VRMMO～鍛治師で最強になってみた！？

第一章 初心者の躍動

第四十九話 園崎家での朝

　そして翌日の７時ちょうど、起き出した竜悟達は四人は支度を整えると昨日食事をしたのと同じ部屋へと集合していた。

「おはよう！昨日はよく眠れたか？」

「はい、普段は布団ですが、ベットもやっぱりいいですね」

「俺は普通に快眠だったよ！」

「私も！ベットがフッワ！フッワ！だった‼」

　竜悟が挨拶して念のために問題なかったか確認すると、桜花や夏輝に夏帆はスッキリした様子で満面の笑顔で答えた。
　その桜花達の答えに竜悟は満足そうに笑みを浮かべて小さく頷く。
　しかしすぐに部屋を見回して渚が居ない事に気が付くと、少し話し難そうに頬を掻きながら話し出す。

「あぁ～それで、誰か渚がどうしているか知ってる？」

　竜悟が渚の座る席を見ながらそう聞くと、それに桜花も答え難そうに視線を逸らしながら答える。

「さ、さぁ？きっと修行で疲れているんですよ」

「たぶん俺もそうだと思う。前に泊まった時も、修行に連れ出されて行ったけど、その時も朝は来なかったからな」

「うんうん‼その後に絶対『もう二度と泊まらない…』って、疲れ切った状態でよく言ってるっ‼」

　竜悟と桜花とは違い夏輝と夏帆の二人は昔の事を思い出して楽しそうに話す。
　そんな二人の話を聞いた竜悟と桜花も、その時の事を思い出したのかどこか楽しそうに笑みを浮かべていた。

　そして竜悟達の気まずい空気が晴れた、ちょうどそのタイミングで大我と時雨が部屋へと入って来た。
　入って来た大我は既に渚を除いてそろっている竜悟達を見ると感心したように大きく頷く。

「おはよう！もうみんな起きていたのか、偉いな‼」

「ふふふ！本当ですね。ちゃんと朝起きれるのは偉いです。誰かとは大違いですね？」

「ははは…本当にそうだな～」

　感心した様子だった大我だったが、時雨が少しからかうように話すと苦笑いを浮かべていた。
　そんな二人に気が付いた竜悟達は面白そうにニヤニヤと笑っていた。
　その竜悟達の様子に大我は気が付いたようで、少し気まずそうにわざとらしく咳ばらいをする。

「ゴホッゴホッ！それで、渚君と親父は……まだみたいだな」

　大我は話を逸らすように部屋を見回しながらそう言った。
　それを聞いた時雨も少し驚いた様子だったが、すぐに立ち直ると部屋を見回す。

「あら、本当にいないですね。もしかして、まだ修行しているのでしょうか？」

「あぁ…その可能性は十分にあるな。親父は武術だけは決めたら徹底的にやるからな。それこそ倒れるまで…」

　大我はなにか思い出したようで、疲れ切ったように力なく話す。
　そんな大我の様子を見た竜悟達や時雨は何かに気が付いたようで、もの凄く同情的な視線を向けた。

　その周りからの視線に気が付いた大我は少し気まずそうに顔を上げた。

「あっと、まぁ…あの二人はそのうち来るだろ‼それよりも俺達は先に朝食にしよう。でもその前に、白崎」

「はい、何でございますか？」

　大我が小さく呼ぶと先ほどまで部屋には居なかった白崎が急に現れた。
　突然現れた白崎に竜悟を除いて桜花達は驚いたように目を見開いて固まっていた。
　しかし桜花達の反応は特に気にした様子も無く大我は、白崎へと淡々と話す。

「あぁ、渚君と親父が今どこに居るのかの確認をして来てくれ。もし無事だったらここに呼んで、動けそうになければおにぎりか何か、簡単な朝食を用意してその事を伝えに来て欲しい」

「かしこまりました。すぐに確認してきます」

　大我の指示を聞くと白崎は短く答えると小さくお辞儀をして、すぐに部屋から出て行った。
　そして白崎が出て行ったのを見届けてから大我はゆっくりと話し出す。

「さて、これで渚君達の方は問題ないだろう。私達は時間もあれだし、先に朝食をにしよう」

「そうですね。あまり待っていると、竜悟達の方が遅刻してしまいますしね」

　大我の提案に時雨もすぐに納得したように小さく頷いた。
　そんな二人の話を聞いた竜悟達は少し驚いた様子で、部屋に着いている時計へと目を向ける。すると現在の時刻は７時25分になっていた。
　すでに竜悟達が起きてから25分もの時間が過ぎていたのだ。
　その事を改めて確認した竜悟達は少し慌てた様子だった。

