132 / 150
第132話:復興の槌音
天使の残党狩りと並行して、王都では急ピッチで復興作業が進められていた。 特に被害の大きかった中央広場や地下遺跡周辺は、瓦礫の山となっていたが、そこには活気ある槌音が響き渡っていた。
「ヒャハハハ! 見ろよこのパワー! これぞ魔導科学の結晶だァ!」
復興現場の中心で、ヴォルグが高笑いしている。 彼が操縦しているのは、天使の残骸(装甲板)を加工して作った巨大な人型重機――『スーパー解体くん1号』だ。 無骨な鉄のアームが、数トンある瓦礫を軽々と持ち上げ、運搬用の荷車へと積み込んでいく。
「すげぇなヴォルグの旦那! 俺も負けてられねえ!」
グレンも負けじと、素手で岩を持ち上げて運んでいる。 スキル【怪力乱神】が消えても、鍛え上げた筋肉は裏切らないらしい。
「ふん。力任せだけが能ではないぞ。……ほっ!」
カエデは瓦礫の隙間に落ちた家具や遺失物を、身軽な動きで回収している。 それぞれの得意分野を活かした復興支援。 それを見守る俺の元に、またしてもあの女性が現れた。
「ジン様。こちらにおられましたか」
ギルド総裁のミライだ。 彼女の手には、分厚い書類の束が抱えられている。
「……また仕事か? 俺は現場監督で忙しいんだが」
「監督と言いつつ、日陰でサボっているだけに見えますが?」
ミライはニコリと笑い、書類を突き出した。
「新しい都市計画の草案です。特に下水道と魔力ラインの再設計について、ジン様の意見を聞きたいと技術班が泣きついてきまして」
「あいつら、自分で考えろよ……」
俺は渋々書類を受け取った。 かつてアルスたちのためにダンジョン攻略ルートを引いていたスキルが、まさか下水道の配管図を引くのに役立つとはな。 世の中、何がどう転ぶかわからないものだ。
「あら、こちらの計算式、少し効率が悪いですね」
俺の横から書類を覗き込んだリリが、ペンを取り出してさらさらと修正を加えた。
「ここの魔力パイプを迂回させれば、供給ロスを3%減らせます。あと、こっちの資材はヴォルグさんの工房の廃材を流用すればコストダウンできますよ」
「……」
ミライが目を丸くする。 俺も驚いた。 リリは元々賢いが、ここ最近の「主婦業(家計管理)」を通じて、コスト管理や効率化のスキルがメキメキと上達している。
「……リリ様。もしよろしければ、ギルドの経理部に……」
「お断りします。私はジン様の専属秘書(自称)ですので」
リリは即答し、俺の腕に抱きついた。 ミライは残念そうに肩を落とす。
その時だった。 現場の方から、ヴォルグの焦った声が聞こえてきた。
「お、おい! 止まれ! レバーが戻らねぇ!」
見れば、『スーパー解体くん1号』が制御不能になり、暴れまわっている。 アームが滅茶苦茶に振り回され、積んだばかりの瓦礫を撒き散らしている。
「あぶねぇ!」
グレンが作業員を庇って前に出る。
「ちっ、相変わらず詰めが甘いな!」
俺は走り出した。 確率操作はない。だが、機械の構造ならヴォルグから嫌というほど聞かされている。
「リリ! 右足の油圧パイプを狙え! あそこが弱点だ!」
「はいッ!」
リリが小石を拾い、投擲する。 ヒュンッ! 石は正確に重機の関節部に命中し、パイプを破損させた。
プシューッ! オイルが噴き出し、重機のバランスが崩れる。
「今だグレン! 押し倒せ!」
「おうよッ!」
グレンがタックルをかまし、巨大な鉄の塊を横転させた。 ズズーンッ! 砂煙が舞う中、重機は機能を停止した。
「……ふぅ。死ぬかと思ったぜ」
ヴォルグが操縦席から這い出してくる。
「ヴォルグ。……後で説教だ」
「ひぃッ! わ、悪気はなかったんだよぉ!」
ミライの冷たい視線に、ヴォルグが縮こまる。 周囲の作業員たちは、一瞬の静寂の後、どっと笑い声を上げた。 トラブルさえも笑い飛ばす逞しさ。 それが、今のこの街の空気だった。
「……平和ですね」
リリが俺の服の埃を払いながら微笑む。
「まあな。退屈はしなさそうだが」
俺は苦笑し、再びミライから渡された書類に目を落とした。 破壊の後は、再生だ。 俺たちが壊した「天理」の代わりに、人々自身の手で積み上げる新しい世界。 その礎を作る手伝いくらいは、してやってもいいだろう。
復興の槌音は、夕暮れまで止むことなく響き続けていた。
「ヒャハハハ! 見ろよこのパワー! これぞ魔導科学の結晶だァ!」
復興現場の中心で、ヴォルグが高笑いしている。 彼が操縦しているのは、天使の残骸(装甲板)を加工して作った巨大な人型重機――『スーパー解体くん1号』だ。 無骨な鉄のアームが、数トンある瓦礫を軽々と持ち上げ、運搬用の荷車へと積み込んでいく。
「すげぇなヴォルグの旦那! 俺も負けてられねえ!」
グレンも負けじと、素手で岩を持ち上げて運んでいる。 スキル【怪力乱神】が消えても、鍛え上げた筋肉は裏切らないらしい。
「ふん。力任せだけが能ではないぞ。……ほっ!」
カエデは瓦礫の隙間に落ちた家具や遺失物を、身軽な動きで回収している。 それぞれの得意分野を活かした復興支援。 それを見守る俺の元に、またしてもあの女性が現れた。
「ジン様。こちらにおられましたか」
ギルド総裁のミライだ。 彼女の手には、分厚い書類の束が抱えられている。
「……また仕事か? 俺は現場監督で忙しいんだが」
「監督と言いつつ、日陰でサボっているだけに見えますが?」
ミライはニコリと笑い、書類を突き出した。
「新しい都市計画の草案です。特に下水道と魔力ラインの再設計について、ジン様の意見を聞きたいと技術班が泣きついてきまして」
「あいつら、自分で考えろよ……」
俺は渋々書類を受け取った。 かつてアルスたちのためにダンジョン攻略ルートを引いていたスキルが、まさか下水道の配管図を引くのに役立つとはな。 世の中、何がどう転ぶかわからないものだ。
「あら、こちらの計算式、少し効率が悪いですね」
俺の横から書類を覗き込んだリリが、ペンを取り出してさらさらと修正を加えた。
「ここの魔力パイプを迂回させれば、供給ロスを3%減らせます。あと、こっちの資材はヴォルグさんの工房の廃材を流用すればコストダウンできますよ」
「……」
ミライが目を丸くする。 俺も驚いた。 リリは元々賢いが、ここ最近の「主婦業(家計管理)」を通じて、コスト管理や効率化のスキルがメキメキと上達している。
「……リリ様。もしよろしければ、ギルドの経理部に……」
「お断りします。私はジン様の専属秘書(自称)ですので」
リリは即答し、俺の腕に抱きついた。 ミライは残念そうに肩を落とす。
