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第一章 初心者の躍動

第二十話 依頼の準備!(中編)

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 そして先に言った焔とナギにドラゴ達が追いついて全員で移動し始めてから数分後、ナギ達はあからさまに武器屋感漂わせる建物の前に来ていた。

 その建物を見ながらナギは少し苦笑いを浮かべ、念のためと言った様子で少し躊躇しながら話しだした。

「あぁ……えっと、一応聞くけど武器屋に来たんだよな?」

「はい!そうですよ?見ればわかるじゃないですか」

 ナギの質問に焔は何故そんな事を聞くのか分からない、と言った様子で少し首を傾げながらそう言った。
 それを聞いたナギは焔からもう一度目の前の建物へと目を向けて話し出した。

「いや、見ればわかるんだけどな?ここまで露骨と言うか、これはもはや兵器倉庫か何かだろ」

 ナギは呆れたように呟くようにしてそう言った。
 しかしそれも無理は無かった。何故ならその建物は、壁全体を鋼鉄で覆い、入り口から見てもわかるほどに大きな煙突が奥の方から生えていて、更に何と言っても所狭しと入り口横に並べられた剣・槍・盾・弓などの武器の数々がここが何屋なのかを物語っていた。

 だが、そうは分かっていてもナギ達はもの凄く入りたくなさそうに体を引いていた。

「なぁ?本当にここに入るのか?」

「?えぇ、何か問題でもありますか?」

 不安そうに確認してくるナギに焔は不思議そうに首を傾げてそう言った。
 それを聞いたナギは疲れたように息を吐き出した。

「はぁ…いや、別に問題は無いんだけどな?ここ確かに武器屋に見えるけど、それ以上に砲台とかついていて要塞にしか見えないんだよ!」

 そう叫びながらナギが武器屋の方へと指さすと、何故かそこには人の頭がすっぽり入りそうなほど巨大な大砲が、武器屋の窓から出ていた。

 後ろで話を聞いていたナギと焔の話を聞いていたドラゴ達は、ナギが指さした方へと向いて初めてその砲台に気が付いたようで、ものすごく驚いた様子で目を見開いて固まっていた。
 そして焔はその事に最初から気が付いていたようで、特に気にした様子も無く普通に話し出した。

「まぁ、確かに少し装備過多な店だと思いますけど、別にいいんじゃないですか?」

「別にいい?」

「えぇ、別にここは現実って言う訳では無いんですし、ゲームの世界だったらこのくらい普通ですよ!この砲台についても、ここの世界観とこの店のある位置を考えてみれば見れば不思議でもありませんし…」

「この店のある場所…?」

 焔が何か考えるようにしながら視線を外しながら話すと、ナギは少し不思議そうにしながらその視線の先へと目を向けた。
 するとその方向には少し進んだ先に巨大な城壁がまるで周りを威圧するように建っていた。
 それを見たナギは一瞬で焔の言っていた事が理解できたようだった。

 その理由とは、この世界には現実とは違い色々と危険がある。その中でもプレイヤーたちとは違い復活出来な住人たちにとっての脅威として、魔物が町の外では大量にウヨウヨと生息しているのだ。
 そのためこの世界では町などの人間が生活している所では、魔物に対しての対策として丈夫な城壁が築かれていたのだった。

 そしてその事を理解できたと同時にナギは、この場所で商売をしている武器屋の厳戒態勢ぶりにも納得できたようだった。

「なるほどな、そう言う事だったらこの厳重な装備も納得できるか…。まぁ、そう言う事だったら納得はできた、これ以上ここで話す事もないか…」

「そうですね…。はい!僕からは特にもうないですよ?ドラゴ先輩とヒカリやホホはどうですか?」

 ナギと焔の二人は話がある程度纏まると、確認するようにドラゴ達へと振り向いて聞いた。
 そのドラゴ達三人はいきなり自分達に話が振られたことに驚いた様子だったが、すぐに正気に戻ると少し考えながら話し出した。

