛腕から筋肉が断裂する音がし、カエデの手のひらが裂けて血が滴る。
『無駄だ。結果は既に記述されている』
デウスが低い声で告げる。
『我に傷をつけることは不可能。……それは、この世界の前提条件(ルール)である』
デウスの背中から伸びる十二枚の光翼が、ゆらりと動いた。 翼の一枚が、巨大な刃となってグレンたちを払う。
「ぐわぁっ!?」
「きゃぁっ!」
ただの「羽ばたき」に見えた動作が、暴風となって二人を襲う。 見えない圧力がグレンの【金剛皮】を易々と切り裂き、カエデの軽装鎧を粉砕した。 二人は血飛沫を上げながら吹き飛び、壁に激突して動かなくなる。
「させないわよ! 『絶対強運(ヘヴンズ・ラック)』!」
リエルが咄嗟に前に出て、両手をかざす。 彼女の強運が発動し、デウスの追撃の軌道を逸らそうとする。 瓦礫が崩れて盾になったり、床が隆起して足場を崩したりするはずだ。
だが、何も起きない。
「え……? 嘘、私の運が……通用しない!?」
リエルの顔色が青ざめる。 彼女の能力は「確率を自分に都合よく固定する」ものだ。 しかし、デウスの権能は「運命そのものを決定する」もの。 「100%起こる」という神の決定の前では、リエルの強運すらも「誤差」として握りつぶされる。
『小賢しい。運も確率も、全ては我の手のひらの上』
デウスがリエルを見下ろす。
『消えよ』
光の波動がリエルを襲う。 直撃すれば消滅する。
「ええいっ! 『ホーリー・バリア』!」
ティアが杖を振り、リエルの前に飛び出した。 彼女のバグ魔法が発動する。 光の壁が展開される――が、今回は奇跡(ミラクル)は起きなかった。
バリンッ!!
デウスの波動は、バグった障壁をガラス細工のように粉砕した。 余波だけでティアの杖が折れ、リエルのドレスが引き裂かれる。 二人は人形のように宙を舞い、地面に叩きつけられた。
「ティア! リエル!」
「ヒャハ……嘘、だろ……」
ヴォルグがガトリングを構えたまま凍りつく。 彼の自慢の兵器も、デウスの視線を受けただけで、まるで玩具のようにひしゃげ、スクラップと化していた。
圧倒的だ。 攻撃が通じない。防御もできない。 こちらの「理外の力」すらも、さらに上位の「理」によって封殺されている。
これが、神の力。 世界を管理する者の、絶対的な権限。
「……クソッ」
俺は歯を食いしばる。 モノクルで解析しようにも、表示されるのは『アクセス拒否』の文字ばかりだ。 弱点が見えない。攻略の糸口が見つからない。
『理解したか、人よ。これが格の違いだ』
デウスが、ゆっくりと俺の方へ歩み寄ってくる。 その一歩ごとに、空間が軋む。
『諦めよ。そして、その穢れた器を差し出せ。そうすれば、苦しまずに無へと還してやろう』
「……断る」
俺は繭をグレンに預けたまま、一歩前に出た。 震える膝を叱咤し、神を見上げる。
「俺は諦めが悪いんだ。……それに、お前のその『絶対』ってやつが、どれほどのもんか試してやるよ」
ハッタリだ。 だが、ここで引けば終わりだ。 俺にはまだ、切っていないカードがあるはずだ。 仲間たちの力、リリの想い、そして俺自身の「強欲」。 それらを組み合わせて、神の計算を狂わせる「バグ」を生み出すしかない。
「総員、構えろ! まだ終わっちゃいない!」
俺の檄に、倒れていた仲間たちが立ち上がる。 血を流し、息も絶え絶えで、立っているのがやっとの状態。 満身創痍。だが、その瞳から闘志は消えていない。
神殺しの戦いは、まだ始まったばかりだ。
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