「マジで時間やばいじゃん⁉父さん達の言う通り、渚は措いて先に食べて学校に行こう！」

「そ、そうですね。このまま先輩をまって僕たちまで遅刻したらさすがに拙いですし…」

「「うんうんっ‼」」

　竜悟達が早口に急かすようにそう言うと大我と時雨は、その用水少し可笑しそうに笑みを浮かべていた。
　だが時間がない事もちゃんと理解している二人は、すぐに近くのメイドに指示を出す。

「それじゃ朝食をすぐに持ってきてくれ」

「かしこまりました」

　指示を受けたメイドは数人のメイド達を連れて部屋から出て行く。
　それを確認した大我と時雨は昨日座っていた場所へと座った。竜悟達も同じように改めて姿勢を正して座り直した。

　それからすぐに出て行ったメイド達が戻って来て、座っている大我達へと料理を配膳して行く。
　朝食はスクランブルエッグ・ベーコン・パンと言ったように洋風な朝食だった。

　普段の竜悟達だったならそのメニューに何かしらの反応を示しただろうが、今はそれ以上に急がないとまずいために急いで目の前の料理を食べて行った。
　その必死になって食べる竜悟達の姿に大我と時雨は少し困ったように苦笑いを浮かべていた。


　そしてもの凄い勢いで竜悟達が食事を終わらせると同時に白崎が戻って来た。

「失礼します。渚様と武虎様の様子を確認してまいりました」

「そうか、それで二人はどんな様子だった？」

　白崎が報告すると大我はすぐに二人の様子について聞いた。
　その質問に白崎は一瞬言い難そうに顔を引きつらせたが、すぐに元に戻るとゆっくりと答える。

「はい、お二人は以前もお使いになられていた修行場におられました。それと、少し言い難いのですが…お二人はまだ修行中でした…」

「そうか、二人とも無事ならよか………は？まだ続けているって…」

　白崎の説明を聞いた大我は最初は安心したように話し出したが、途中で内容のおかしさに気が付いたようで少し呆けたようになってしまっていた。
　そしてそれは一緒に説明を聞いていた時雨や竜悟達も同じような状態だった。
　その部屋にいる人間全員が固まっていしまったのを確認して白崎は、やっぱりこうなったか…と言った様子で小さく溜息を漏らす。

　それから程なくして何とか立直った大我はまだ少し動揺しながらも何とか話し出す。

「あ、あぁ…とりあえずもう一度確認させてくれ。本当に二人は、修行を続けていたんだな？」

　大我は少し嘘であって欲しいと言うように聞いた。
　しかし白崎はその思いに気が付いていても、少し躊躇しながらも淡々と見た事を説明する。

「…はい、確かに続けておりました。なにせ私に気が付かず、お二人で激しく打ち合いをしていましたので、まず間違いなく…」

「そ、そうか、さすがにこんなケースは想定していなかったぞ…」

　白崎の説明を聞いた大我は完全に想定外の出来事に、どうすればいいのかと必死に考えを巡らせていた。
　その白崎と大我が話している間に何とか正気に戻った竜悟達は、本気で疲れたように盛大に息を吐き出す。

「はぁ……何やってるのあいつ」

「ははは…まぁ先輩らしいと言えば、らしいですけどね？」

「それは言えてる！兄さんは色々とずれてるからな‼」

「うんうんっ！兄さんって変に丈夫だしね‼」

　疲れたように話す竜悟や桜花とは反対に、夏輝と夏帆の二人は何故か少し誇らしげに胸を張って話すのだった。
　そんな竜悟達の声を聞いて大我は一旦渚と大我の事は頭の隅へと追いやった。

「まぁあの二人の事は今は措いといて、まずは今のままだと竜悟達の方が遅刻してしまうだろ。うちに泊まらせて全員遅刻は、さすがにまずいからな。竜悟達は先に学校に行きなさい、渚君は後で間に合うようなら送って行く」

　大我が冷静にそう話すと竜悟達は少し驚いたようにしていたが、すぐに時計を見て冷静になると諦めたように小さく頷いた。

「確かにそうだよな。何時までも待っていられないし、先に行こう」

「そうですね！僕もさすがに遅刻はしたくないです」

「相変わらず桜花は真面目だな～！まぁ俺も遅刻はさすがに拙い‼新旧的な意味で！」

「私も同じく‼と言う事で兄さんの事よろしくお願いします‼」

　夏輝と夏帆の二人は成績が悪いため、遅刻は本気でまずいと自覚しているようで本気で慌てて立ち上がった。
　その二人に続くように竜悟と桜花も椅子から立ち上がる。

「と言う事で先に行かせてもらう！ごちそうさま‼」

「「「ごちそうさまでしたっ‼」」」

「はい、気を付けて行くんだぞ～」

　適当に挨拶して竜悟達が出て行くと大我も併せて手を振って見送った。
　そして竜吾達が居なくなったその部屋で大我と時雨に白崎の三人は、本気でこの後どうやって渚と武虎を止めるか・・・・について考えるのだった。