「えっと…、特には無いよな?」

「え、あ…はい!もう気になる事とかは無いです」

「そうですね!私も特にはもうありませんので大丈夫です!」

 ドラゴ達は元気よくそう答えた。
 それを聞いたナギと焔は満足そうに頷くと、お互いにいい笑顔を浮かべて向かい合った。

「それじゃ、さっさと入って装備を揃えますか!」

「そうですね!僕も早く外に冒険に行きたいですし、早く準備しちゃいましょう!」

 焔は楽しそうにそう言うと武器屋の入口へと向かって行った。その焔の後にナギ達が続こうとした時、武器屋のドアがバンッ‼と大きな音を立てて開いた。

「お前ら、さっきから人の家の前でギャー!ギャー!っと、騒いでんじゃねぇー!うるさく作業に手中出来ないだろうがッ‼」

 そう叫びながらずんぐりむっくりした小柄で立派な髭を生やした、作業着姿のおじさんが出て来た。

「「「「「ッ⁉」」」」」

 いきなり怒鳴りながら飛び出してきたにおじさんにナギ達はパニックになっていた。
 しかしその作業着のおじさんは、ナギ達が何も話す様子が無いのを見て更にイラついた様子で話し出した。

「おい!人が怒っているんだから何か言う事は無いのか?」

 おじさんが怒りを込めた低い声でそう言うと、それを聞いたナギ達はバッ!と一瞬で姿勢を正し、一斉に謝った。

「「「「「すみませんでした!」」」」」

「フンッ…まぁいい、一応謝ったからな。それで?ここで何をしていたんだ?」

 ナギ達が謝ったのを見たおじさんは、息を吐き出して一旦落ち着くとナギ達に騒いでいた理由を質問した。
 その質問にナギ達は下げていた頭をゆっくりと上げて、少し話し難そうな表情でゆっくりと話し出した。

「いや、別に騒いでいたとつもりは無かったと言うか…」

「しっ!お前は黙ってろな?話がややこしくなるから」

 最初に話し出そうとしたドラゴだったが、内容があからさまに言い訳のようだったため、すぐにナギや他の3人からも口を塞がれ黙らされた。
 そしてドラゴの口がちゃんと塞がれたのを確認したナギは、小さく息を吐き出して真剣な様子で話し出した。

「待たせてしまってすみません。それに店の前で騒いでしまい申し訳ない。本当にここが武器屋でいいのか確認するために話し合っていたら話が盛り上がってしまいまして…」

 ナギが少し気まずそうに顔を逸らしながら答えると、その話の内容と様子におじさんは小さく溜息をもらすと納得した様子で話し出した。

「はぁ…なるほど、そう言う事だったのか。そう言う事だったらあまり怒れんな…」

 少し恥ずかしそうに頭を掻きながらおじさんは呟くようにそう言った。
 そのおじさんの様子にナギやドラゴ達は不思議そうに首を傾げて、何か話しだそうとした。

 しかしそれよりも早くおじさんは、話をすり替えるように勢いよく話出した。

「まぁ、理由はよく分かった。その話の内容的に店に何か用があったんだろ?」

 おじさんがそう言うとナギ達はあっ!と、今思い出したと言った様子で目を見開いて少し戸惑ったように話し出した。

「そうでした、最初の目的を忘れるところでした…」

「あぁ、と言うか普通に俺は謝罪に集中しすぎてすっかり忘れていたわ。ま、まぁ、とりあえず本題は、これから冒険に行く予定なので、手ごろな装備がないかと思いここに来ました」

