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21、珍客②
休み時間のチャイムが鳴った途端に椅子から立ち上がり教室の外に飛び出します。
春日井くんがまた傍に来ようとしてましたが、気付かないふりです。
1人になれる場所、1人になれる場所。
最初はトイレに、と考えましたが個室に入っても厳密的には1人にはなれないので却下します。
廊下は走っちゃいけません。早足で廊下を進み、目に入った空き教室へと飛び込みます。
後ろ手に扉を閉めて暫く。
誰も気付いた様子が無いことにホッとして、埃っぽい室内に軽く咳き込み。
窓に近付いて窓を開けて新鮮な空気を肺一杯に取り込んでようやく一心地つきます。
「モブはモブらしく、蚊帳の外でありたい…」
どうやら俺は、あまり目立つのが得意ではないようです。
日々のちょっとした刺激は大切ですが、傍観者でいたい。
人知れず呟いて深い溜息を吐いてしまいます。
「……モブってなんだ?」
そんな呟きに反応する声が1つ。
俺は大袈裟にビク付いて恐る恐る振り返りました。
そこには昨日もお会いした、俺の非常食であるジャムパンを捧げた不良の不破先輩の姿が。
いつの間に入って来たんです?!
てかまた不破先輩?!
パシリはいやぁ!!
今日は貢ぎ物は持ち合わせてないです!!!
なんて軽くプチパニックに陥っていると、何やら不破先輩の様子がおかしいです。
困っているというか、どうしようか迷っているような?
「……んな怯えんな…」
若干優しい声音でそう言われ、俺は困ってしまいます。
確かに、不破先輩に何かされた訳ではありません。昨日は名前を聞かれただけですし、俺が勝手にジャムパンを貢いだだけです。
プチパニックもおさまっていき不思議そうに不破先輩を見つめていると、手に持っていた物を俺に差し出してきます。
「……やる」
差し出された手にはクリームパンが。
え?くれるんですか?
ジャムパンも好きですが、クリームパンも好きなんです。
そっと差し出されたパンを受け取りぺこりと頭を下げます。
「ありがとう、ございます。でも、何故ですか?」
受け取っておいてなんですが、何故クリームパンを差し出されたのかさっぱり分からないです。
「…昨日、もらったから」
え?
もしかして……ジャムパンのお返しですか?!
わざわざお返しの為に追ってきたんですか?!
いい人じゃないですか!!!
我ながら単純ではありますが、お返しをしてくれるような人が悪い人だとは思えません。
俺の好きなクリームパンをチョイスしたのもナイスです。
「わざわざありがとうございます。ジャムパンも好きですが、クリームパンも好きなんです。嬉しいです」
思わず笑みを浮かべて再びお礼を言います。
不破先輩、思ってたよりもいい人です。
「……名前。下の、なんての?」
「…?実です」
「ミノル。今度パンくれる時は甘くねぇのにしろ」
不破先輩は甘いのは好きじゃないんですかね?
お礼のお礼で、今度は惣菜パンをあげるのもいいですね。
「ふふ、分かりました」
冷静に考えればまた寄越せ、と言われているようなものですが、お礼のお礼です。
不破先輩、いい人ですし。
俺が笑ったからか、不破先輩もその鋭い目付きを和らげて笑ってくれました。
イケメンは怖い顔でもイケメンなんですね。
予鈴がなるまで時間も迫っていたので、俺は再度不破先輩にお礼を言って空き教室を後にします。
不破先輩は残ってサボるそうで、俺の去り際に頭をくしゃくしゃと撫でまわされました。
「またな、ミノル」
イケメンスマイルをお土産に、俺は教室へと戻っていきます。
クリームパンももらえましたし、心の安定も多少は得ました。
これで放課後まで持ちますように!!
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