110 / 150
第110話:最強の盾、砕ける
リエルが稼いだ時間と、俺の解析。 二つが重なり、反撃の狼煙が上がった。
「そこだッ!」
俺の指示に合わせて、ヴォルグがスクラップになった魔導砲を投げつけ、無理やり起爆させる。 ティアがデタラメな軌道で魔法を放ち、カエデが神速で斬り込む。 デウスの『運命固定』に生じた僅かなノイズ。そこを一点集中で突き崩す。
ドガァァァァァンッ!!
攻撃が直撃した。 デウスの周囲に張り巡らされていた不可視の壁が、ガラスのように砕け散る。
『……不快だ』
煙の中から、デウスの声が響いた。 無傷。 だが、その純白の法衣には、僅かだが煤(すす)がついていた。 神に汚れがついた。その事実は、奴の逆鱗に触れるには十分すぎた。
『たかが被造物が。分をわきまえよ』
デウスが両手を広げる。 背中の十二枚の翼が、太陽のように激しく発光した。 空間が振動する。いや、空間そのものが悲鳴を上げている。
「な、なによこの魔力は……!?」
リエルが顔を歪める。
『遊びは終わりだ。世界ごと消え失せろ』
デウスの頭上に、巨大な光の球体が生成される。 それは以前、アルスが放とうとしたブレスや、天使たちの光線とは次元が違った。 純粋な「消滅」のエネルギー。 触れたものを原子レベルで分解し、無へと還元する破壊の光。
「おいおい……マジかよ。あんなもん撃たれたら、城ごと蒸発するぞ!」
ヴォルグが絶叫する。
逃げ場はない。 防御も不可能。 リエルの強運も、ティアの歪みも、この圧倒的な質量差の前では意味をなさない。
「ジン! どうする!?」
カエデが叫ぶ。
俺は思考を巡らせる。だが、解が出ない。 俺の【確率操作】は「可能性」がある事象にしか干渉できない。 生存確率0%の状況では、何もできないのだ。
光の球が膨れ上がり、臨界点に達する。 放たれる――!
「……へっ、シケた顔してんじゃねえよ」
その時。 俺たちの前に、赤い髪の巨漢が立った。
「グレン?」
「旦那。約束、覚えてるか?」
グレンは振り返らず、ヒヒイロカネの大剣『真・岩砕き』を構えた。
「俺は最強の盾だ。……俺の後ろにいる限り、指一本触れさせねえ」
彼は笑っていた。 死を前にして、楽しそうに。
「待て! 貴様、まさか……!」
カエデが駆け寄ろうとする。
「来るなッ!」
グレンが一喝した。 その全身から、真紅の闘気が噴き出す。 スキル【金剛皮】、最大出力。 さらに、ヴォルグが埋め込んだ『魔力吸収転換』の術式を暴走させ、自らの生命力を防御力へと変換する。
「カエデ。……後のことは頼んだぜ」
グレンは優しく呟くと、迫りくる光の奔流に向かって、大剣を突き出した。
「うおおおおおおおおおおッ!!!」
咆哮。 そして、衝突。
カッッッ――――――!!!!!!
