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第127話:英雄たちの凱旋
湖畔のキャンプ地で一晩の休息を取った俺たちは、翌日の昼前、王都へ向けて出発することになった。
「ジン様、体調はいかがですか?」
「ああ、悪くない。筋肉痛もだいぶ引いた」
リリが心配そうに覗き込んでくる。 彼女はもう透けていない。太陽の下を歩き、影を落とし、しっかりと大地を踏みしめている。 その当たり前の光景が、何よりも嬉しかった。
「準備はいいか? ミライたちが王都の門で待っているそうだ」
俺が声をかけると、仲間たちが集まってきた。 グレンは包帯だらけだが、自慢の大剣(代用品の鉄骨ではなく、ヴォルグが予備パーツで応急修理したもの)を担いでいる。 カエデも刀の手入れを済ませ、凛とした表情だ。 ティアは「ひぃぃ、また怒られるんじゃ……」と怯えているが、まあ大丈夫だろう。 ヴォルグとリエルは、大破した飛行戦艦の残骸回収手配で忙しそうだ。
俺たちはギルドが用意してくれた馬車(ヴォルグ製ではない普通の馬車)に乗り込み、王都への道を揺られた。
◇
王都の正門が見えてくると、異様な熱気が伝わってきた。
「……なんだ、あの騒ぎは」
グレンが窓から顔を出す。 門の前には、数え切れないほどの人だかりができていた。 衛兵、冒険者、そして一般市民たち。 彼らは俺たちの馬車を見つけると、一斉に歓声を上げた。
「来たぞォォォッ!! 英雄の帰還だァッ!!」
「ジン様ーッ! リリ様ーッ!」
「世界を救ってくれてありがとうーッ!」
花吹雪が舞う。 ラッパの音が鳴り響く。 それは、紛れもない「凱旋パレード」の光景だった。
「……おいおい。聞いてないぞ、こんな歓迎は」
俺が呆気に取られていると、馬車の窓をコンコンと叩く音がした。 並走する騎馬隊の先頭、凛々しい制服姿のミライがウィンクを飛ばしていた。
「ふふっ、サプライズです! ギルドの総力を挙げて『真実』を広めておきましたから!」
「真実?」
「ええ。『神敵』という汚名は、敵(天理)を欺き、世界を救うためにあえて被った偽装工作だった……と。世界中の支部に通達して、号外をばら撒いたんです」
ミライは悪戯っぽく笑う。
「あの手配書の似顔絵が落書き(ティアの仕業)になっていたおかげで、教会の権威は失墜していましたし、民衆も『何か裏があるのでは』と噂していましたから。そこに『実は彼らこそが真の英雄だった!』という劇的なシナリオを流せば……人は簡単に熱狂するものです」
……なるほど。 情報操作か。流石は支部長代理、策士だ。 俺たちが戦っている間に、地上では彼女が「世論」という戦場で戦ってくれていたわけだ。
「……すごいですね」
リリが目を丸くしている。
「数日前までは、『神敵』として追われていたのに」
「ああ。現金なもんだ」
俺は苦笑した。 街の至る所に貼られていた俺たちの(落書きのような)手配書は剥がされ、代わりに『救国の英雄』と書かれた垂れ幕が掲げられている。 天理が消え、人々は本能的に悟ったのだろう。 自分たちを縛り付けていた「見えない鎖」が断ち切られ、真の自由が訪れたことを。
「あ、見てください! ティア様のファンクラブですよ!」
「えっ!? 私のですか!?」
ティアが指差す先には、『奇跡の聖女ティア様万歳!』と書かれた横断幕を持つ一団がいた。 どうやら彼女のドジ(奇跡)によって救われた人々らしい。 ティアは
「うぅ……石を投げられると思ってましたぁ……」
と感涙している。
「へっ、俺たちの人気も中々じゃねえか!」
グレンとカエデの方にも、武人たちが敬礼を送っている。 ヴォルグには……まあ、工房の爆発を懐かしむ職人たちが手を振っていた。
「……ジン様」
リリが俺の手を握る。
「恥ずかしいですか?」
「……まあな。裏方稼業が長かったから、こういうのは慣れない」
「ふふっ。でも、胸を張ってください」
リリは俺の手を引き、窓の外へ向けさせた。 そして、群衆に向かって満面の笑みで手を振り返す。
「貴方は、世界を救った最高の軍師なんですから!」
その笑顔につられて、俺も観念した。 まあ、たまにはこういうのも悪くないか。
俺たちは群衆の歓声に包まれながら、王城へと続く大通りを進んだ。 その道の先には、ミライやガイル、そしてこの国の重鎮たちが待っているはずだ。 盛大な論功行賞と、そして――本当の意味での「日常」への入り口が。
「みゅう!(すごいぞ!)」
