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第一章 初心者の躍動

第三十四話 朝の会話

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 翌日の朝6時半、渚の部屋でピピピピピッ!と喧しく目覚まし時計が鳴っていた。
 
 渚はベットの上を這いずるように動いて目覚ましの所に行くと、ガンッ!と全力で叩いて目覚まし時計を止めた。
 そして音が完全に止まるとのんびりとした動きで起き上がった。

「あぁぁぁぁ………クソ眠い」

 ゾンビのように唸り声を上げながら渚はそう言って起き上がった。
 起き上がった渚はまだ少し寝ぼけているようでフラフラと立ち上がると、ゆっくりとした動きで外へと出た。

 それから渚は洗面所で顔を洗い目を完全に覚まして髪を整えた。

「ふぅ…よし!ふぁ~~…まだ少し眠いけど、これ以上寝るのはさすがにやばいしな」

 渚は諦めたよう少しうなだれながらそう言うと、少し嫌そうにしながらも仕方ない!と言った様子で顔を叩いた。

 パンッ‼

「よし‼とりあえず着替えよう」

 気合を入れた渚はシャキッ!とした表情でテキパキと動き出した。
 すると鏡を見た渚は自分がまだ寝間着だった事に気が付いたようで、少し急ぎ足で自分の部屋へと戻った。
 そして部屋に戻った渚はすぐに制服に着替えると、また急ぎ足で部屋から出ると手早く朝食の支度を始めた。

 それから数分後、渚が朝食を完成させて配膳していると夏帆と夏輝の二人がまだ眠そうな様子でゆっくりとリビングに入って来た。

「おはよう。お前達も起きたみたいだな」

 渚も二人が来たことに気が付いたようで小さく笑みを浮かべてそう言った。
 夏帆と夏輝はその渚の声を聞いてまだ少し寝ぼけた様子で小さく手を挙げて返事をした。

 そんな二人の様子に渚は苦笑いを浮かべた。

「ははは…とりあえず顔洗って、着替えてこい。今日はまだ学校あるからな」

 渚がそう促すと夏帆と夏輝の二人はゆっくりと頷いてリビングを出て行った。
 そんな二人を見送った渚は優し気な笑みを浮かべて改めて朝食を食卓へと並べて行った。

 そして出て行った夏帆と夏輝が戻って来たのは渚が支度を全て終えたのと同時だった。

「おはよう兄さん‼」

「おはよ~!兄さん‼」

 リビングに入ってきた二人は先ほどまでとは違い元気よく挨拶しながら飛び込んできた。
 そんな二人の様子に渚は少し疲れたような笑みを浮かべていた。

「あぁおはよう。目が覚めるとすごく元気だなお前達は、まぁそれよりもさっさと座れ朝食が冷める」

「「は~い」」

 渚の言葉に元気よく返事をした二人はすぐに自分達の席へと座った。
 それに続いて渚も自分の所に座りゆっくりと話し出した。

「さて、それではいただきます」

「いただきます!」

「いっただきます‼」

 渚に続いて夏帆や夏輝も食事の挨拶を済ませると一斉に食事を始めた。
 朝食は一般的な日本の朝食と言った感じで白米・焼き魚・味噌汁だった。

 そして一番早く食事を食べ終えた夏輝はすぐに立ち上がると部屋の時計を確認した。するとそこには7時29分となっていた。
 それを確認した夏帆はもの凄く慌てた様子で顔を青ざめさせて急ぎ出した。

「やっばい‼朝練の事、完全に忘れてた‼」

「あぁ…そう言えばお前朝練があるんだったな」

「確かにそうだった!私も忘れてたよ~」

 夏輝の慌てようとは反対に渚と夏帆は他人事のためのんきに食後のお茶を楽しみながら話していた。
 しかし夏輝はそんな二人にかまっていられない程に切迫しているようで、急いで荷物を取りに行き玄関へと向かった。

