歩く災害と呼ばれた【薄幸の美少女】を救ったら、俺にしか懐かない最強の守護者になった件。~運を下げるスキルで追放されたけど、彼女と一緒なら無敵

ジョウジ

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第118話:デウスの暴走

 リリの放った双剣が、デウスの喉元を貫いた。 ヒヒイロカネの刃に込められた「不運(呪い)」と「希望(願い)」が、神の絶対防御を紙くずのように食い破る。

『ガアアアアアアアアッ……!!!』

 デウスが絶叫し、その巨体が大きくのけぞる。 傷口から溢れ出したのは血ではなく、純白の光だった。 光は亀裂となって全身に走り、白亜の装甲がボロボロと剥がれ落ちていく。

「やったか……!?」

 後方でグレンが声を上げる。 致命傷だ。再生能力も追いついていない。 神の権威は地に落ちた。

『……なぜだ。なぜ、理(わたし)が……不完全な被造物に……』

 デウスが膝をつき、怨嗟の声を漏らす。 その仮面は砕け、中にある虚無が露わになっていた。

『世界を正し、秩序を守る。それが私の存在意義。……それを否定するというのなら』

 ゴゴゴゴゴ……ッ。

 不穏な振動が走った。 デウスの体からではなく、この空間――天空城全体からだ。

『この世界に、未来など不要だ』

 デウスの体が融解し、ドロドロとした光の濁流となって床に広がっていく。 それは瞬く間に広がり、城の壁や柱を侵食し始めた。

「な、何をする気だ!?」

 俺が叫ぶと、空間全体からデウスの声が響いた。

『強制浄化(リセット)。……この城ごと地上へ落下し、全ての文明を消し去る』

 自爆。 いや、そんな生易しいものではない。 天空城という巨大な質量と、そこに蓄えられた膨大な魔力エネルギー。それが地上に激突すれば、隕石衝突に匹敵する大災害となる。 王都どころか、大陸の半分が消し飛ぶだろう。

「ふざけるな! 自分が負けたからって、盤面をひっくり返す気か!」 

『そうだ。貴様らが望んだ混沌だ。……受け入れよ』

 デウスの狂気が、城の制御を乗っ取った。 重力制御が解除される。

 ズンッ!!

 凄まじい浮遊感と共に、天空城が落下を始めた。 天井が崩れ、瓦礫が雨のように降り注ぐ。 床が傾き、立っていることさえままならない。

「きゃあああっ!」 

「うおっと!?」

 ティアとヴォルグが転がり、カエデが刀を地面に突き刺して耐える。

「ジン様! ここも保ちません!」

 リリが瓦礫を切り払いながら叫ぶ。 彼女の消耗も限界に近い。神の力を行使し続けた代償で、その体は再び透け始めている。

「くそっ……!」

 俺は歯噛みした。 デウスを倒しても、その怨念が世界を道連れにしようとしている。 このままでは、俺たちもろとも地上に激突して全滅だ。

 逃げるか? いや、間に合わない。リエルの船は大破しているし、ヴォルグの馬車はこの崩壊の中では動かせない。 それに、ここで逃げれば地上の人間が死ぬ。ミライも、ガイルも、この世界で生きてきた全ての人々が。

(……やるしかない)

 俺は決断した。 落下する城。暴走する神。 それら全てを消し飛ばすには、生半可な攻撃では足りない。

「総員、聞け!」

 俺は叫んだ。 崩壊の音に負けないよう、腹の底から声を張り上げる。

「デウスは城と一体化した! 奴の核(コア)は、今やこの城そのものだ! 核を砕けば、暴走は止まる!」 

「核って……どこにあるんだよ!?」 

 グレンが瓦礫を殴り飛ばしながら問う。

「ここだ! 俺たちが立っている、この場所だ!」

 俺は床を指差した。 デウスが最初に融合した場所。玉座があった地点。 そこに、全てのエネルギーが渦巻いている。

「全員の魔力、体力、そして『運』の全てをリリに集めろ! リリの一撃で、この城ごと奴を断ち切る!」

 無茶苦茶な作戦だ。 失敗すれば自爆。成功しても、反動でどうなるかわからない。 だが、誰も異論を唱えなかった。

「へっ、面白ぇ! 最後まで付き合ってやるよ!」 

 グレンが笑う。

「拙者の全霊、捧げよう!」 

 カエデが気を練る。

「私の全財産(運)、使い切りなさいよ!」 

 リエルが叫ぶ。

「せ、聖女の祈りも! 全部持っていってください!」 

 ティアが杖を掲げる。

「ヒャハハ! 俺の最高傑作(緋蜂)だ! 耐えてみせろよ!」 

 ヴォルグが吼える。

 仲間たちの想いが、光となってリリに集まっていく。 リリの体が、黄金と白銀の混ざり合った輝きに包まれる。

「ジン様……」

 リリが俺を見る。 その手は震えていた。 世界の命運を背負う重圧。失敗できない恐怖。

「大丈夫だ」

 俺はリリの背後に立ち、彼女の手を上から包み込んだ。 双剣を一緒に握る。

「俺がついてる。……俺たちの未来を、誰にも邪魔させない」

 俺の言葉に、リリの震えが止まった。 彼女は力強く頷き、前を見据える。

「はい! ……行きましょう、ジン様!」

 城の崩壊が加速する。 迫りくる地面。 その絶望的なタイムリミットの中で、俺たちは最後の構えを取った。

 天理になんか負けない。 俺たちは、幸せになるんだ。

「はあああああああッ!!!」

 二人の気合が重なり、ヒヒイロカネの刃が極限まで輝いた。
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