世界が白一色に染まった。 音すらも消え失せるほどの衝撃。 俺たちは爆風に吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。
やがて、光が収まる。 俺たちが目を開けた先にあったのは――
「……あ、あぁ……」
カエデの悲痛な声が漏れた。
そこに立っていたのは、炭のように黒く焦げた仁王像だった。 ヒヒイロカネの大剣は跡形もなく消滅している。 両腕は焼け落ち、鎧は溶解し、全身の皮膚が炭化している。
それでも、彼は立っていた。 俺たちを守るように。一歩も退かずに。
「グレン……殿……?」
カエデが這いずり寄り、その足元にすがりつく。 反応はない。 ただ、黒い塊が崩れ落ちるように膝をつき――
ドサリ。
倒れた。
「グレン!!」
「嘘でしょ……あの筋肉ダルマが……!」
「いやぁぁぁっ!」
仲間たちの絶叫が響く。 最強の盾が、砕けた。 それは、俺たちの敗北を意味していた。
『……ほう。耐えたか』
デウスが無感動に見下ろす。 神にとっては、少し頑丈な虫を潰した程度のことなのだろう。 再び、光が集束を始める。 次はない。 今度こそ、全滅だ。
俺は拳を握りしめ、血が出るほど唇を噛んだ。 無力だ。 俺の策も、仲間たちの犠牲も、神の前では無意味なのか。
「……いいえ」
その時。 俺の隣で、グレンに預けていたはずの『繭』が、微かに震えた。
「まだです……。まだ、終わらせません……!」
繭の中から、リリの声が聞こえた。 弱々しい、けれど決して折れない意志の籠もった声。
「ジン様……。私に、アレを」
「アレ……?」
俺はハッとして、懐を探った。 そこにあるのは、俺がずっと隠し持っていた『亜空間の巾着』。 中には、古城の財宝が入っているはずだった。 だが、リリは知っていたのか? 俺がこの中に、本当は何を隠していたのかを。
「……そうか。お前なら、耐えられるか?」
「はい。……だって私は、ジン様の『ゴミ箱』ですから」
俺は巾着の口を開いた。 そこから溢れ出したのは、金銀財宝ではない。 ドス黒く、禍々しい、世界を呪うかのような漆黒の闇。 俺がこれまでリリから吸い上げ続け、圧縮し、保存していた『致死性の不運エネルギー』の結晶。
それを、デウスではなく――繭の中のリリへと注ぎ込んだ。
「そこだッ!」
俺の指示に合わせて、ヴォルグがスクラップになった魔導砲を投げつけ、無理やり起爆させる。 ティアがデタラメな軌道で魔法を放ち、カエデが神速で斬り込む。 デウスの『運命固定』に生じた僅かなノイズ。そこを一点集中で突き崩す。
ドガァァァァァンッ!!
攻撃が直撃した。 デウスの周囲に張り巡らされていた不可視の壁が、ガラスのように砕け散る。
『……不快だ』
煙の中から、デウスの声が響いた。 無傷。 だが、その純白の法衣には、僅かだが煤(すす)がついていた。 神に汚れがついた。その事実は、奴の逆鱗に触れるには十分すぎた。
『たかが被造物が。分をわきまえよ』
デウスが両手を広げる。 背中の十二枚の翼が、太陽のように激しく発光した。 空間が振動する。いや、空間そのものが悲鳴を上げている。
「な、なによこの魔力は……!?」
リエルが顔を歪める。
『遊びは終わりだ。世界ごと消え失せろ』
デウスの頭上に、巨大な光の球体が生成される。 それは以前、アルスが放とうとしたブレスや、天使たちの光線とは次元が違った。 純粋な「消滅」のエネルギー。 触れたものを原子レベルで分解し、無へと還元する破壊の光。
「おいおい……マジかよ。あんなもん撃たれたら、城ごと蒸発するぞ!」
ヴォルグが絶叫する。
逃げ場はない。 防御も不可能。 リエルの強運も、ティアの歪みも、この圧倒的な質量差の前では意味をなさない。
「ジン! どうする!?」
カエデが叫ぶ。
俺は思考を巡らせる。だが、解が出ない。 俺の【確率操作】は「可能性」がある事象にしか干渉できない。 生存確率0%の状況では、何もできないのだ。
光の球が膨れ上がり、臨界点に達する。 放たれる――!
「……へっ、シケた顔してんじゃねえよ」
その時。 俺たちの前に、赤い髪の巨漢が立った。
「グレン?」
「旦那。約束、覚えてるか?」
グレンは振り返らず、ヒヒイロカネの大剣『真・岩砕き』を構えた。
「俺は最強の盾だ。……俺の後ろにいる限り、指一本触れさせねえ」
彼は笑っていた。 死を前にして、楽しそうに。
「待て! 貴様、まさか……!」
カエデが駆け寄ろうとする。
「来るなッ!」
グレンが一喝した。 その全身から、真紅の闘気が噴き出す。 スキル【金剛皮】、最大出力。 さらに、ヴォルグが埋め込んだ『魔力吸収転換』の術式を暴走させ、自らの生命力を防御力へと変換する。
「カエデ。……後のことは頼んだぜ」
グレンは優しく呟くと、迫りくる光の奔流に向かって、大剣を突き出した。
「うおおおおおおおおおおッ!!!」
咆哮。 そして、衝突。
カッッッ――――――!!!!!!
