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いつか見た夢の世界で
城壁の王国騎士
王家主催のパーティーの最中、王城外壁付近にて。
アルダレートの属する王国騎士団は、常駐している地区の屯所から出張し、第三隊までが王城に召喚されていた。
任務は、パーティーが開催されている間の王城の警備。 王国の守護を生業とする彼らには相応しくない仕事であった。
そもそも普段であれば、そういった任務は王城の守護者である王宮騎士が担い、そして今動員されている半分以下程度の警備規模で、酔っ払いや騒ぎを起こした者の連行が大まかな仕事である。 城壁に騎士を置いておくなど、普通ではあり得ない。
しかし、今は王太子であるジークが未遂とはいえ暗殺されかけたのだ。
故に、そのような異例が起こっていた。
本来であればジーク暗殺未遂事件は極秘事項ではあるが、王国騎士団の上位にある第三隊までに国王から事態の説明と協力要請を求める書簡が送られ、王国騎士団は特務としてこれを拝命したのだ。
王宮騎士は普段通りに王城内全域の警備にあたり、不審者の侵入を警戒して王国騎士が城壁から庭園の警備にあたっている。
普段であれば平民の住まう街中を巡回する王国騎士達だから王城に慣れない部分もあるものの、彼らは有事の際は優先的に戦場に出る勇士達の集まりでもある故に、多少の環境変化には慣れたものだった。
そもそも普段の街中巡回でも、幾らか巡るその中には治安の悪い場所の一つや二つ、破落戸の1人や2人はいるもので、それらに比べれば現環境のなんと平和な事か。
気を緩ませる事など騎士としてありはしないとはいえ、緊張感の薄くなる仕事であった。
そしてそんな中、気もそぞろに王城へと視線を送り続ける赤髪の騎士がいた。
「おいアル、そんなにあのお姫さんが気になるんかよ」
いつまでも王城を眺め続ける赤髪の騎士に、呆れたように同僚である軽薄な騎士が声を掛ける。
対する赤髪の騎士ことアルダレートは、面倒そうに返事を返す。
「当然だ。 本来なら俺も子爵家の人間としてパーティーに参加し、ジーク様とエリーナ様の傍に付く筈だったというのに……」
悔しそうに歯噛みするアルダレートに苦笑いで応える軽薄な騎士。 彼は、アルダレートの態度をいつもの事だと慣れきった様子だった。
この軽薄な騎士の名はレイニードと言い、平民上がりでアルダレートと同期の王国騎士団入団者であった。
とはいえ、同期と言えども今年で38歳になるオジサンだが。
「おまえさん、入団してからずっとお姫さんの事ばかりだがよ、そんなんで騎士として大丈夫なん? 国への忠誠がどうとか言われないのかね?」
「俺が騎士団に入る以前より守ると誓っていた方だ。 王国騎士になろうとも、騎士としての誓いに懸けて守り抜く」
「ヒュー、ご立派なこったねぇ。 いや、ひょっとしてこりゃあ青い春かねぇ。 オジサンには眩しい事ですよって」
レイニードは「クカカカ」とこれまた態度に違わず軽薄そうな笑いをあげると、アルダレートに睨まれて「こりゃ失敬」と口を押さえる。
これは、この同期生間の会話の中ではよく見られるやり取りであった。
というのも、同期である故に隊の中で2人はセット扱いされがちである。
加えて、王国騎士団長の子息という微妙な立ち位置の後輩騎士の扱いに困った他の先輩騎士達も、軽薄ながらも分け隔ての無いレイニードの態度に何も言わないアルダレートの様子と、あともう一つの要因から、自然とレイニードがアルダレートの保護者のような扱いをしていた。
「しっかしまあ、こっから見えるだけでも豪勢なこって。 アレかね? お貴族様ってのは揃いも揃って派手好きかね?」
「それは偏見と言うものだ、レイニード。 少なくとも、エリーナ様は派手な物よりも実用的な物を好まれる」
「ッカー! そこでお姫さんが出てくるあたりアレだよなぁ、アルは。 拗らせすぎだろうよ」
「何がだ」
レイニードの言葉に、本気で意味が分からないと首を傾げるアルダレート。
