歩く災害と呼ばれた【薄幸の美少女】を救ったら、俺にしか懐かない最強の守護者になった件。~運を下げるスキルで追放されたけど、彼女と一緒なら無敵

ジョウジ

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第135話:残務処理と新しい時代の夜明け

 ミライからの無茶振り相談ラッシュを何とか乗り切った翌日、俺は王都の外壁に立ち、眼下に広がる平原を見下ろしていた。 そこには、草原のあちこちに白銀に輝く彫像のような物体が点在するという奇妙な光景が広がっていた。 天理が消滅したことで機能を停止した天使たちの残骸だが、動かなくなったとはいえ元は神の兵器であり、放置しておけば魔力を垂れ流して環境に悪影響を及ぼす可能性もある。

「……で、あれをどうにかしろって?」

 俺が尋ねると、隣に立つミライが頷いた。

「はい。各国からも『処理に困っている』との苦情が殺到していまして、硬すぎて普通の手段では破壊できず、地中に埋めても魔力が土壌を汚染してしまうそうです」 

「なるほどな。厄介な粗大ゴミだ」

 俺はため息をついた。世界を救った後始末までやらされるとは。

「だが、適任ならいるぞ」

 俺が背後を振り返ると、そこには巨大なトラックのような魔導車(ヴォルグの新作)が待機していた。

「ヒャハハハ! 待ってましたァ!」

 運転席から飛び出してきたヴォルグは、天使の残骸を見るなり涎を垂らさんばかりの勢いで駆け寄った。

「見ろよこの装甲! 純度100%の聖銀(ミスリル)合金だぜ! しかも内部には高密度の魔石が内蔵されてやがる! こんな宝の山をゴミ扱いとは、世の中の連中は目が腐ってやがるな!」

 ヴォルグが工具を取り出し、手際よく天使の解体を始める。ヒヒイロカネの加工技術を持つ彼にかかれば、絶対硬度を誇る天使の装甲もただの素材に過ぎない。

「ヴォルグ。これ、リサイクルできるか?」 

「おうよ! 装甲は溶かして建築資材に混ぜれば強度が跳ね上がるし、魔石は街の動力源になる! これ一体で、王都の街灯を一ヶ月は賄えるぜ!」

 素晴らしい。厄介な廃棄物が、一転して復興のための資源に早変わりだ。

「よし。ヴォルグを筆頭に『天使解体班』を編成しろ。世界中に散らばる残骸を回収し、資源として再利用するんだ。……利益はギルドとヴォルグで折半、俺には助言料として1割よこせ」 

「承知しました。流石はジン様、転んでもただでは起きませんね」

 ミライが苦笑しながらメモを取る。これで一つ、大きな問題が片付いた。 その時、平原の向こうから土煙が上がり、一台の馬車が猛スピードでこちらへ向かってくるのが見えた。

「おーい! 旦那ァー!」

 馬車から身を乗り出して手を振っているのはグレンであり、隣にはカエデも乗っている。

「どうした、グレン。遠征任務は終わったのか?」 

「おう! 西の街道に出てた『はぐれ天使(まだ動いてたやつ)』は、俺とカエデで叩き斬ってきたぜ!」

 グレンが馬車から飛び降り、ドスンと着地する。その背中の大剣はまた刃こぼれしているが、彼の表情は晴れやかだ。

「久々に暴れてスッキリしたぜ。……平和なのもいいが、たまには運動しねえとな」 

「貴殿は加減を知らぬからな。……あやうく地形を変えるところだったぞ」

 カエデが呆れ顔で降りてくる。 二人はこの数週間、各地に残る「まだ動く脅威」を排除するために飛び回っていたのだ。最強の矛と盾のコンビがいれば、大抵のトラブルは筋肉と剣技で解決するだろう。

「お疲れ様です、グレンさん、カエデさん!」

 馬車の荷台からティアが顔を出した。彼女も同行していたらしい。

「怪我はありませんか? 回復魔法かけますか?」 

「い、いい! 間に合ってる!」

 グレンが全力で拒否する。前科(筋肉暴走)があるだけに、ティアの魔法は未だに恐怖の対象らしい。

「むぅ……。最近、制御のコツを掴んできたんですよ? 『失敗しないように』って祈るんじゃなくて、『どうなってもいいや!』って開き直ると、意外とまともに発動するんです」 

「それはそれで怖いな……」

 俺は苦笑した。どうやら、この世界は俺たちが守るまでもなく、逞しく回り始めているようだ。

「ジン様」

 リリがよく冷えたレモン水が入った水筒を差し出してくれる。

「これで、一通りのお仕事は終わりですね」 

「ああ。……長かったな」

 俺は水筒を受け取り、喉を潤した。 天使の残骸は資源となり、脅威は排除され、人々は新しい生活に適応し始めている。俺がやるべき「軍師」としての仕事は、もう残っていない。

「これからは、私たちの時間ですね」

 リリが俺の腕に寄り添う。 その温もりを感じながら、俺は眼下に広がる復興中の王都を眺めた。 槌音が響き、人々の活気ある声が聞こえるその光景は、天理によって定められた予定調和の平和ではない。自分たちの手で選び、作り上げていく、不格好だが愛おしい「人間の営み」だ。

「そうだな。……帰ろうか」

 俺たちは城壁を降り、街へと歩き出した。 ヴォルグが解体ショーで観衆を沸かせ、グレンとカエデが屋台の串焼きを買い食いし、ティアが何もないところで転んで笑いを取る。 ラクが俺の肩で「みゅ~(へいわだ)」とあくびをする。

 戦いは終わった。そして、新しい時代が始まる。 確率の向こう側で俺たちが掴んだのは、こんなにも騒がしく、そして温かい「日常」だった。
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