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第一章 初心者の躍動

第二十三話 初依頼スタート! (1)

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 そしてゴド爺さんの武器屋を後にしたナギ達は、一直線に町の外へと向かった。
 
 それからすぐにナギ達は町の外への門へと着く事が出来た。何故ならナギ達の居たゴド爺さんの店は、外壁から比較的近くにあったためすぐにつく事が出来たのだ。
 門に着いたナギ達はそのまま門を通って外に出ようとしたが、その途中で門を警備していた衛兵に止められた。

「申し訳ないが、町の外に出る目的と身分証明になる物の提示してくれ、そうでなければ通すことはできない」

 衛兵の二人が道を塞ぐように槍を出して片方の衛兵がそう言うと、それにドラゴがイラついた様子で一歩前に出ようとした。
 それに気が付いたナギ達は慌ててドラゴを後ろに引きずり戻し、落ち着いて話しの出来そうなナギと焔が前に出て話をすることにした。

「えっと、少し聞きたいんだが何故出る目的の説明が必要なのかと、身分証の提示が必要なのかを先に教えてもらってもいいですかね?こう言う事初めてな門でよく分からないので…」

 ナギが少し遠慮気味にそう聞くと、衛兵の男は警戒した様子から少し驚いたよう様子で目を見開いていた。
 それからすぐに衛兵の男は楽しそうに笑顔を浮かべて笑いながら話し出した。

「アハハハ‼いやぁわるかったな!脅かすような真似をして、今までここに来た異邦人の連中がちょっとあれだったんでな。こっちも警戒して脅すような真似しちまったんだ、本当に悪かったな!」

 警戒した厳しい表情から一転、楽しそうな笑顔になった衛兵の男にナギ達は少し驚いた様子だったが、すぐに正気に戻ると安心したように小さく息を吐き出して体の力を抜いて話し出した。

「ふぅ…そう言う事だったんですね。何があったのかは知りませんけど、同郷の者が申し訳ない」

「いやいや、あんた等は何も悪くないんだから気にする必要はないぞ。それよりも、さっきの質問の答えを説明したいんだがいいかな?」

「あぁ、こっちは問題ない。むしろありがたい」

 最初はお互いに遠慮した様子だった衛兵とナギはお互いに謝った事で少し困ったように苦笑いを浮かべていたが、すぐに真剣な表情に切り替えると話を本題に戻した。

「それじゃぁ説明させてもらうが、まずは外に出る理由の説明が必要な理由は、単純に帰って来たのかの確認や商人だった場合は荷物に対しての関税のための確認だ。もう一つの身分証についても似たようなもので、提示された身分証がどこかのギルドの物だった場合、帰ってくるのが遅いなどした時にそのギルドに報告する事や犯罪歴が無いかの確認のために行っている」

 衛兵がそう言って説明を区切ると、それを聞いていたナギは何か気になる所があったのか考えるように小さく唸りながら質問した。

「う~ん、説明は分かった。ただ少し気になったんだが、身分証明の出来る物で犯罪歴の有無も分かるのか?」

 その質問に衛兵の男は何処か納得した様子で大きく頷いて答えた。

「あぁ!その説明が必要だったか、他の奴等はろくに聞かずに行くから説明するのを忘れていた…」

「…」

 疲れた表情で話す衛兵の姿にナギは何とも言えない微妙な様子で顔をうつむかせた。
 そのナギの様子に気が付いた衛兵は、慌てた様子で少しアタフタしながら話し出した。

「あ、あぁ…えっと、それでな?身分証として発行されている物の後ろには依頼などの成果を記録できるようになっているんだが、それの隠し機能と言った感じに実は犯罪歴も記録されるんだ。しかも、その犯罪歴は登録を解消して再登録したとしても無くならないから隠蔽不可能。もし失くしたことにして逃れようとしても、その犯罪歴だけを表示する石板が町の入り口には絶対に設置されているからそれで調べられて終わりだしな‼」

 衛兵は特にかける言葉が思い浮かばなかったようで、そのまま何事も無かったように説明した。
 そしてその説明を聞いたナギは、ゆっくりと顔を上げて納得した様子で頷いて話し出した。

「なるほど……あの、すっごく今更なんですけど、それって説明しちゃっていい事なんですか?」

「あぁー…その事だったら大丈夫だ。この世界の人間はある年齢を超えていれば皆知っている事だし、知らないのはあんた等異邦人くらいだから特に問題は無い」

 少し心配そうに聞いて来たナギに衛兵の男は、何処か納得したように頷いて答えた。
 その答えを聞いたナギはあぁ…と、何処か疲れたように目を逸らして納得したように頷いた。

「なるほど…、そしてその説明を他の奴等はろくに聞かずに行ってしまったと…」

「あぁ…まぁ、そう言う事だな…」

「なんかほんと、すみません…」

「アハハハ…別にお前らの事じゃないんだから気にする必要は無いんだって」

 自分の事でもないのに心底申し訳なさそうに謝るナギに、衛兵の男は少し苦笑いを浮かべながら気にしなくていいと慰めた。
 その先ほども見た光景に、後ろで見ていたドラゴ達ともう一人の衛兵は小さくクスクス!と楽しそうに笑い合っていた。

 そして後ろの様子に気が付いたナギと衛兵の男は、一度何かアイコンタクトし合うと笑顔で頷き合いお互いに自分の後ろにいた笑っている奴らの方へと向かった。
 その事に気が付いたドラゴ達とえもう一人の衛兵はヤバッ⁉と言った様子で振り返って逃げ出そうとしたが、それよりも早くナギと衛兵の男が付いて捕まえた。