このやり取りも、既に2人の間で何度も繰り返されているもので、レイニードとしてはアルダレートに対して鈍感が過ぎると内心でそう評している。
平民上がりのレイニードには、貴族の爵位や血統のしがらみなどは理解出来ない。 だから、好きな者同士がくっつけばいいと思っている。
アルダレートの事にしたっていつまでも鈍ちんで煮え切らないから、よく口に登る『お姫さん』の事で煽るのだが、決まってはぐらかされるか理解されない。
だが、それでもお節介をやめないレイニードは今回も煽ろうと口を開きーーーかけたその時、光が一条、視線を横切っていくのをレイニードとアルダレートは視認した。
「ッ! エリーナ様ッ!!」
「お、おい待てってアル! 落ち着けよ!」
衝動的に走り出そうとしたアルダレートを、何とか腕を掴んで押さえるレイニード。
けれどその力は強く、そして容赦が無い。
明らかに冷静を欠いているアルダレートの、その理由をレイニードはよく分かっていた。
即ち、お姫さんことエリーナの危機だという事だ。
はじめに王城の方へと飛んでいった一条の光。
そんなもの、事ここに至っては火矢しか考えられなかった。
一応は懸念されながらも、あまりに確実性が薄いからと思考の埒外にあった賊の奇襲という事態が起こったのだ。
「着弾したテラスにエリーナ様がいたんだ! 早く行かないとエリーナ様が」
「うっっそだろ!? お前さん、どんだけ目いいんだよ! つっても俺らはここら辺の警備を任されてんだぜ、冷静になれよ!」
腕を掴んだまま、若干引き摺られる形のレイニードは声を上げる。 非常事態であるからこそ、冷静を欠いてはいけないと、彼はアルダレートに訴えかけた。
「俺は冷静だ! 早く、エリーナ様の所へ行かせろ!!」
「お前さんのどこが冷静だ阿呆! がなり立てて大騒ぎしてたらお前さんが隊列離れてどっか行こうとしてんのがバレるだろうが! 行くんなら、静かにコソッと行ってこい!」
先の火矢が飛んでいくのが見えたのだろう。 他の団員達も動き出している。 そんな中で隊列を崩して大騒ぎをするアルダレートが突っ込んでいけば、下手を打つと火矢を放った犯人を逃してしまうかもしれない。
レイニードは、アルダレートの気性をある程度理解していた。
仮にも同期で、2度3度と訓練生時代や戦場で同じ釜の不味いメシを食べた仲だ。 こうなったら、言っても聞かない事など重々承知であった。
だからこそ、レイニードはアルダレートの行動事態を否定しない。
代わりに、少し落ち着かせるのだ。
「お前さんの分も俺が働いといてやるから、お姫さん助けてきな。 そんかし、全部終わったら豪勢なメシでも奢りやがれ」
そう言って、レイニードはパッとアルダレートの腕を離す。
さっきまで狂犬のように暴れていたアルダレートは、レイニードにコクリと1つ頷くと静かに暗い庭園を駆けていく。
その背を見送りながら、レイニードは溜息を何度も漏らした。
「あーあー、オジサンに無理させんなっての若造さんよぉ。 最近は肩凝りだって酷ぇし酒も呑みてぇのにさぁ!」
オジサン使い荒すぎだろとぼやくその姿は、何ともダメ人間。 いくら王国騎士に名を連ねるとはいえ、平民である彼の素はこんなものである。
だからこそ、アルダレート以外の団員からの評判はあまり良くないし、なんなら平民のダメ親父扱いまでされている。
しかし、本当にそんなダメ親父ならば王国騎士になれるはずも無い。
アリステル王国は実力のある者を重用する。
故に、レイニードもまた、王国騎士団の第三隊以内に収まれるだけの実力者である事に相違ないのだ。
「あらら~、あんなに遠くまで逃げちゃってまあ……でもオジサン、追いかけっこは得意でねぇ」
庭園の遠くに、コソコソと隠れながら逃げようとする謎の人影を見つけたレイニードは駆け出した。
その速さは尋常なものではなく、また、それが王国騎士団に重用されるだけの実力の一つであった。
グングンと謎の人影までの距離を縮めるレイニード。
