「トリプルSの極上アルファと契約結婚、なぜか猫可愛がりされる話」

星井 悠里

文字の大きさ
96 / 138

95.ロマンチック②

しおりを挟む
「前少し話したけどさ」
 穏やかな、優しい声を聞きながら、はい、と頷く。

「こういうとこでしたい? ファーストキス」
「――……あ、オレがですか?」

 急に入ってきた、ファーストキスという単語に、数秒ぼけっとしてしまい、気を取り直して瑛士さんに視線をむける。オレが呆けてたからか、瑛士さんは苦笑を浮かべた。
 
「ほら。素敵なとこで、してほしいなーて、話したでしょ」
「瑛士さん、言ってましたね」
「凛太は、そういうの、ほんとに少しも思わない?」

 そう聞かれて、んー……と考えながら、また視線を夕日に戻す。

「オレ、本当に、そういうのあんまり考えなくて――ていうか、それより、瑛士さんはこういうとこ、本当に、似合いますね」
「……そう?」
「こういうとこって言うか、素敵なとこ、どこに居ても似合うと思いますけど」

 ふふ、と笑いながら言うと、瑛士さんは「そんなことはないと思うけど」と苦笑した。

「まあ、こういうところでファーストキス、とかすごくロマンチックなんだろうとは思いますけど……」
「……凛太には、そういうのはしないで生きてくかも、て言われたけど」
「言いましたね」

 そうだ。そんなこと言ったなぁ。瑛士さんの困ったみたいな顔に、苦笑してしまう。でも、今までそういうことしたいと思ったことも無いってなると、やっぱりオレには関係ない話な気がする。

 だって、ここから大学の間は勉強忙しいし、もし医者になれても、絶対死ぬほど忙しいし。働くところによっては時間なんかもうまったく余裕のない日々になる中で、恋愛しようなんて、オレ、思わないだろうし。そんな中でも、恋する人は、そこに癒しを求めるんだろうけど、オレは、絶対違うと思う……。

 多分、瑛士さんにとっては、恋するって当たり前なんだろうな。モテただろうし。学生時代、どのクラスにもモテる人って何人かは居た気がするけど……きっとこの人は、ダントツ、だったんだろうなと、詳しく聞かなくても分かるし。

 そんな人からすると、キスすらしたこと無くて、それどころか、そういうの、しないで生きてくとか言っちゃうオレのことは、もしかして、とっても心配な存在なのかもなぁ。

「――恋って、楽しいですか?」

 ちら、と瑛士さんを見ながらそう言うと、瑛士さんは、少しの間、考え深げに黙ってオレを見つめた。

「うん……まあ。楽しいだけじゃないこともあるけど。でも、楽しいこともたくさんあるし。恋愛でしか持たない感情とかもあるし」
「どんなのですか?」
「んー……ドキドキしたり。可愛いなーとか……大切に思ったりとか……」
「……それは確かに、友達には思わないかもですね」

 なるほど、ドキドキか。
 ――ん? ドキドキ、とか。可愛い、とか??
 ……あれ、それって。最近オレ……?

「だからさ。やっぱり、オレは、凛太に、ちゃんと誰かと恋して幸せに――」

 頭の中で、ん? と固まってたオレは、瑛士さんの言葉が途中で止まったのに気付いて、少し遅れて瑛士さんを見つめた。

 瑛士さんは、んー、と眉を寄せて、口元に軽く握った手をあてて、何かを考えているっぽい様子。

「瑛士さん?」
「……あ、ごめん。なんでもない」
「……? そうですか?」

 なんでもないって感じじゃなかったけど……でも、今は自分の中のことが気になる。瑛士さんから目を逸らして、ますます暮れていく、金色みたいに見える夕日を、見つめる。

 ドキドキしたり可愛いとか思ったり。瑛士さんには、そうなっちゃうけど。
 でもなぁ。すっごい心臓とか、体の奥が痛くなったりもするしな。ちょっと違う気もする。

 それに、可愛いって、そういうことじゃないか。ていうか、そもそもオレが瑛士さんを可愛い、とか。おかしいし。
 それとこれとは、別問題か。

 ……恋のそれと、瑛士さんへのそれは、どこで区別したらいいんだろ?? 違いがよく分かんないや。


 しばらくの間、瑛士さんもオレも黙ったまま、
 ただただ、綺麗な夕焼けを目に映す。








(2025/4/25)