「なぁ?人が真剣に説明を受けている時にお前らは何笑ってるんだ?」

「そうだな、こっちが説明している時に何をお前は、のんびりと笑っているんだ?」

 ナギと衛兵の男が怒った様子で低い声でそう言うと、ドラゴ達ともう一人の衛兵は諦めたようにうなだれて振り返った。
 それを確認したナギと衛兵の男は、大きく溜息を吐き出して疲れたようにゆっくりと話し出した。

「はぁ…まったく、話を人に任せたんだったら、少しは真剣に話を聞くとか色々あるだろうが…」

「お前もだぞ?こっちが説明している間、門を守るのがお前の仕事だろうが!何を仲良く笑っているんだ?」

 ドラゴ達は呆れたように話すナギに何か言いたそうにしていたが、ナギの言っていることが正論だと言う事も理解はできているようで大人しく怒られていた。
 その少し後ろでは、ナギと話していた衛兵が残ったもう一人に普通に説教をしていた。

 そんなナギ達と衛兵の状況に住人達は楽しそうにクスクス!と笑いながら何かを話し、たまたま近くを通っただけのプレーヤーたちは表情を豊かな住人に驚く者や、住人と親し気に話すナギ達を興味深そうに眺めるものなど様々だった。

 そしてそんな周りからの視線に気が付いたのかナギと衛兵の男は少し恥ずかしそうに顔を逸らして頬を掻きながらゆっくりと話しだした。

「あぁ…とりあえず、次からは気を付けるようにな?」

「お、おう!出来るだけ気を付けるようにするよ」

「はい、次からは気を付けます」

「「うんうん!次からは気を付ける」」

 ナギが気まずそうにしながら最後に注意すると、ドラゴ達はすぐにスッキリした表情で答えた。
 その横では衛兵の二人も説教を終わらせて少し疲れた様子で苦笑いを浮かべていた。

 そしてお互いに話を終えたナギと衛兵の男は改めて向かい合うと、どちらともに何とも言えない微妙な表情で話しだし難そうにしていた。
 しかし何時までもそうしている訳にも行かず、何とか頭を切り替えるとゆっくりと話し出した。

「えっとそれで…、何の話だったか?」

「あっ、そうだった!そうだった!元々の目的を忘れるところだった。えっと…何で町の外に出るのかと、身分証明の出来る物でしたよね?」

 衛兵の男が話を戻すために質問するとそれを聞いたナギも、元々ここに止まっていた理由を思い出したようで少し慌てた様子で確認した。
 そのナギの反応に少し安心したように息を吐き出した衛兵の男はゆっくりと頷いた。

「あぁ…、その二つを説明してもらえればここを通ってもらって問題ない。それに一度身分証を提示してもらえれば次からはあっちのゲートからそのまま通ってもらって大丈夫だ」

「あっち?」

 ナギはそう言うと衛兵の説明に従って視線を少し横へずらすと門の横に小さい門が用意されていて、そこから住人と思われる冒険者風の者や商人のような恰好の馬車に乗った者などが身分証をかざして素通りして行っていた。
 それを見たナギは不思議そうに首を傾げてゆっくりと話しだした。

「あの小さくした門は何ですか?」

「あれはな?一度でもこの門で検査を受けた者だけが通れるもんだ。あそこで身分証をかざしている場所があるだろ?一度でもここを通っていると登録されて、新しく犯罪歴が付いていなければああやって身分証をかざすだけで素通り出来るようになるんだ。ちなみに、新しく犯罪歴があるとサイレンが鳴って付近にいる衛兵や警備兵全員が駆けつけて拘束されることになるんだぞ!」

 衛兵の男はその時の事を思い出しているのか楽しそうに笑いながらそう説明すると、その衛兵の様子にナギは少し引いたように少し下がりながらゆっくりと話し出した。

「なるほど…、あそこのある意味はよく分かりました。そう言う事だったらとりあえず外に出る目的から説明させてもらってもいいですかね?」

 ナギは引いていたのが嘘のように真剣な表情でそう話した。そのナギの様子を横で見ていたドラゴ達ともう一人の衛兵は、そのあまりの変わり身の早さに驚きを通り越し、少し引いた様子で顔を盛大に引きつらせていた。
 しかしそのナギを真正面から見ていた衛兵の男はその変化に気が付けず、同じく真剣な表情で答えた。

「あぁ、特にもう説明する事もないからな。大丈夫だ」

「それでは早速、まず今回俺達が外に出る理由は依頼を受けたのでそのために外に出る必要があるからですね。依頼の内容についてはギルドカードに書いてあるので、身分証の提示と一緒に確認してください」

 ナギは端的に用事を伝えると自分の分のギルドカード渡しながらそう言った。
 衛兵の男は説明が終わったと同時にいきなりギルドカードを渡してきたナギに驚いた様子だったが、すぐに元に戻ると冷静にナギからギルドカードを受け取って真剣な表情で確認し始めた。

 そしてナギがギルドカードを渡したのを見たドラゴ達は慌てて自分達の分を取り出し、もう一人の特に仕事をしている様子の無い衛兵に渡して確認してもらっていたのだった。
 
 その間に確認し終わったナギと話している衛兵は、ギルドカードをナギに返すとゆっくりと話し出した。

「よし!特に問題なしだ。もう通って良いぞ!気を付けて行って来いよ!」

「はい、丁寧な説明ありがとうございました。また縁があったらよろしくお願いします。それでは」

 ナギはそう丁寧に頭を下げるとドラゴ達を完全に忘れて一人で門をくぐって行った。
 それを見たドラゴ達はギルドカードを返してもらうと、慌てて走って追いかけて行ったのだった。
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