歩く災害と呼ばれた【薄幸の美少女】を救ったら、俺にしか懐かない最強の守護者になった件。~運を下げるスキルで追放されたけど、彼女と一緒なら無敵

ジョウジ

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第113話:運命固定の破壊

 神殺しの共同作業は、一方的な展開を見せていた。 俺がデウスの動きを先読みし、リリがその隙を突く。 天理を書き換えるリリの力と、確率の隙間をこじ開ける俺の指揮。二つの歯車が完全に噛み合い、絶対者であるはずのデウスを圧倒していた。

『おのれ……! 被造物風情が、調子に乗るな!』

 デウスが焦りを露わにする。 十二枚あった光翼は、既に半数が斬り落とされ、光を失っていた。 リリの『緋蜂』が振るわれるたびに、神の装甲が紙屑のように舞い散る。

「終わりだ、デウス! お前の筋書きはここで打ち切りだ!」

 俺が叫び、リリに最後の一撃の指示を出そうとした、その時。

『……そうか。理解した』

 デウスの動きがピタリと止まった。 感情のない仮面が、リリではなく、俺の方を向く。

『この歪みの中心は、あの器(リリ)ではない。……貴様だ、ジン・クラウゼル』

 ぞわり、と背筋が粟立つ。

『貴様という特異点が指揮を執るからこそ、器の力が最適化されている。ならば、話は早い』

 デウスが残った翼を全て自壊させた。 膨大な魔力が奔流となり、空間を震わせる。 それは攻撃のための放出ではない。 たった一つの「結果」を、世界に強制的に書き込むための儀式。

『【運命固定】――対象:ジン・クラウゼル』

 世界から音が消えた。 リリが目を見開き、悲鳴を上げながら俺の方へ手を伸ばすのが、スローモーションのように見えた。 だが、間に合わない。 これは攻撃ではない。決定事項だ。

『事象:心臓麻痺による、即死』

 ドクンッ。

 俺の心臓が、鷲掴みにされたように跳ねた。 痛い。熱い。苦しい。 視界が急速に暗くなる。 防御も回避も関係ない。「俺が死ぬ」という未来が、現在に上書きされていく。

(……しまっ、た……!)

 俺が崩れ落ちようとした、その刹那。

「させませんわよッ!!」 

「嫌ですぅぅぅッ!!」

 二つの声が重なった。 リエルとティアだ。

 パリーンッ!!

 俺の周囲で、何かが砕ける音がした。 見れば、リエルが吐血しながら両手をかざし、【絶対強運】の全てを「俺の生存」に注ぎ込んでいた。 そしてティアは、またしても何もないところで転びながら、その拍子に放った回復魔法が暴走し、俺の心臓に「過剰な生命力(バフ)」を叩き込んでいた。

『ノイズ……!? 確定した運命に、干渉だと……!?』

 デウスが狼狽える。 本来なら書き換え不可能な「神の決定」。 だが、リエルの「強運」とティアの「歪み」が、確定したはずの未来に亀裂を入れたのだ。

「オラァッ! 旦那ぁッ! 根性見せろォッ!」

 さらに、瀕死のはずのグレンが、カエデに支えられながら瓦礫を投げつけた。 ただの石ころ。 だが、それがデウスの目の前を横切った一瞬、奴の集中が途切れた。

 わずかな隙。 0%だった生存確率が、0.00001%に揺らぐ。

「……上等だ」

 俺は歯を食いしばり、止まりかけた心臓を意思の力で叩いた。 動け。 俺はまだ、何も手に入れていない。 こんなところで、勝手に終わらせられてたまるか。

「俺の運命は……俺が決めるッ!!」

 俺は懐から【確率操作】の出力を最大にして発動させた。 対象は、自分自身の「死」。 それを全力で否定し、「生」の確率をたぐり寄せる。

 バギィィィィィンッ!!!

 空間が割れる音がした。 俺を縛り付けていた「死の運命」が、物理的な鎖のように砕け散ったのだ。

「はぁ……はぁ……ッ!」

 俺は膝をつきながらも、耐えきった。 心臓が動いている。生きている。

『馬鹿な……。天理の記述を、人間が覆すなど……』

 デウスが後ずさる。 その仮面に、初めて明確な亀裂が入った。

「ジン様ッ!」

 リリが俺を支える。 その目には涙が浮かんでいたが、俺が生還したことを確認すると、すぐに戦士の瞳に戻った。

「……やりましたね」 

「ああ。みんなのおかげだ」

 俺は仲間たちを見た。 ボロボロになりながらも、勝機を繋いでくれた最高の馬鹿ども。

「デウス。これが俺たちの『答え』だ」

 俺は神を見据え、宣言した。

「運命なんざ知ったことか。俺たちは、俺たちの意志で未来を選ぶ」

「はい。……ジン様との未来を!」

 リリが双剣を構える。 デウスの力は尽きかけている。運命固定を破られた反動で、その存在が揺らいでいる。

 チェックメイトだ。

「総員、これで最後だ! あいつに引導を渡してやれ!」

 俺の号令に、全員が最後の力を振り絞る。 神殺しの戦いは、最終局面(クライマックス)へと突入した。
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