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第124話:空からの帰還
天空城の崩壊に巻き込まれながら、俺たちの乗った瓦礫の船は空を堕ちていく。 滑空とは言ったものの、それは制御された飛行とは程遠いものだった。 不運エネルギーで無理やり繋ぎ合わせた鉄屑の塊だ。空気抵抗のバランスなど考慮されているはずもない。
「うおおおおおッ! 傾くぞ! 右だ、右に重心を寄せろ!」
ヴォルグが絶叫しながら、船尾で予備の魔導エンジン(リエル号の残骸から剥ぎ取ったもの)を暴走させている。 船体がきしみ、右に大きく傾ぐ。 眼下には雲海が広がり、その切れ間から地上が急速に迫ってくるのが見えた。
「速すぎる! このままじゃ激突してバラバラだ!」
グレンが手すり代わりの鉄骨にしがみつきながら叫ぶ。 その体は包帯だらけで、所々皮膚が赤黒く変色しているが、その動きに淀みはない。 デウスの消滅光を受けた際、ヴォルグが仕込んだ『魔力吸収転換』機能が土壇場で発動し、受けた破壊エネルギーの一部を強制的に「生命力」へと変換して肉体を再生させたのだ。 普通ならショック死する荒療治だが、Sランクの耐久力を持つ彼だからこそ耐えきり、驚異的な速度で前線に復帰していた。
「リエル! 風だ! 向かい風を呼べ!」
俺は船首に立つ女王に指示を飛ばした。 物理的なブレーキがないなら、自然現象を利用するしかない。
「簡単に言ってくれるわね! ……でも、やってやるわよ!」
リエルがドレスの裾を翻し、空に向かって両手を広げた。 彼女の【絶対強運】が発動する。 本来なら吹くはずのない方角から、ありえないタイミングで突風が発生する確率を、無理やり引き寄せる。
「風よ! 私に従いなさい!」
ゴウッ!!
強烈な上昇気流(アップドラフト)が船底を叩いた。 ガクンと衝撃が走り、落下の勢いが殺される。 船首が持ち上がり、落下軌道が滑空軌道へと修正されていく。
「さっすが女王様! 無茶苦茶だぜ!」
「褒めてないで前を見なさい! ゴミが降ってくるわよ!」
リエルの叫び通り、頭上からは崩壊した天空城の破片が隕石のように降り注いでいた。 直撃すれば船ごと木っ端微塵だ。
「迎撃する! カエデ、合わせろ!」
「承知! 我が刃に断てぬものなし!」
グレンとカエデが船上に飛び出す。 迫りくる巨大な瓦礫。 グレンが足元から引き抜いた太い鉄骨を大剣代わりにフルスイングし、カエデが神速の居合いを放つ。
ズドォォンッ!! ザンッ!!
岩塊が粉砕され、切断されて海へと落ちていく。 息の合った連携。 二人は背中合わせになり、次々と降ってくる瓦礫を処理していく。 最強の矛と盾が、俺たちの頭上を守る鉄壁の屋根となっていた。
「よし、障害物はクリアだ! だが……まだ着水時の衝撃が殺しきれない!」
ヴォルグが高度計(適当な魔導具で作ったもの)を見て焦りを滲ませる。 海面まであと数千メートル。 今の速度で水面に突っ込めば、コンクリートに激突するのと同じだ。 何か、クッションになるものが必要だ。
「ティア! 出番だ!」
俺はうずくまっていたティアの襟首を掴んで立たせた。
「ひぃぃ!? な、な、何をすれば!?」
「何でもいい! 『柔らかいもの』を出せ! お前の歪んだ運で、海面をゼリーに変えるなり何なりしてみせろ!」
「む、無茶振りすぎますぅぅぅ!」
ティアが泣きながら杖を振り回す。 パニックになった彼女の魔力が暴走し、杖の先からピンク色の煙が噴き出した。
「おねがいしますぅぅ! 痛くないやつ! ふわふわのやつぅぅ!」
『ホーリー・クラウド(聖なる雲)』……の発動失敗。 ティアの【確率乱高下】が、大気中の水分と魔素に干渉し、ありえない化学反応を引き起こす。
ボフンッ!!
船の周囲に、突如として巨大な「白い塊」が発生した。 雲ではない。 それは、甘い香りを漂わせる、巨大な綿菓子のような泡の集合体だった。
「なんだこりゃ!? ベタベタするぞ!」
「あわわ、雲じゃなくてお菓子になっちゃいました!」
船全体が巨大な綿菓子に包まれる。 見た目はマヌケだが、その弾力と空気抵抗は抜群だった。
バササササッ……。
綿菓子の抵抗により、船の速度が劇的に低下する。 さらに、船底を覆った分厚い泡の層が、究極のエアバッグとなって俺たちを守る。
「……ははっ、傑作だ」
俺は笑った。 不運のエネルギーで組み上げた船を、強運の風が運び、筋肉と剣技が守り、そしてドジっ子の綿菓子が包み込む。 こんなデタラメな脱出劇、どこの神話にも載っていないだろう。
「総員、衝撃に備えろ! 着水するぞ!」
眼下に、王都近郊の巨大湖が迫る。 鏡のような水面。 そこへ向かって、俺たちの箱舟は突っ込んでいった。
「うおおおおおおおッ!」
「きゃああああああッ!」
「みゅーーーーッ!」
全員の絶叫が重なる。 そして。
ズバァァァァァァァンッ!!!!!!!
