「トリプルSの極上アルファと契約結婚、なぜか猫可愛がりされる話」

星井 悠里

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「年を取ると涙もろくなるのかもしれないな」

 食事を食べ始めて、雅彦さんが不意にそう言った。瑛士さんが意外そうに、ふ、と笑う。

「じーちゃんにもそんなことあるの?」
「あるみたいだな」

 ははっ、と二人は笑い合ってる。
 オレは微笑みつつ、何となく話に頷きながら、ご飯を食べる。

「にしてもよく分かったね、じいちゃん。だしだけで、分かるもの?」
「酢の物も見た感じ、似てると思ったし、長いもとぶりの唐揚げも見た記憶があるし、キンピラも――同じ料理でも、色合いや切り方や、飾り方、違うだろ? パッと見、似てると思ってたんだよ。それで飲んだから――ふと、いろいろ思い出した。まだその時は確信じゃなかったんだが――急にね」

 雅彦さんは苦笑しながら、食事を続ける。

「――――……」

 確かに、少し変えて作った時に、いまいちだなーと思って、レシピ通りに作りなおしたこともあったっけ。それはやっぱり、レシピがおいしいってことで――母さんも言ってた。野菜の切り方一つでも、味のしみこみ方が違うんだよ、て。
 お皿にのせるときも、おいしく見えるようにって。そうそう、瑛士さんのおばあさんのレシピのプリントは、可愛い絵がいっぱい書いてある。

 もちろん、自分で作ったり、他のレシピで作ったりするものもたくさんあるんだけど、今日は、張り切ってたから――母さんに習った料理を、自然と作ってた。

 いくつも重なって、雅彦さんの中に、おばあさんを思い出させたんだよね。
 オレの母さんが、瑛士さんのおばあさんに習った料理を、オレが母さんから習って、それが今につながって――とか思うと、なんだか、すごく感動してくる。

 潤んでくる瞳を隠したくて、料理を見る振りで視線を落としていると、雅彦さんはオレを見て、「どうかした?」と聞いてきた。

「いえ」
 普通に、何も、と言いたかったのに、息を吸ったら、ぐす、と鼻水の音。え? と瑛士さんがオレを見つめてくる。

「え。どうしたの、凛太」
「……いえ、あの……」

 オレは首を傾げる。
 なんかさっきもだったけど――なんか、情緒が……??

「よく分かんないんですけど……疲れてるみたいで?」
「疲れてて泣くの?」
 困った顔でオレを見てる、瑛士さん。

「……いや……おばあさんの、味とか……見た目と、だしで、思い出すとか――瑛士さんのおばあさんが、オレの母さんと繋がってた、とか、なんか、いろいろ感動、したみたいで……あ、でも、どうして涙が出るかは、よくわかんなくて……」

 俯いたまま言っていたら、一秒二秒置いて、瑛士さんが笑ったのが分かった。ティッシュを取って、オレの涙を優しくふき取る。上向かされて、ぎゅ、と目をつむってると。

「もう可愛いなあ、凛太……」

 ……また可愛い言ってる……。ていうか、雅彦さんの前でも普通に言うんだ……思いながら、なるべく普通に「疲れてるんだと思います……勉強しすぎてたかも……」と答える。

「そっか……少し休もうね」

 クスクス笑いながら、「はい、鼻かんで」とティッシュを渡してくれる。瑛士さんが涙を拭いてくれたティッシュも受け取って立ち上がり、ゴミ箱のところで鼻をかんで、「すみません」と席に戻った。

「じいちゃんが、ばあちゃんに一途だったのを話した時も感動してた、凛太」

 そう言った瑛士さんに、雅彦さんは、はは、と笑った。

「勉強って何をしてるんだい?」
「医学部の三年生なので、いろいろ忙しくて」
「ああ――それは忙しいね」

 うんうん頷く。

「凛太くんも、少しは気分転換した方がいいかもね」
「――あ、ちょうどさっき、自分でも思ってました」

 雅彦さんにそう答えると、瑛士さんがオレを見つめてくる。

「いつでも付き合うのに。海とか、連れてくよ?」
「あ、いえいえ……忙しいのに、瑛士さん」

 はっ。雅彦さんの前で、デート? のお誘い、こんな感じで断っちゃ駄目かな。

「どこか好きなとこ、無いのかい? 遊びに行きたいような」
「んー。そうですねぇ……子供の頃は水族館とか、好きでしたけど……」

 ふふ、と笑う。

「水族館?」
「はい。オレも母も好きだったので、何回か一緒に行って……」
「ああ。オレも。志桜里しおり……ああ、ばあさんね? 志すに桜に里って書くんだけど」
「すっごく素敵ですね」 

 志桜里さん。オレのレシピは、志桜里さん、からかぁ。
 名前がつくと、余計身近に思えるような。

「志桜里と、桜子さくらこ……あ、娘ね。瑛士の母と、瑛士を連れて、水族館にたまに行ってたなぁ」
「そうなんですね。どこのですか?」

 オレが聞くと、「イルカショーが最大のとこ」と瑛士さんが笑う。

「あっ、オレも行ってました。イルカ大好きで」

 瑛士さんの言葉に、ふふ、と笑うと、瑛士さんが「オレも。イルカっていいよな」と微笑む。 

「ですよね」


 ふふ、と頷く。
 どこかですれ違ってたりしてたらおもしろいなぁ。なんて思ったりする。





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