謎の人影も、騎士が追いかけてきている事に気付くとなりふり構わず全力で走り始めた。 けれど、それでもレイニードは着々と人影との距離を詰めていく。
「アルと約束したんでなぁ、逃したらメシ奢ってもらえねんだ。 だから逃がさんよ、絶対に」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
王宮騎士に見つからないよう城内へと侵入したアルダレートは、パーティーの会場を目指していた。
その道中に見たのは、騒いでいる貴族とそれを宥める王宮騎士達。
先の火矢が放たれた事は既に知れ渡っているらしく、会場は混乱に陥っていた。 人が入り乱れ、エリーナを見つけるだけでも一苦労の状況だ。
アルダレートが城壁から見た時、火矢が着弾したテラスにはエリーナが居た。 ならば側にはジークがいた筈で、既に非難を終えたのだろうかと思案する。
しかしそんな思考の最中、アルダレートは人混みの中でジークを見つけた。 傍には、見知らぬ令嬢を連れている。
「殿下、ご無事でしたか! エリーナ様はどこに!」
「アルか! 君は城壁の警備だと……ああ、エリーナ嬢が心配で駆け付けて来たんだね」
命令違反に、隠しもしないジークよりもエリーナの身を案じるアルダレートの態度に、一定の理解を示してはいるジークは呆れて首を横に振った。
「エリーナ嬢は、今はいないよ。 騎士を呼んでくる言って暫く経つけど、なかなか捕まらないのか戻ってこないんだ」
「くっ……! 殿下、俺がエリーナ様を探してまいります!」
「あ、おい、アルダレート!」
エリーナの存在が確認出来ないと判断すると、アルダレートは即座に駆け出した。
本来、エリーナはジークの盾役として常に傍から離れないよう言われていた。 なのに、ジークの傍を離れているという事は、状況から考えて何か不測の事態に陥っている可能性の方が高い。
そして、それがエリーナの身に危険を及ぼす事だという可能性も。
最悪の事態を考えて、アルダレートは身震いした。
久し振りに感じる、喪失への怖気であった。
また喪ってなるものかと、アルダレートはエリーナを探して駆け回るのだった。
アルダレートの属する王国騎士団は、常駐している地区の屯所から出張し、第三隊までが王城に召喚されていた。
任務は、パーティーが開催されている間の王城の警備。 王国の守護を生業とする彼らには相応しくない仕事であった。
そもそも普段であれば、そういった任務は王城の守護者である王宮騎士が担い、そして今動員されている半分以下程度の警備規模で、酔っ払いや騒ぎを起こした者の連行が大まかな仕事である。 城壁に騎士を置いておくなど、普通ではあり得ない。
しかし、今は王太子であるジークが未遂とはいえ暗殺されかけたのだ。
故に、そのような異例が起こっていた。
本来であればジーク暗殺未遂事件は極秘事項ではあるが、王国騎士団の上位にある第三隊までに国王から事態の説明と協力要請を求める書簡が送られ、王国騎士団は特務としてこれを拝命したのだ。
王宮騎士は普段通りに王城内全域の警備にあたり、不審者の侵入を警戒して王国騎士が城壁から庭園の警備にあたっている。
普段であれば平民の住まう街中を巡回する王国騎士達だから王城に慣れない部分もあるものの、彼らは有事の際は優先的に戦場に出る勇士達の集まりでもある故に、多少の環境変化には慣れたものだった。
そもそも普段の街中巡回でも、幾らか巡るその中には治安の悪い場所の一つや二つ、破落戸の1人や2人はいるもので、それらに比べれば現環境のなんと平和な事か。
気を緩ませる事など騎士としてありはしないとはいえ、緊張感の薄くなる仕事であった。
そしてそんな中、気もそぞろに王城へと視線を送り続ける赤髪の騎士がいた。
「おいアル、そんなにあのお姫さんが気になるんかよ」
いつまでも王城を眺め続ける赤髪の騎士に、呆れたように同僚である軽薄な騎士が声を掛ける。
対する赤髪の騎士ことアルダレートは、面倒そうに返事を返す。
「当然だ。 本来なら俺も子爵家の人間としてパーティーに参加し、ジーク様とエリーナ様の傍に付く筈だったというのに……」