 ナギが来た目的を簡単に説明するとおじさんは、納得したように数度頷いていた。
 しかし何故かすぐに不思議そうにして話し出した。

「なるほど、そう言う事だったら納得だが…。自分で言うのもなんだが、何でこの店に来た?普通の見た目じゃ無いだろ?」

「え、それはここがこの町の武器屋だと案内されたからですけど…」

「まぁ…確かに、ここは武器屋けどな?この町にはもっと普通の武器屋もあるぞ?」

「えっ?」

 おじさんの話にナギは驚いた表情で固まってしまった。しかしすぐに正気に戻ったナギは落ち着くために小さく息を吐き出し、ゆっくりと話し出した。

「すみません、少し待ってもらっていいですか?」

「お、おう、どうぞごゆっくり…」

 ナギの笑顔だがよく分からい威圧感におじさんは怯えたように顔を引きつらせて何とか答えた。
 そのおじさんの答えに、今度は満足そうな本当の笑みを浮かべてナギはお礼を口にした。

「ありがとうございます」

 そしてナギは笑顔でそう言うと勢いよく振り返り、後ろにいた焔の肩を掴んだ。

「さて、どう言う事か説明してもらおうか?」

「え、いやぁ~どう言う事と言われても、僕もここが武器屋だって調べて知っただけなので…他にもあったなんて知らなかったんですよ。そ、それに!ここも間違いなく武器屋なんですから良いじゃないですか~!」

 ナギに質問と言う名の尋問をされた焔は、少しふざけたように笑顔を浮かべてそう言った。
 それを聞いたナギはふ~ん…と、詰まらなそうに少し見下ろすようにしながら小さく笑みを浮かべて話し出した。

「ふ~ん…そうなんだ、で?だからちゃんと他にもないか調べなかった自分は悪くないとでも?」

「そ、それはそうかもしれないですけど…、でも!ここも武器屋なんですから装備的には問題ないじゃないですか!」

 ナギの言う事に納得できたのか焔は少し反しにくそうにしていたが、何とか力を振り絞って力強くそう言った。
 その焔の返答に対してもナギは特に興味ないのか、特に表情が変わる事無く話し出した。

「そうだな、確かに装備をそろえるだけだったらここで良い。でもな?それとろくに調べていなかった事はまた別問題だよな?」

「いや、まぁそれは…」

 ナギの話に焔は図星だったのか、結局最後まで話す事も出来ず言い淀んでしまった。
 そんな焔の様子にナギは、少しやりすぎたと思ったの疲れたように息を吐き出してゆっくりと話し出した。

「はぁ…まぁいいけど、今度から人を誘う時はある程度は調べてからにしろよ?一緒にやる奴の迷惑になりかねないから…」

「はい…今度からは気を付けます…」

「うん!反省すればよろしい。おい!お前達もだからな、ドラゴ!ヒカリ!ホホ!お前達は焔にだけ調べるのを任せてないで、たまには自分達で調べて教えるくらいできるようになれよ」

「「「はい!今後は気を付けます」」」

 ナギが焔のついでと言った様子でドラゴ達へと怒鳴るように説教をすると、ドラゴ達は一瞬で姿勢を正して元気よく答えた。
 それを聞いたナギは満足そうに腕を組んで頷いていた。

 そしてそのナギ達の様子を見ていたおじさんは、すぐにこのパーティーのリーダーが誰か理解したようで顎髭を撫でながらゆっくりと話し出した。

「あぁ…それで、話がまとまったようだが、何か顔ものをしていくのか?」

 おじさんが少し遠慮気味にそう言うとナギは、少し申し訳なさそうにしながら話し出した。

「いやぁ…待たせてしまってすみません。それで買い物ですが、ぜひここで装備をそろえさせてもらいます」

「お!そうか!そうか‼そう言う事だったらぜひ見て行ってくれ‼自信作がいっぱいあるからな‼」

 おじさんはそう言うとドアを開けて自信満々に胸を張りながら中へと案内した。

「さぁ!ようこそ『要塞武器庫へ‼』」

 おじさんが自信満々に言った外見そのままの店の名前にナギ達は、思わずと言った様子で笑いそうになったのを必死にこらえていたため店に入るのが少し遅れたのだった。
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