Silens&Silentia シレンス・シレンティア

宮本葵

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第一章「Silensとの出会い」

番外編 +ep.1 “Christmas 2025”

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「え……!?何これ」

 玄関のドアを開けると、寮の部屋の中にいつの間にかクリスマスの飾りがつけられていた。

「あ、蒼くん、おかえり~~」
「宮本くん遅いわよ……」
「中村さんに優依も!?」

 玄関の靴を見る限り、もう少し来客は居そうだ。

「あ、蒼くん帰ってきたか!」
「え!?桐生先輩!?」

 まさかの桐生先輩まで!?

「まあ~、やっぱり蒼くんのこと昔から見てきたしね~」
「昔って……まだ数ヶ月前のことですよ。そういえば、僕のバティは……?」
「気まずいから来なかったんじゃないかな。まあ、私たちで楽しもうよ」

 そう言って腕にしがみついてくる。……優依の視線が痛い……。

「あの~、いくら先輩だからと言って……、私キレますよ?私の彼氏に手を出さないでください」
「彼氏になったつもりはないけど……」
「あら、蒼くんはこう言ってるけど」

 プーッと頬を膨らませた優依はどこかへいってしまった。

「蒼、帰ってきたのか。夕食会の準備手伝えよな」
「なんでこんな狭い空間にこんだけ人集めたのか知らねえけど、早く蒼手伝え。お前のせいでこうなったんだからな」
「分かったよ」

 キッチンに立つと、すでに戦場と化していた。紙皿、プラスチックのフォーク、買ってきたままのチキンの箱。

「ほら蒼、これ温め直して」
「はいはい……」

 電子レンジの音が鳴る。その間、ふと机の方を見ると、端の方に優依が座っていた。膝を抱えて、ツリーの電飾をぼんやり眺めている。

「……優依」
「なに、蒼くん」

 素っ気ない返事。でも、ちゃんと顔はこっちを向いた。

「あとでケーキ切るの、手伝ってほしい」
「……別に、いいよ」

 それだけ言って、また視線を逸らす。けれど、さっきより少しだけ声が柔らかい。

「はいはーい、空気変わったところで乾杯しよっか~」
「まだ全員揃ってねえだろ」
「細かいこと気にしないの!」

 紙コップが配られ、適当に注がれたジュースを手に取る。誰かが電気を少し落として、ツリーの光だけが部屋を照らした。

「メリークリスマス!」

 重なった声と、軽い笑い声。チキンの匂いと、甘いケーキの香りが混ざる。騒がしくて、狭くて。でも――悪くない。
 隣に立った優依が、小さく呟いた。

「……来年も蒼くんとクリスマス過ごせるかな……?」

 その声は、ツリーの光に、蒼たちの騒がしい会話に紛れて、静かに消えた。
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