ラクもリリの肩の上で、得意げに手を振っていた(ように見えた)。
「ジン様、体調はいかがですか?」
「ああ、悪くない。筋肉痛もだいぶ引いた」
リリが心配そうに覗き込んでくる。 彼女はもう透けていない。太陽の下を歩き、影を落とし、しっかりと大地を踏みしめている。 その当たり前の光景が、何よりも嬉しかった。
「準備はいいか? ミライたちが王都の門で待っているそうだ」
俺が声をかけると、仲間たちが集まってきた。 グレンは包帯だらけだが、自慢の大剣(代用品の鉄骨ではなく、ヴォルグが予備パーツで応急修理したもの)を担いでいる。 カエデも刀の手入れを済ませ、凛とした表情だ。 ティアは「ひぃぃ、また怒られるんじゃ……」と怯えているが、まあ大丈夫だろう。 ヴォルグとリエルは、大破した飛行戦艦の残骸回収手配で忙しそうだ。
俺たちはギルドが用意してくれた馬車(ヴォルグ製ではない普通の馬車)に乗り込み、王都への道を揺られた。
◇
王都の正門が見えてくると、異様な熱気が伝わってきた。
「……なんだ、あの騒ぎは」
グレンが窓から顔を出す。 門の前には、数え切れないほどの人だかりができていた。 衛兵、冒険者、そして一般市民たち。 彼らは俺たちの馬車を見つけると、一斉に歓声を上げた。
「来たぞォォォッ!! 英雄の帰還だァッ!!」
「ジン様ーッ! リリ様ーッ!」
「世界を救ってくれてありがとうーッ!」
花吹雪が舞う。 ラッパの音が鳴り響く。 それは、紛れもない「凱旋パレード」の光景だった。
「……おいおい。聞いてないぞ、こんな歓迎は」
俺が呆気に取られていると、馬車の窓をコンコンと叩く音がした。 並走する騎馬隊の先頭、凛々しい制服姿のミライがウィンクを飛ばしていた。
「ふふっ、サプライズです! ギルドの総力を挙げて『真実』を広めておきましたから!」
「真実?」
「ええ。『神敵』という汚名は、敵(天理)を欺き、世界を救うためにあえて被った偽装工作だった……と。世界中の支部に通達して、号外をばら撒いたんです」
ミライは悪戯っぽく笑う。
「あの手配書の似顔絵が落書き(ティアの仕業)になっていたおかげで、教会の権威は失墜していましたし、民衆も『何か裏があるのでは』と噂していましたから。そこに『実は彼らこそが真の英雄だった!』という劇的なシナリオを流せば……人は簡単に熱狂するものです」
……なるほど。 情報操作か。流石は支部長代理、策士だ。 俺たちが戦っている間に、地上では彼女が「世論」という戦場で戦ってくれていたわけだ。
「……すごいですね」
リリが目を丸くしている。
「数日前までは、『神敵』として追われていたのに」
「ああ。現金なもんだ」
俺は苦笑した。 街の至る所に貼られていた俺たちの(落書きのような)手配書は剥がされ、代わりに『救国の英雄』と書かれた垂れ幕が掲げられている。 天理が消え、人々は本能的に悟ったのだろう。 自分たちを縛り付けていた「見えない鎖」が断ち切られ、真の自由が訪れたことを。
「あ、見てください! ティア様のファンクラブですよ!」
「えっ!? 私のですか!?」
ティアが指差す先には、『奇跡の聖女ティア様万歳!』と書かれた横断幕を持つ一団がいた。 どうやら彼女のドジ(奇跡)によって救われた人々らしい。 ティアは
「うぅ……石を投げられると思ってましたぁ……」
と感涙している。
「へっ、俺たちの人気も中々じゃねえか!」
グレンとカエデの方にも、武人たちが敬礼を送っている。 ヴォルグには……まあ、工房の爆発を懐かしむ職人たちが手を振っていた。
「……ジン様」
リリが俺の手を握る。
「恥ずかしいですか?」
「……まあな。裏方稼業が長かったから、こういうのは慣れない」
「ふふっ。でも、胸を張ってください」
リリは俺の手を引き、窓の外へ向けさせた。 そして、群衆に向かって満面の笑みで手を振り返す。
「貴方は、世界を救った最高の軍師なんですから!」
その笑顔につられて、俺も観念した。 まあ、たまにはこういうのも悪くないか。
俺たちは群衆の歓声に包まれながら、王城へと続く大通りを進んだ。 その道の先には、ミライやガイル、そしてこの国の重鎮たちが待っているはずだ。 盛大な論功行賞と、そして――本当の意味での「日常」への入り口が。
「みゅう!(すごいぞ!)」
ラクもリリの肩の上で、得意げに手を振っていた(ように見えた)。
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