歩く災害と呼ばれた【薄幸の美少女】を救ったら、俺にしか懐かない最強の守護者になった件。~運を下げるスキルで追放されたけど、彼女と一緒なら無敵

ジョウジ

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第123話:ラクの奇跡

「ラク、全放出だ! 溜め込んだ不運を全部吐き出せ!」

 俺の叫びに呼応し、ラクが大きく息を吸い込んだ。 その小さな体が、風船のように膨らんでいく。

「みゅうッ!!(了解!)」

 ラクが口を大きく開けた瞬間、ドス黒い波動が噴射された。 それは、これまでラクが俺たちの旅路で食べ続けてきた、ありとあらゆる「不運」の集合体だ。 ティアのドジ、戦場の殺意、そして世界を覆っていた呪い。 膨大な負のエネルギーが、物理的な質量を持って空間に解き放たれる。

「【確率操作】――対象:落下する瓦礫群」

 俺はモノクルの解析モードを最大出力にし、カオスと化した周囲の空間情報を読み取った。 数億、数兆の瓦礫の破片。 それらが重力に従って落下する軌道を、全て計算する。

 通常なら、ただバラバラに落ちるだけのガラクタだ。 だが、そこにラクの吐き出した「不運エネルギー」という接着剤を流し込み、確率を歪めることで、ありえない結果を引き寄せる。

「事象確定:『奇跡的なバランスによる結合』および『揚力の発生』!」

 パチン。

 俺が指を鳴らした瞬間、世界が書き換わった。

 ガガガガガガガガッ!!!

 落下していた巨大な壁の破片が、空中で回転し、別の床の破片と激突する。 だが、砕けない。 まるで最初からそうなるように設計されていたかのように、凹凸が完璧に噛み合い、結合したのだ。 さらに、鉄骨が、柱が、装飾品が、磁石に吸い寄せられるように集まっていく。

「な、なんだありゃあ……!?」 

 グレンが口をあんぐりと開ける。

 目の前で起きているのは、物理法則を無視したパズルだ。 無秩序な瓦礫の山が、見る見るうちに一つの巨大な構造物へと組み上がっていく。 それは、歪ながらも美しい流線型を描く、一隻の「船」の形をしていた。

「できたぞ……! 即席の『ノアの方舟』だ!」

 さらに、ラクの不運エネルギーが船底に纏わりつき、落下する際の空気抵抗と爆風を「偶然」完璧な角度で受け止めるクッションとなる。 重力に引かれていた鉄塊が、ふわりと浮力を得た。

「乗り込めッ! これが俺たちの箱舟だ!」

 俺はリリの手を引き、瓦礫の船へと飛び乗った。 足場は不安定だが、不思議と揺れはない。不運エネルギーが衝撃吸収材の役割も果たしているらしい。

「うおおおお! マジかよ!」 

「ヒャハハ! イカれた構造だぜ! だが嫌いじゃねえ!」

 グレンとヴォルグが続く。 カエデがティアを抱えて跳躍し、リエルも優雅に(内心は必死だろうが)着地する。

「全員乗ったな!?」

 俺は確認し、船首(一番突き出た鉄骨)に立った。 ラクが元のサイズに戻り、俺の肩に乗って「みゅヘン!(どうだ!)」と鼻を鳴らす。 顔色は少し悪い(白から灰色になっている)が、やり遂げた達成感に満ちていた。

「よくやった、ラク。……ヴォルグ、操縦はできるか?」 

「任せろ! 動力はないが、俺の爆弾で推進力をつければ滑空くらいはできる!」

 ヴォルグが船尾に走り、残った爆薬をセットする。

「点火ァッ!!」

 ドォォォォンッ!!

 爆発の反動を利用し、瓦礫の船が前へと押し出される。 崩壊する天空城の瓦礫をすり抜け、俺たちは大空へと滑り出した。

「抜けた……!」

 視界が開ける。 頭上では天空城が炎に包まれて墜落していくが、俺たちはその落下軌道から外れ、風に乗って滑空していた。 眼下には、青い海と、懐かしい大地が広がっている。

「……生きて、ます……」

 ティアがへたり込み、涙を流す。 リリが俺に寄り添い、震える手で俺の服を握りしめた。

「ジン様……」 

「ああ。帰るぞ、リリ」

 俺は彼女の肩を抱き、遠ざかる天空城を見つめた。 神との決着はついた。 あとは、この泥臭くて最高な、俺たちの日常へ帰還するだけだ。

「さあ、最後のフライトだ! 舌噛むんじゃねえぞ!」

 俺の号令と共に、瓦礫の船は雲海を切り裂き、地上へと向かって降下を開始した。
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