悔しそうに歯噛みするアルダレートに苦笑いで応える軽薄な騎士。 彼は、アルダレートの態度をいつもの事だと慣れきった様子だった。
この軽薄な騎士の名はレイニードと言い、平民上がりでアルダレートと同期の王国騎士団入団者であった。
とはいえ、同期と言えども今年で38歳になるオジサンだが。
「おまえさん、入団してからずっとお姫さんの事ばかりだがよ、そんなんで騎士として大丈夫なん? 国への忠誠がどうとか言われないのかね?」
「俺が騎士団に入る以前より守ると誓っていた方だ。 王国騎士になろうとも、騎士としての誓いに懸けて守り抜く」
「ヒュー、ご立派なこったねぇ。 いや、ひょっとしてこりゃあ青い春かねぇ。 オジサンには眩しい事ですよって」
レイニードは「クカカカ」とこれまた態度に違わず軽薄そうな笑いをあげると、アルダレートに睨まれて「こりゃ失敬」と口を押さえる。
これは、この同期生間の会話の中ではよく見られるやり取りであった。
というのも、同期である故に隊の中で2人はセット扱いされがちである。
加えて、王国騎士団長の子息という微妙な立ち位置の後輩騎士の扱いに困った他の先輩騎士達も、軽薄ながらも分け隔ての無いレイニードの態度に何も言わないアルダレートの様子と、あともう一つの要因から、自然とレイニードがアルダレートの保護者のような扱いをしていた。
「しっかしまあ、こっから見えるだけでも豪勢なこって。 アレかね? お貴族様ってのは揃いも揃って派手好きかね?」
「それは偏見と言うものだ、レイニード。 少なくとも、エリーナ様は派手な物よりも実用的な物を好まれる」
「ッカー! そこでお姫さんが出てくるあたりアレだよなぁ、アルは。 拗らせすぎだろうよ」
「何がだ」
レイニードの言葉に、本気で意味が分からないと首を傾げるアルダレート。
このやり取りも、既に2人の間で何度も繰り返されているもので、レイニードとしてはアルダレートに対して鈍感が過ぎると内心でそう評している。
平民上がりのレイニードには、貴族の爵位や血統のしがらみなどは理解出来ない。 だから、好きな者同士がくっつけばいいと思っている。
アルダレートの事にしたっていつまでも鈍ちんで煮え切らないから、よく口に登る『お姫さん』の事で煽るのだが、決まってはぐらかされるか理解されない。
だが、それでもお節介をやめないレイニードは今回も煽ろうと口を開きーーーかけたその時、光が一条、視線を横切っていくのをレイニードとアルダレートは視認した。
「ッ! エリーナ様ッ!!」
「お、おい待てってアル! 落ち着けよ!」
衝動的に走り出そうとしたアルダレートを、何とか腕を掴んで押さえるレイニード。
けれどその力は強く、そして容赦が無い。
明らかに冷静を欠いているアルダレートの、その理由をレイニードはよく分かっていた。
即ち、お姫さんことエリーナの危機だという事だ。
はじめに王城の方へと飛んでいった一条の光。
そんなもの、事ここに至っては火矢しか考えられなかった。
一応は懸念されながらも、あまりに確実性が薄いからと思考の埒外にあった賊の奇襲という事態が起こったのだ。
「着弾したテラスにエリーナ様がいたんだ! 早く行かないとエリーナ様が」
「うっっそだろ!? お前さん、どんだけ目いいんだよ! つっても俺らはここら辺の警備を任されてんだぜ、冷静になれよ!」
腕を掴んだまま、若干引き摺られる形のレイニードは声を上げる。 非常事態であるからこそ、冷静を欠いてはいけないと、彼はアルダレートに訴えかけた。
「俺は冷静だ! 早く、エリーナ様の所へ行かせろ!!」
「お前さんのどこが冷静だ阿呆! がなり立てて大騒ぎしてたらお前さんが隊列離れてどっか行こうとしてんのがバレるだろうが! 行くんなら、静かにコソッと行ってこい!」
先の火矢が飛んでいくのが見えたのだろう。 他の団員達も動き出している。 そんな中で隊列を崩して大騒ぎをするアルダレートが突っ込んでいけば、下手を打つと火矢を放った犯人を逃してしまうかもしれない。
レイニードは、アルダレートの気性をある程度理解していた。
仮にも同期で、2度3度と訓練生時代や戦場で同じ釜の不味いメシを食べた仲だ。 こうなったら、言っても聞かない事など重々承知であった。
だからこそ、レイニードはアルダレートの行動事態を否定しない。
代わりに、少し落ち着かせるのだ。
「お前さんの分も俺が働いといてやるから、お姫さん助けてきな。 そんかし、全部終わったら豪勢なメシでも奢りやがれ」
そう言って、レイニードはパッとアルダレートの腕を離す。
さっきまで狂犬のように暴れていたアルダレートは、レイニードにコクリと1つ頷くと静かに暗い庭園を駆けていく。
その背を見送りながら、レイニードは溜息を何度も漏らした。
「あーあー、オジサンに無理させんなっての若造さんよぉ。 最近は肩凝りだって酷ぇし酒も呑みてぇのにさぁ!」
オジサン使い荒すぎだろとぼやくその姿は、何ともダメ人間。 いくら王国騎士に名を連ねるとはいえ、平民である彼の素はこんなものである。
だからこそ、アルダレート以外の団員からの評判はあまり良くないし、なんなら平民のダメ親父扱いまでされている。
しかし、本当にそんなダメ親父ならば王国騎士になれるはずも無い。
アリステル王国は実力のある者を重用する。
故に、レイニードもまた、王国騎士団の第三隊以内に収まれるだけの実力者である事に相違ないのだ。
「あらら~、あんなに遠くまで逃げちゃってまあ……でもオジサン、追いかけっこは得意でねぇ」
庭園の遠くに、コソコソと隠れながら逃げようとする謎の人影を見つけたレイニードは駆け出した。
その速さは尋常なものではなく、また、それが王国騎士団に重用されるだけの実力の一つであった。
グングンと謎の人影までの距離を縮めるレイニード。
謎の人影も、騎士が追いかけてきている事に気付くとなりふり構わず全力で走り始めた。 けれど、それでもレイニードは着々と人影との距離を詰めていく。
「アルと約束したんでなぁ、逃したらメシ奢ってもらえねんだ。 だから逃がさんよ、絶対に」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
王宮騎士に見つからないよう城内へと侵入したアルダレートは、パーティーの会場を目指していた。
その道中に見たのは、騒いでいる貴族とそれを宥める王宮騎士達。
先の火矢が放たれた事は既に知れ渡っているらしく、会場は混乱に陥っていた。 人が入り乱れ、エリーナを見つけるだけでも一苦労の状況だ。
アルダレートが城壁から見た時、火矢が着弾したテラスにはエリーナが居た。 ならば側にはジークがいた筈で、既に非難を終えたのだろうかと思案する。
しかしそんな思考の最中、アルダレートは人混みの中でジークを見つけた。 傍には、見知らぬ令嬢を連れている。
「殿下、ご無事でしたか! エリーナ様はどこに!」
「アルか! 君は城壁の警備だと……ああ、エリーナ嬢が心配で駆け付けて来たんだね」
命令違反に、隠しもしないジークよりもエリーナの身を案じるアルダレートの態度に、一定の理解を示してはいるジークは呆れて首を横に振った。
「エリーナ嬢は、今はいないよ。 騎士を呼んでくる言って暫く経つけど、なかなか捕まらないのか戻ってこないんだ」
「くっ……! 殿下、俺がエリーナ様を探してまいります!」
「あ、おい、アルダレート!」
エリーナの存在が確認出来ないと判断すると、アルダレートは即座に駆け出した。
本来、エリーナはジークの盾役として常に傍から離れないよう言われていた。 なのに、ジークの傍を離れているという事は、状況から考えて何か不測の事態に陥っている可能性の方が高い。
そして、それがエリーナの身に危険を及ぼす事だという可能性も。
最悪の事態を考えて、アルダレートは身震いした。
久し振りに感じる、喪失への怖気であった。
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