世界を揺るがすほどの水柱を上げて、俺たちは生還を果たした。
「うおおおおおッ! 傾くぞ! 右だ、右に重心を寄せろ!」
ヴォルグが絶叫しながら、船尾で予備の魔導エンジン(リエル号の残骸から剥ぎ取ったもの)を暴走させている。 船体がきしみ、右に大きく傾ぐ。 眼下には雲海が広がり、その切れ間から地上が急速に迫ってくるのが見えた。
「速すぎる! このままじゃ激突してバラバラだ!」
グレンが手すり代わりの鉄骨にしがみつきながら叫ぶ。 その体は包帯だらけで、所々皮膚が赤黒く変色しているが、その動きに淀みはない。 デウスの消滅光を受けた際、ヴォルグが仕込んだ『魔力吸収転換』機能が土壇場で発動し、受けた破壊エネルギーの一部を強制的に「生命力」へと変換して肉体を再生させたのだ。 普通ならショック死する荒療治だが、Sランクの耐久力を持つ彼だからこそ耐えきり、驚異的な速度で前線に復帰していた。
「リエル! 風だ! 向かい風を呼べ!」
俺は船首に立つ女王に指示を飛ばした。 物理的なブレーキがないなら、自然現象を利用するしかない。
「簡単に言ってくれるわね! ……でも、やってやるわよ!」
リエルがドレスの裾を翻し、空に向かって両手を広げた。 彼女の【絶対強運】が発動する。 本来なら吹くはずのない方角から、ありえないタイミングで突風が発生する確率を、無理やり引き寄せる。
「風よ! 私に従いなさい!」
ゴウッ!!
強烈な上昇気流(アップドラフト)が船底を叩いた。 ガクンと衝撃が走り、落下の勢いが殺される。 船首が持ち上がり、落下軌道が滑空軌道へと修正されていく。
「さっすが女王様! 無茶苦茶だぜ!」
「褒めてないで前を見なさい! ゴミが降ってくるわよ!」
リエルの叫び通り、頭上からは崩壊した天空城の破片が隕石のように降り注いでいた。 直撃すれば船ごと木っ端微塵だ。
「迎撃する! カエデ、合わせろ!」
「承知! 我が刃に断てぬものなし!」
グレンとカエデが船上に飛び出す。 迫りくる巨大な瓦礫。 グレンが足元から引き抜いた太い鉄骨を大剣代わりにフルスイングし、カエデが神速の居合いを放つ。
ズドォォンッ!! ザンッ!!
岩塊が粉砕され、切断されて海へと落ちていく。 息の合った連携。 二人は背中合わせになり、次々と降ってくる瓦礫を処理していく。 最強の矛と盾が、俺たちの頭上を守る鉄壁の屋根となっていた。
「よし、障害物はクリアだ! だが……まだ着水時の衝撃が殺しきれない!」
ヴォルグが高度計(適当な魔導具で作ったもの)を見て焦りを滲ませる。 海面まであと数千メートル。 今の速度で水面に突っ込めば、コンクリートに激突するのと同じだ。 何か、クッションになるものが必要だ。
「ティア! 出番だ!」
俺はうずくまっていたティアの襟首を掴んで立たせた。
「ひぃぃ!? な、な、何をすれば!?」
「何でもいい! 『柔らかいもの』を出せ! お前の歪んだ運で、海面をゼリーに変えるなり何なりしてみせろ!」
「む、無茶振りすぎますぅぅぅ!」
ティアが泣きながら杖を振り回す。 パニックになった彼女の魔力が暴走し、杖の先からピンク色の煙が噴き出した。
「おねがいしますぅぅ! 痛くないやつ! ふわふわのやつぅぅ!」
『ホーリー・クラウド(聖なる雲)』……の発動失敗。 ティアの【確率乱高下】が、大気中の水分と魔素に干渉し、ありえない化学反応を引き起こす。
ボフンッ!!
船の周囲に、突如として巨大な「白い塊」が発生した。 雲ではない。 それは、甘い香りを漂わせる、巨大な綿菓子のような泡の集合体だった。
「なんだこりゃ!? ベタベタするぞ!」
「あわわ、雲じゃなくてお菓子になっちゃいました!」
船全体が巨大な綿菓子に包まれる。 見た目はマヌケだが、その弾力と空気抵抗は抜群だった。
バササササッ……。
綿菓子の抵抗により、船の速度が劇的に低下する。 さらに、船底を覆った分厚い泡の層が、究極のエアバッグとなって俺たちを守る。
「……ははっ、傑作だ」
俺は笑った。 不運のエネルギーで組み上げた船を、強運の風が運び、筋肉と剣技が守り、そしてドジっ子の綿菓子が包み込む。 こんなデタラメな脱出劇、どこの神話にも載っていないだろう。
「総員、衝撃に備えろ! 着水するぞ!」
眼下に、王都近郊の巨大湖が迫る。 鏡のような水面。 そこへ向かって、俺たちの箱舟は突っ込んでいった。
「うおおおおおおおッ!」
「きゃああああああッ!」
「みゅーーーーッ!」
全員の絶叫が重なる。 そして。
ズバァァァァァァァンッ!!!!!!!
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