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第125話:ただいま
眼下に迫る水面。 鏡のように静まり返っていた湖面が、俺たちの接近に合わせてぐんぐんと拡大していく。
「総員、衝撃に備えろ! 舌噛むんじゃねえぞ!」
俺が叫ぶのと同時に、ティアが生み出した巨大な綿菓子のクッションが水面に着弾した。
ズボォォォォォォォンッ!!!!!
世界を揺るがすような轟音。 水しぶきが天高く舞い上がり、虹を作る。 綿菓子が緩衝材となって衝撃を吸収し、瓦礫の船は水面を滑るように着水――することはなく、勢い余って湖の中へと豪快にダイブした。
ゴボボボボッ!
冷たい水が押し寄せてくる。 俺はリリを抱き寄せ、流されないように必死に瓦礫にしがみついた。 周囲では、グレンやカエデたちが泡にまみれてもがいている。
(……生きてるな)
水中でもがく仲間たちの姿を確認し、俺は安堵の息を吐いた(泡になったが)。 瓦礫の船は浮力を失い、湖底へと沈んでいく。 俺たちはそれを蹴って、水面へと浮上した。
プハァッ!
次々と水面に顔を出す仲間たち。
「ぶはっ! ……し、死ぬかと思ったぜ!」
グレンが水を吐き出しながら髪をかき上げる。その皮膚はまだら模様に再生しているが、元気そのものだ。
「拙者、水練は苦手なのだが……!」
カエデがアップアップしながらグレンの腕にしがみついている。
「ヒャハハ! 最高の急流下りだぜェ!」
ヴォルグが仰向けに浮きながら笑っている。
「うぅ……化粧が……ドレスが……最悪よ……」
リエルが濡れた髪を鬱陶しそうに払う。
「あわわ、綿菓子が溶けてベタベタですぅ~!」
ティアが甘い匂いのする水にまみれて泣いている。
全員、無事だ。 五体満足(グレンは多少怪しいが)で、この無茶苦茶な旅から帰ってきた。
「……ふっ、はははは!」
俺はこみ上げる笑いを抑えきれなかった。 なんて無様で、なんて最高な連中だ。 神に喧嘩を売り、世界を敵に回し、空から落ちてきて、最後はずぶ濡れになって大笑いする。 こんな結末、どこの英雄譚にも載っていないだろう。
「ジン様……」
隣で、リリが俺を見つめている。 彼女の体はまだ半透明で、水に溶けてしまいそうだ。 だが、その表情は晴れやかだった。
「……帰ってきましたね」
「ああ。帰ってきた」
俺たちはゆっくりと岸辺に向かって泳ぎだした。 岸には、既に多くの人影が集まっていた。 天空城の落下(実際には回避されたが)と、謎の飛行物体の着水騒ぎを聞きつけた王都の守備隊だ。
「おい! 生存者がいるぞ! 救助班!」
「待て……あれは、ジンか!?」
先頭に立って指揮を執っていたのは、ボロボロの鎧を纏ったガイルだった。 その横には、泥だらけの制服姿のミライもいる。 彼らもまた、地上での激戦を生き抜いたのだ。
「ジン! リリちゃん! みんな!」
ミライが俺たちの姿を認め、靴のまま水に入って駆け寄ってくる。 俺たちが岸に上がると、すぐに多くの人間に囲まれた。 歓声。拍手。そして涙。 かつて「神敵」として指名手配された俺たちを、彼らは「英雄」として迎えてくれた。
「やったな、相棒! 空のアレが消えたぞ! お前らがやったんだろ!?」
ガイルが俺の背中をバンバンと叩く。痛い。
「事後処理が大変ですよ、本当に……。でも、よくご無事で……!」
ミライが涙ぐみながらタオルを渡してくれる。
俺はタオルを受け取り、リリの肩にかけてやった。 リリはそれをぎゅっと握りしめ、俺を見上げた。 夕日が湖面に反射し、彼女の透き通った体を美しく照らしている。
「ジン様」
「ん?」
「ただいま、です」
その言葉に、俺は胸が熱くなるのを感じた。 もう、彼女を縛る楔はない。 世界の理も、運命も、俺たちを邪魔することはできない。 ここにあるのは、俺たちが勝ち取った「居場所」だ。
「ああ。……おかえり、リリ」
俺は彼女の頭を撫でた。 その感触は少し頼りなかったが、確かにそこに存在していた。
「みゅう!」 濡れそぼったラクが、ブルブルと体を震わせて水気を飛ばし、俺の肩によじ登ってきた。
空を見上げる。 あの不吉な亀裂も、天使の姿もない。 ただ、どこまでも青く、澄み渡った空が広がっているだけだった。
長い、長い旅が終わった。 だが、まだやることは残っている。 リリの体を元に戻し、この新しい世界で生きていくための準備だ。
俺は仲間たちと共に、王都の方角――『嘆きの白亜邸』がある方角を見据えた。 あそこが、俺たちの帰る家だ。
「総員、衝撃に備えろ! 舌噛むんじゃねえぞ!」
俺が叫ぶのと同時に、ティアが生み出した巨大な綿菓子のクッションが水面に着弾した。
ズボォォォォォォォンッ!!!!!
