10 / 142
10.秘書さんと弁護士さん
しおりを挟むその後は、料理の話ばかりしていた。
味付けとか、ただただおいしい、とかそんな。
調理法とかも話してくれるので、瑛士さんは多分料理できる人だな、という感想。
まあでも忙しくてやってる暇なさそう。とにかくいろいろ忙しそうっていうのも、話してて分かった。
「失礼します」
扉が開いて、お店の人と一緒に、二人の男の人が入ってきた。
二人とも、スーツ。一人が少し年上っぽいけど。弁護士さんのことは悪友って言ってたから、年上っぽい人が、秘書さんかなぁ。なんかちょっと、ドキドキする。
「悪い、呼び出して。食べる?」
瑛士さんの言葉に、二人はそろって首を振った。
「揃って、急いで来てと呼び出されて、何事かと思ってるところですので。話を先にしてほしいです」
秘書さんぽい人の、言葉。
店員さんが椅子を持ってきて、丸いテーブルに二つ、椅子を追加した。
「拓真さん、コーヒーでいいですか?」
「お願いします」
「ふたつお願いします」
秘書さんぽい人が店員さんにお願いして、店員さんが出ていくと、新しく来た二人は、オレに視線を向けた。ドキ。入ってきた時から、食べるのはやめて、その様子を見ていたのだけれど。二人とも、近づいてきて、順番に名刺を差し出した。慌てて立ち上がって、名刺を受け取る。
秘書さんぽいって、合ってた。秘書課と書いてある名刺の名前は「楠 京也」さんと。もう一人の弁護士さんは「有村 拓真」さん。
「三上 凛太です……医大の三年生です」
言って、お辞儀をする。
ここからどうしたら、と思ったところで、瑛士さんが「とりあえず三人とも座って」と笑った。
「凛太、食べてていいよ。オレが説明する」
え、いいのかな、と思っていたら、「どうぞ」と秘書の楠さんが笑ってくれた。弁護士の有村さんも、頷いてくれる。コーヒーが運ばれてきて、二人も飲み始めたので、オレはとりあえず食べてることに決めた。
「三上凛太くん。Ωの子で、さっき、知り合ったんだけど」
瑛士さんがそう言うと、二人がこちらに視線を向けた。オレがΩなのか、不思議に思ってそう。
……ていうか、この二人は、多分、αなんだろうなあ。αの周りって、αが集まるよね。家柄も関係あるのかもしれないけど。
「ほら、オレさ。ずっと言ってたよな、見合いとか交際の申し込みも、全部いらないって」
瑛士さんが自分の現状について話し出すと、二人はまた瑛士さんに視線を戻した。オレは、静かに食事をしながら、二人をちょっと観察。
楠さんは、アクセサリーは全くついてない。ネクタイピンだけ。穏やかな色のスーツ。髪の毛はこげ茶っぽい。前髪は分けてて、サイドに流してて、なんかすごく、整った印象。
椅子に座るとすぐにさりげなく手帳と筆記用具をテーブルに置いた。なんか色々、手際が良さそう。――きちんとしてて、この人が秘書なら、仕事、すごくスムーズにできそう……とか思ってしまう感じの人。優しい感じの笑みを浮かべてる。
有村さんは――ちょっとパッと見、怖いかな。銀のブレスレットが目立つ。すごく、弁護士さんってイメージ。何があっても守ってくれそうな、意志を感じる瞳。……強そう。
でもさっき、名刺を渡してくれた笑顔は優しかったから……多分、味方としてなら頼もしいかも……。短めの整った黒髪。姿勢がすごく良い。悪友って言ってたから……瑛士さんと友達ってことだよね。ちょっとタイプ違うように見えるけど……でも仲良しってことは、普段はもっとくだけてる感じなのかなあ。
と、今、分かる感じはそんな感じ。
とりあえず。
オレの人生では、この人達みたいな人も。会ったこと無いかも。
今日はほんと。
不思議な日になりそう。
1,822
あなたにおすすめの小説
のほほんオメガは、同期アルファの執着に気付いていませんでした
こたま
BL
オメガの品川拓海(しながわ たくみ)は、現在祖母宅で祖母と飼い猫とのほほんと暮らしている社会人のオメガだ。雇用機会均等法以来門戸の開かれたオメガ枠で某企業に就職している。同期のアルファで営業の高輪響矢(たかなわ きょうや)とは彼の営業サポートとして共に働いている。同期社会人同士のオメガバース、ハッピーエンドです。両片想い、後両想い。攻の愛が重めです。
学内一のイケメンアルファとグループワークで一緒になったら溺愛されて嫁認定されました
こたま
BL
大学生の大野夏樹(なつき)は無自覚可愛い系オメガである。最近流行りのアクティブラーニング型講義でランダムに組まされたグループワーク。学内一のイケメンで優良物件と有名なアルファの金沢颯介(そうすけ)と一緒のグループになったら…。アルファ×オメガの溺愛BLです。
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果
ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。
そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。
2023/04/06 後日談追加
親友が虎視眈々と僕を囲い込む準備をしていた
こたま
BL
西井朔空(さく)は24歳。IT企業で社会人生活を送っていた。朔空には、高校時代の親友で今も交流のある鹿島絢斗(あやと)がいる。大学時代に起業して財を成したイケメンである。賃貸マンションの配管故障のため部屋が水浸しになり使えなくなった日、絢斗に助けを求めると…美形×平凡と思っている美人の社会人ハッピーエンドBLです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる