歩く災害と呼ばれた【薄幸の美少女】を救ったら、俺にしか懐かない最強の守護者になった件。~運を下げるスキルで追放されたけど、彼女と一緒なら無敵

ジョウジ

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第133話:聖女の巡回診療

 王都の復興が軌道に乗り始めた頃、俺たちは王都近郊の村々を回っていた。 名目は「被災状況の視察」だが、実態はティアの聖女活動への付き添いだ。 教会から正式に聖女として認定された彼女は、張り切って各地の巡回診療を申し出たのだ。

「皆様ー! 聖女ティアが参りましたよー! お怪我や病気の方はいませんかー!」

 村の広場で、ティアが杖を掲げて声を張り上げる。 純白の法衣に身を包んだその姿は、黙っていれば神々しい。黙っていれば。

「おお、聖女様だ! ありがてぇ!」 

「腰が痛くて農作業ができねえんだ、頼むよ!」

 村人たちがわらわらと集まってくる。 ティアは満面の笑みで一人一人に対応していく。

「はい、腰ですね! 痛いの痛いの、飛んでいけー! 『ヒール』!」

 ティアが魔法を唱える。 淡い光が老人の腰を包み込む。 ここまでは順調だ。だが、彼女の天性のドジっ子体質は、平穏な結末を許さない。

「うわっ!?」

 老人が突然、ブレイクダンスのような動きで回転し始めた。

「じ、爺さん!?」 

「止まらん! 体が勝手に動くんじゃ! ……おおっ? 痛くない! 腰が軽いぞ!」

 老人は高速回転しながら、喜びの声を上げている。 どうやら回復魔法の効果が「運動エネルギー」に変換され、強制的にリハビリ(?)を行わせているらしい。

「あわわ、ごめんなさい! すぐに止めます!」

 ティアが慌てて駆け寄ろうとして、何もないところでつまずいた。 手にした杖がすっぽ抜け、広場の井戸の中へと落下していく。

 カポーン。

 間の抜けた音が響いた直後。

 ドバァァァァァッ!!!

 井戸から凄まじい勢いで水が噴き出した。 間欠泉のような水柱が上がり、村人たちをずぶ濡れにする。

「ひぃぃっ! 爆発しましたぁ!」 

「こ、これは……水だ! 枯れかけていた井戸から水が出たぞ!」

 村長の叫び声に、周囲がどよめく。 この村は長年、水不足に悩まされていたらしい。ティアの杖が偶然にも地下水脈の岩盤を砕き、詰まりを解消したのだ。

「すげぇ……。じっちゃんの腰は治るわ、水不足は解消するわ、一石二鳥じゃねえか」 

「聖女様万歳! 奇跡の聖女様だ!」

 村人たちが濡れるのも構わず、ティアを胴上げし始める。 当の本人は「え? え?」と目を回しているが、結果オーライだ。

「……相変わらずだな」

 村外れの木陰でその様子を見ていた俺は、呆れつつも苦笑した。 隣では、リリがバスケットからサンドイッチを取り出している。

「ふふっ。ティアさんの周りはいつも賑やかですね」 

「騒がしいの間違いだろ。まあ、平和でいいが」

 俺はサンドイッチを受け取り、口に運ぶ。 リリ特製のBLTサンド。厚切りのベーコンと瑞々しいレタスの相性が抜群だ。

「しかし、護衛が必要だったか? 今の世界に、聖女を襲うような輩もいないだろう」 

「念のためですよ。それに……」

 リリが視線を向けた先には、村の入口で警備に当たっているグレンとカエデの姿があった。 二人は並んで立ち、のどかな田園風景を眺めている。

「あっちの二人も、少しは進展させないと」

 リリが悪戯っぽく笑う。 なるほど。今回の遠出は、あの二人のためのデート(任務付き)でもあったわけか。

「おい、グレン。カエデ。飯にするぞ」

 俺が声をかけると、二人が戻ってきた。

「おう! 腹減ったぜ!」 

「かたじけない。……しかし、平和だな」

 カエデが刀を置き、座り込む。 その顔は穏やかだ。戦いの螺旋から解放され、ようやく訪れた日常を噛み締めているようだった。

「なあカエデ。この村、道場を開くには良さそうな場所じゃねえか?」 

「ふむ……。空気も澄んでいるし、修行には適しているかもしれん。だが、少し田舎すぎるか」 

「違いねえ。俺としちゃ、もっと賑やかな場所でデカい看板を掲げてえ」

 二人は自然な様子で未来の話をしている。 そこに、もう迷いはない。

「みゅ~」

 ラクがグレンの膝に乗り、パンをねだる。 グレンは「しょうがねえな」とパンをちぎってやり、その横顔をカエデが愛おしそうに見つめている。

「……良い風景ですね、ジン様」 

「ああ」

 俺はリリの肩を抱き寄せた。 世界は少しずつ、あるべき形へと落ち着こうとしている。 トラブルメーカーの聖女が起こす騒動も、今では平和の象徴のようなものだ。

「きゃあああ! また転びましたぁ!」

 広場からティアの悲鳴が聞こえる。 どうやら今度は、村の畑を耕してしまったらしい。 やれやれ。

 俺たちは顔を見合わせ、声を上げて笑った。 この騒がしくも愛おしい日々が、これからも続いていくことを確信しながら。
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