次のページをとりあえず目指してここまで書いてきました(´∀`*)ウフフ
楽しんで頂けるといいなぁ…✨ by悠里
しおりを挟む
感想 123

あなたにおすすめの小説

のほほんオメガは、同期アルファの執着に気付いていませんでした

こたま
BL
オメガの品川拓海(しながわ たくみ)は、現在祖母宅で祖母と飼い猫とのほほんと暮らしている社会人のオメガだ。雇用機会均等法以来門戸の開かれたオメガ枠で某企業に就職している。同期のアルファで営業の高輪響矢(たかなわ きょうや)とは彼の営業サポートとして共に働いている。同期社会人同士のオメガバース、ハッピーエンドです。両片想い、後両想い。攻の愛が重めです。

オメガ大学生、溺愛アルファ社長に囲い込まれました

こたま
BL
あっ!脇道から出てきたハイヤーが僕の自転車の前輪にぶつかり、転倒してしまった。ハイヤーの後部座席に乗っていたのは若いアルファの社長である東条秀之だった。大学生の木村千尋は病院の特別室に入院し怪我の治療を受けた。退院の時期になったらなぜか自宅ではなく社長宅でお世話になることに。溺愛アルファ×可愛いオメガのハッピーエンドBLです。読んで頂きありがとうございます。今後随時追加更新するかもしれません。

親友が虎視眈々と僕を囲い込む準備をしていた

こたま
BL
西井朔空(さく)は24歳。IT企業で社会人生活を送っていた。朔空には、高校時代の親友で今も交流のある鹿島絢斗(あやと)がいる。大学時代に起業して財を成したイケメンである。賃貸マンションの配管故障のため部屋が水浸しになり使えなくなった日、絢斗に助けを求めると…美形×平凡と思っている美人の社会人ハッピーエンドBLです。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

学内一のイケメンアルファとグループワークで一緒になったら溺愛されて嫁認定されました

こたま
BL
大学生の大野夏樹(なつき)は無自覚可愛い系オメガである。最近流行りのアクティブラーニング型講義でランダムに組まされたグループワーク。学内一のイケメンで優良物件と有名なアルファの金沢颯介(そうすけ)と一緒のグループになったら…。アルファ×オメガの溺愛BLです。

借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる

水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。 「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」 過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。 ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。 孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。

久しぶりの発情期に大好きな番と一緒にいるΩ

いち
BL
Ωの丞(たすく)は、自分の番であるαの かじとのことが大好き。 いつものように晩御飯を作りながら、かじとを待っていたある日、丞にヒートの症状が…周期をかじとに把握されているため、万全の用意をされるが恥ずかしさから否定的にな。しかし丞の症状は止まらなくなってしまう。Ωがよしよしされる短編です。 ※pixivにも同様の作品を掲載しています

若頭の溺愛は、今日も平常運転です

なの
BL
『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』続編! 過保護すぎる若頭・鷹臣との同棲生活にツッコミが追いつかない毎日を送る幼なじみの相良悠真。 ホットミルクに外出禁止、舎弟たちのニヤニヤ見守り付き(?)ラブコメ生活はいつだって騒がしく、でもどこかあったかい。 だけどそんな日常の中で、鷹臣の覚悟に触れ、悠真は気づく。 ……俺も、ちゃんと応えたい。 笑って泣けて、めいっぱい甘い! 騒がしくて幸せすぎる、ヤクザとツッコミ男子の結婚一直線ラブストーリー! ※前作『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』を読んでからの方が、より深く楽しめます。

処理中です...