「それじゃ~!俺先に行くから、行ってきます‼」

「行ってら!気を付けて行けよ」

「行ってらっしゃ~い!」

 渚と夏帆は笑顔で夏輝を見送った。
 そして二人に見送られた夏輝は自転車に乗って全力でこぎ出した。
 ここから渚達の通う学校までは徒歩で10分程の距離なので普段は徒歩で行くのだが、今日は遅刻しそうなため自転車で行くことにしたのだった。


 そして夏輝が出て行った家で渚と夏帆は荷物を持ってきてリビングでのんびりとしていた。

「ふぅ…こういう時、部活に所属していないって言うのは得だよなぁ…」

「確かにそうだよね~!こうしてのんびりしていても、学校にさえ遅刻しなければ誰にも怒られないしね‼」

「そうそう!」

 渚と夏帆は楽しそうにそう話していた。
 その途中で渚は何かを思い出したのかあっ!と言った様子で話し出した。

「そう言えばお前達に話そうと思ってたこと忘れてた」

「うん?何かゲームで気になる事でもあった?」

「いや、そうじゃなくて昨日な。白崎さんから電話?で話したんだけど」

「?しらさき…しらさき…誰だっけ?」

 夏帆は白崎の事を覚えていなかったようで、渚の話を聞いてもピンと来ていないようだった。
 そんな夏帆の様子を見て渚は少し呆れたように溜息を漏らした。

「はぁ…最低限関わりのある人の名前は憶えろって。ほら、竜悟の家でいつも出迎えてくれる執事服の女の人」

「え~っと…あぁ~!あの人か‼あれ?でもあの人って女の人だったの?」

 渚の話を聞いてようやく思い出したようだった夏帆だったが、白崎が女性と言う事に意外そうに話した。
 その夏帆の発言に渚はまたしても呆れたようにうつむいてしまった。

「まったくお前は…どう見たって女性だろ。まぁもういいや、それよりも話の続きだけどな?竜悟のお爺さん達に呼ばれたから、明日顔出しに行くけどお前らどうする?」

「あぁ!そう言う事か、だったらせっかくだし行こうかな~私も最近会ってないしね!」

「了解、じゃぁ向こうにはそう連絡して迎えに来てもらうか。夏輝と桜花についてはお前から話しておいて、後で教えてくれ纏めて話して措くから」

「わかった‼ちゃんと確認してくるよ!」

「うん、任せた。さて、話している間にダイブ時間が経ったな…」

 渚がそう言って時計を確認すると7時48分となっていた。
 それを見た渚はゆっくりとに持ちを持って立ち上がって体を解した。

「んぅぅ~!はぁ…よし、そろそろ行くか」

「うん?もう行くの?」

 急に立ち上がった渚に夏帆はくつろいだ様子でそう聞いた。
 その夏帆を見て渚は何言ってるのコイツ?と言った様子で呆れた様子で話し出した。

「いや、もうって言う程余裕は無いからな?8時20分までに行かないと怒られるんだから」

「えっ?」

 そして夏帆は時計をろくに確認していなかったようで、渚の話を聞いて慌てて時計を確認すると慌てたように荷物を持って立ち上がった。

「本当にやばいよ‼のんびりしていられないじゃん‼」

「だからさっきからそう言ってるだろ…と言う事でお先ッ‼」

 渚は呆れたようにそう言うと逃げるように夏帆を措いて走り出した。
 そのいきなりの渚の行動に夏帆は少しの間呆然としていたが、すぐにはっ!とした様子で動き出した。

「ちょっと兄さん⁉おいてかないでよ~!」

 そう叫びながら急いで渚の後を追いかけて走って出て行ったのだった。


 そして家から渚達が全員いなくなって数分後、二階の奥の部屋から誰かが出て来た。

「ふぁ~~!うぅ…あの子達行ったのね。結局私が帰ってきているのに気が付かずに行っちゃうなんて、まったく!」

 その人物は少し子供の用に膨れた様子でそう言ったが、すぐに何事も無かったように楽しそうに笑い出した。

「ふふふ!まぁ私が帰って来た痕跡を残さなかったのが悪いわね。ふぁ…それよりももう少し寝ないと……」

 寝不足なのかその人物は盛大に欠伸をしてそう言うと少しふらつきながら部屋の中へと戻って行き、また眠りについたのだった。

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