【恋なんかじゃない】~恋をしらなかった超モテの攻めくんが、受けくんを溺愛して可愛がるお話。

星井 悠里

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◇2人の関係

「セフレ?」*玲央

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 優月の髪の毛をドライヤーをかける。

 優しくふわふわ撫でながら、乾かしてやってると。
 ものすごく気持ちよさそう。

 いつまでもやっていたかったけれど、乾いてしまったので、仕方なくスイッチを切る。

「ん、おわり。 お前の髪、フワフワな……」

 髪に触れると、優月がふ、と微笑んでる。
 ドライヤーを引き出しに片付けていると、名を呼ばれて、見上げると。
 何だか神妙な顔。


「……玲央って、恋人はいないの?」

 優月からのその質問に、一瞬で、ぱっと色々浮かぶ。


 ……恋人になりたいって事か?

 ――――……確かに優月は、可愛いけど……恋人……。

 恋人にするのは、抵抗がありすぎる……。
 ……ってどんだけオレ、「恋人」が嫌なんだ。

 ため息をつきたい気分になりながら。

「……恋人は居ない」
「そうなんだ……」

 優月は、一度頷いて、俯いた。


「じゃあ、あの……」
「……ん?」

「……玲央は、こんな風に会う人、他にも居るよね?」
「――――……ん。セフレは居る」


「――――……じゃあさ」
「――――……」


 恋人にして、と言われたら、何て言おう。

 ――――……。
 優月がどうとかじゃなくて、
 恋人は、当分、要らない。と、そう思ってる事を、伝えようか。

 でも、それだと、優月はオレとは会わないのかもしれないし。

 でも恋人――――…… 誰か1人に決める事への、煩わしいという感情が、一気に心に沸き上がってきた、時だった。


「オレも、セフレ、ていうのに、してくれる?」
「――――……は?」


 思っていたセリフとは、全然違った。


 つい、たった今まで、恋人と言われたら、何て断ろうか、どう伝えようかと考えていたのに。


 ……何だか一気に、不快な気持ちに陥った。



 は?
 セフレ???

 ――――…… 何、言ってんの、優月。
 意味わかって言ってんのか?



 恋人、は断ろうとしていたのに、セフレを求める優月になんでだかものすごくモヤモヤして。でもそんな自分勝手な言葉は、何も、出せなくて。

 かなり長い事、無言で見つめあう。
 すると、優月は、何を思ったのか、一気に真っ赤になった。


 ――――……つか、お前、すぐそうやって、真っ赤になって、恥ずかしがるくせに。セフレとか…… 何言ってんの。


「セフレって――――……そんなの、お前、なれるの?」


 俯いてる優月に、そう聞いた。

「――――……っっ……」

 びく、と震えて。でも、全然顔を上げない。
 何だか、本当に、モヤモヤする、よく分からない感情が、止まらない。


「玲央、ごめん、オレ、図々しかっ――――……」

 思い切ったようにオレを見上げた顔を、見た瞬間。
 どうにも、感情が高ぶって。

 引き寄せて、 何やら、ごめん、とか言いかけていた唇を、塞いだ。


「……っ……ん、う……っ……?」

 舌を絡めて、中をなめる。優月は、すぐにぎゅっと目を閉じた。


「……っふ……っ……ん……?」


 なんで今、キスなんかするんだ、と。思ってるんだろうな……。
 喘ぎの最後が、何か、言いたそう。


「……っん、ぅ……っ」

 息もできないようなキスをしてると逃れようとする。それを、さらに自分に引き寄せて、キスする。


「……っん……」


 目が涙に濡れて。オレの服をきつく握り締めてる。
 体から、力が抜けていく優月を抱き締めたまま、キスした。


 何でイライラするんだか。
 ――――…分かんねえけど……。


 キスされてる優月は――――……可愛い。
 愛おしい、と思う位。


 一生懸命なのも、苦しそうに歪むのも。でも気持ちよさそうなのも。
 出さないようにしてる声が漏れるのも。

 可愛くて、一度キスを離したけれど、もう一度唇を押し付けた。

 ゆっくり、キスを離して、優月を見つめてると。
 優月が瞳を開けて、見つめ返してきた。


「――……玲央?」
「……オレと、セフレに――――……なりたいの?」


 本当に、オレと、セフレになんか、なりたいのか?