その時だった。 現場の方から、ヴォルグの焦った声が聞こえてきた。
「お、おい! 止まれ! レバーが戻らねぇ!」
見れば、『スーパー解体くん1号』が制御不能になり、暴れまわっている。 アームが滅茶苦茶に振り回され、積んだばかりの瓦礫を撒き散らしている。
「あぶねぇ!」
グレンが作業員を庇って前に出る。
「ちっ、相変わらず詰めが甘いな!」
俺は走り出した。 確率操作はない。だが、機械の構造ならヴォルグから嫌というほど聞かされている。
「リリ! 右足の油圧パイプを狙え! あそこが弱点だ!」
「はいッ!」
リリが小石を拾い、投擲する。 ヒュンッ! 石は正確に重機の関節部に命中し、パイプを破損させた。
プシューッ! オイルが噴き出し、重機のバランスが崩れる。
「今だグレン! 押し倒せ!」
「おうよッ!」
グレンがタックルをかまし、巨大な鉄の塊を横転させた。 ズズーンッ! 砂煙が舞う中、重機は機能を停止した。
「……ふぅ。死ぬかと思ったぜ」
ヴォルグが操縦席から這い出してくる。
「ヴォルグ。……後で説教だ」
「ひぃッ! わ、悪気はなかったんだよぉ!」
ミライの冷たい視線に、ヴォルグが縮こまる。 周囲の作業員たちは、一瞬の静寂の後、どっと笑い声を上げた。 トラブルさえも笑い飛ばす逞しさ。 それが、今のこの街の空気だった。
「……平和ですね」
リリが俺の服の埃を払いながら微笑む。
「まあな。退屈はしなさそうだが」
俺は苦笑し、再びミライから渡された書類に目を落とした。 破壊の後は、再生だ。 俺たちが壊した「天理」の代わりに、人々自身の手で積み上げる新しい世界。 その礎を作る手伝いくらいは、してやってもいいだろう。
復興の槌音は、夕暮れまで止むことなく響き続けていた。
あなたにおすすめの小説
追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?
タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。
白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。
しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。
王妃リディアの嫉妬。
王太子レオンの盲信。
そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。
「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」
そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。
彼女はただ一言だけ残した。
「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」
誰もそれを脅しとは受け取らなかった。
だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。
追放即死と思ったら転生して最強薬師、元家族に天罰を
タマ マコト
ファンタジー
名門薬師一族に生まれたエリシアは、才能なしと蔑まれ、家名を守るために追放される。
だがそれは建前で、彼女の異質な才能を恐れた家族による処刑だった。
雨の夜、毒を盛られ十七歳で命を落とした彼女は、同じ世界の片隅で赤子として転生する。
血の繋がらない治療師たちに拾われ、前世の記憶と復讐心を胸に抱いたまま、
“最強薬師”としての二度目の人生が静かに始まる。
掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく
タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。
最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~
きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。
洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。
レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。
しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。
スキルを手にしてから早5年――。
「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」
突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。
森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。
それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。
「どうせならこの森で1番派手にしようか――」
そこから更に8年――。
18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。
「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」
最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。
そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。
竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります
しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。
納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。
ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。
そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。
竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。