世界が白一色に染まった。 音すらも消え失せるほどの衝撃。 俺たちは爆風に吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。
やがて、光が収まる。 俺たちが目を開けた先にあったのは――
「……あ、あぁ……」
カエデの悲痛な声が漏れた。
そこに立っていたのは、炭のように黒く焦げた仁王像だった。 ヒヒイロカネの大剣は跡形もなく消滅している。 両腕は焼け落ち、鎧は溶解し、全身の皮膚が炭化している。
それでも、彼は立っていた。 俺たちを守るように。一歩も退かずに。
「グレン……殿……?」
カエデが這いずり寄り、その足元にすがりつく。 反応はない。 ただ、黒い塊が崩れ落ちるように膝をつき――
ドサリ。
倒れた。
「グレン!!」
「嘘でしょ……あの筋肉ダルマが……!」
「いやぁぁぁっ!」
仲間たちの絶叫が響く。 最強の盾が、砕けた。 それは、俺たちの敗北を意味していた。
『……ほう。耐えたか』
デウスが無感動に見下ろす。 神にとっては、少し頑丈な虫を潰した程度のことなのだろう。 再び、光が集束を始める。 次はない。 今度こそ、全滅だ。
俺は拳を握りしめ、血が出るほど唇を噛んだ。 無力だ。 俺の策も、仲間たちの犠牲も、神の前では無意味なのか。
「……いいえ」
その時。 俺の隣で、グレンに預けていたはずの『繭』が、微かに震えた。
「まだです……。まだ、終わらせません……!」
繭の中から、リリの声が聞こえた。 弱々しい、けれど決して折れない意志の籠もった声。
「ジン様……。私に、アレを」
「アレ……?」
俺はハッとして、懐を探った。 そこにあるのは、俺がずっと隠し持っていた『亜空間の巾着』。 中には、古城の財宝が入っているはずだった。 だが、リリは知っていたのか? 俺がこの中に、本当は何を隠していたのかを。
「……そうか。お前なら、耐えられるか?」
「はい。……だって私は、ジン様の『ゴミ箱』ですから」
俺は巾着の口を開いた。 そこから溢れ出したのは、金銀財宝ではない。 ドス黒く、禍々しい、世界を呪うかのような漆黒の闇。 俺がこれまでリリから吸い上げ続け、圧縮し、保存していた『致死性の不運エネルギー』の結晶。
それを、デウスではなく――繭の中のリリへと注ぎ込んだ。
あなたにおすすめの小説
追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?
タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。
白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。
しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。
王妃リディアの嫉妬。
王太子レオンの盲信。
そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。
「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」
そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。
彼女はただ一言だけ残した。
「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」
誰もそれを脅しとは受け取らなかった。
だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。
追放即死と思ったら転生して最強薬師、元家族に天罰を
タマ マコト
ファンタジー
名門薬師一族に生まれたエリシアは、才能なしと蔑まれ、家名を守るために追放される。
だがそれは建前で、彼女の異質な才能を恐れた家族による処刑だった。
雨の夜、毒を盛られ十七歳で命を落とした彼女は、同じ世界の片隅で赤子として転生する。
血の繋がらない治療師たちに拾われ、前世の記憶と復讐心を胸に抱いたまま、
“最強薬師”としての二度目の人生が静かに始まる。
掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく
タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。
最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~
きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。
洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。
レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。
しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。
スキルを手にしてから早5年――。
「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」
突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。
森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。
それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。
「どうせならこの森で1番派手にしようか――」
そこから更に8年――。
18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。
「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」
最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。
そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。
竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります
しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。
納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。
ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。
そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。
竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。