世界を揺るがすような轟音。 水しぶきが天高く舞い上がり、虹を作る。 綿菓子が緩衝材となって衝撃を吸収し、瓦礫の船は水面を滑るように着水――することはなく、勢い余って湖の中へと豪快にダイブした。
ゴボボボボッ!
冷たい水が押し寄せてくる。 俺はリリを抱き寄せ、流されないように必死に瓦礫にしがみついた。 周囲では、グレンやカエデたちが泡にまみれてもがいている。
(……生きてるな)
水中でもがく仲間たちの姿を確認し、俺は安堵の息を吐いた(泡になったが)。 瓦礫の船は浮力を失い、湖底へと沈んでいく。 俺たちはそれを蹴って、水面へと浮上した。
プハァッ!
次々と水面に顔を出す仲間たち。
「ぶはっ! ……し、死ぬかと思ったぜ!」
グレンが水を吐き出しながら髪をかき上げる。その皮膚はまだら模様に再生しているが、元気そのものだ。
「拙者、水練は苦手なのだが……!」
カエデがアップアップしながらグレンの腕にしがみついている。
「ヒャハハ! 最高の急流下りだぜェ!」
ヴォルグが仰向けに浮きながら笑っている。
「うぅ……化粧が……ドレスが……最悪よ……」
リエルが濡れた髪を鬱陶しそうに払う。
「あわわ、綿菓子が溶けてベタベタですぅ~!」
ティアが甘い匂いのする水にまみれて泣いている。
全員、無事だ。 五体満足(グレンは多少怪しいが)で、この無茶苦茶な旅から帰ってきた。
「……ふっ、はははは!」
俺はこみ上げる笑いを抑えきれなかった。 なんて無様で、なんて最高な連中だ。 神に喧嘩を売り、世界を敵に回し、空から落ちてきて、最後はずぶ濡れになって大笑いする。 こんな結末、どこの英雄譚にも載っていないだろう。
「ジン様……」
隣で、リリが俺を見つめている。 彼女の体はまだ半透明で、水に溶けてしまいそうだ。 だが、その表情は晴れやかだった。
「……帰ってきましたね」
「ああ。帰ってきた」
俺たちはゆっくりと岸辺に向かって泳ぎだした。 岸には、既に多くの人影が集まっていた。 天空城の落下(実際には回避されたが)と、謎の飛行物体の着水騒ぎを聞きつけた王都の守備隊だ。
「おい! 生存者がいるぞ! 救助班!」
「待て……あれは、ジンか!?」
先頭に立って指揮を執っていたのは、ボロボロの鎧を纏ったガイルだった。 その横には、泥だらけの制服姿のミライもいる。 彼らもまた、地上での激戦を生き抜いたのだ。
「ジン! リリちゃん! みんな!」
ミライが俺たちの姿を認め、靴のまま水に入って駆け寄ってくる。 俺たちが岸に上がると、すぐに多くの人間に囲まれた。 歓声。拍手。そして涙。 かつて「神敵」として指名手配された俺たちを、彼らは「英雄」として迎えてくれた。
「やったな、相棒! 空のアレが消えたぞ! お前らがやったんだろ!?」
ガイルが俺の背中をバンバンと叩く。痛い。
「事後処理が大変ですよ、本当に……。でも、よくご無事で……!」
ミライが涙ぐみながらタオルを渡してくれる。
俺はタオルを受け取り、リリの肩にかけてやった。 リリはそれをぎゅっと握りしめ、俺を見上げた。 夕日が湖面に反射し、彼女の透き通った体を美しく照らしている。
「ジン様」
「ん?」
「ただいま、です」
その言葉に、俺は胸が熱くなるのを感じた。 もう、彼女を縛る楔はない。 世界の理も、運命も、俺たちを邪魔することはできない。 ここにあるのは、俺たちが勝ち取った「居場所」だ。
「ああ。……おかえり、リリ」
俺は彼女の頭を撫でた。 その感触は少し頼りなかったが、確かにそこに存在していた。
「みゅう!」 濡れそぼったラクが、ブルブルと体を震わせて水気を飛ばし、俺の肩によじ登ってきた。
空を見上げる。 あの不吉な亀裂も、天使の姿もない。 ただ、どこまでも青く、澄み渡った空が広がっているだけだった。
長い、長い旅が終わった。 だが、まだやることは残っている。 リリの体を元に戻し、この新しい世界で生きていくための準備だ。
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