「……オレ、玲央と居たいから。なれるなら、なりたい」
「――――……」

 何て言うのがいいんだか。

 過去に色々ありすぎて、恋人は欲しくない。
 だけど――――……優月とは、居たい気がする。

 恋人は欲しくないのに。
 優月に、セフレになりたいなんて言われると……。

 セフレが何人も居るって言ってるオレに、恋人になりたいなんて、優月は言わねえか、とも、思うのだけれど。

 ……それでも、なんだか、すげえ苛つくし……。


 色々葛藤した後。
 

 
「――――……分かった。いいよ」


 そう言った。

 恋人は、いらない。
 ――――……優月とは会いたい。

 優月がセフレでいいというなら――――……。
 とりあえず、それで、会えるなら。


「――――……お前と会いたいって、オレ言っただろ……」


 言いながらも、何だか納得しない自分。
 なのにオレの言葉に、なんでだか嬉しそうに笑う優月。



 つか……。
 優月との間に、セフレなんて言葉、使わずに、会おうと、思ってたのに。


 納得は行かないわ、モヤモヤするわ。



◇ ◇ ◇ ◇



 連絡先を交換しながら学校まで歩き、1限に向かう優月と別れた後。
 バンドの部室に入り、椅子に座ってテーブルに突っ伏した。



 くっそ。
 なんか――――…… 意味わかんねぇ。



「……って、うっわ、何、玲央! 早や! 何してんの!」

 ドアが開くと同時に叫びながら入ってきて、目の前に立ったのは、勇紀。

「朝からうるせーよ……お前こそ何してんだよ」
「オレは彼女が1限だからって付き合って学校来て、暇だったからここで時間潰しにきただけ」
「……あ、そ」

 また彼女できたのか。
 もうそこに突っ込む気もせず。突っ伏したまま向けてた顔をまた、下に戻した。


「何、どーしたの?」
「――――……ちょっと整理してるから、黙ってろ」

「じゃ整理したら話して」



 そんな声に、ああ、と頷いて。
 ため息を吐いた。




 突っ伏したまま。どれくらい経ったか。

「……なあ、玲央さ、今日オレと一緒の2限からだよね」
「……ああ」

「何で今ここに居んの?」
「……今朝まで一緒にいた奴が1限だったから」

「……うわ、気持ち悪」
「……うるせ」

「……だって、その子の為についてきてあげたって事だろ?」
「――――……」

 優月の為についてきてあげた、というよりは……。
 オレが、ここまで一緒に来たかったからな気がする。

 そう思いながらも、そんな事を言ったらますます勇紀が騒ぎそうなので、黙ってスルーした。

 その時、またドアが開いた。

「おー、勇紀、早いな? ……って、そこにつぶれてんの、玲央か?」
「おはよー、甲斐。そう、これ、玲央」

 甲斐の声がして、ため息。
 なんでお前らこんな朝早くからここに来るんだ。

 オレは、この時間、1人で考えるつもりだったのに。

「甲斐、1限は?」
「休講。最悪。……昨日掲示板見て帰るの忘れた」
「うわー最悪」

 勇紀と甲斐の会話を聞きながら、斜め前に座った甲斐に顔を向ける。

「おす、玲央。 つか、なに、どーした?」

 苦笑いの甲斐。その隣で、勇紀が笑う。

「なんか考え事してるらしいよ。整理したら話すっつーから待ってるとこ」
「へー。……なあ、颯也は来てねえ?」
「来てないけどなんで?」
「颯也、オレと同じ授業だし。多分昨日、掲示板見てねーと思うんだよな、言ってなかったし。あいつもこの時間空いたと思うんだけ…」

 その時。がちゃ、とドアが開いて。案の定というのか、颯也が顔を見せて。
 玲央たち3人が揃っているのを見て、ドアの所で固まった。

「――――……何してんだ?」
「はは。おはよ、颯也。止まってねーで入ってきなよ」

 勇紀が笑いながら颯也に話しかけてる。

「……甲斐は居るかなと思ったけど、勇紀も居たか――――……つか、玲央は、何してんだ」
「……」

 朝は嫌だと、1限を取らなかった事を皆知ってるので、例にもれずこの反応。

「オレは彼女に付き合ってついてきただけ。 あ、玲央も、朝まで一緒だった子に付き合って、ついてきたらしいよ」

 勇紀が言った瞬間。
 甲斐と颯也が、は?と固まった顔で、オレを見た。

 その顔を見て、勇紀がクッと笑い出した。

「……だよなー、そうなるよなー、はー、笑える……」

 ……なんでお前は朝からそんなテンション高くて元気なんだ。
 突っ込みたいけど、それすら面倒。


「で、さっき甲斐にも言ったけど、玲央は、何か考えてて、整理中なんだってさ」

 勇紀がそう言うと、すごい顔で玲央を見ていた2人は、顔を見合わせて、肩を竦めてる。


「……つか、お前がこの時間にここに居る事自体、異常事態……」

 颯也がため息とともに言う。

「なに。またすごいのに手ぇ出しちゃったとか? ストーカー化した?」

 甲斐の言葉に、ため息をつきながら、首を振る。



「……つか、しばらく放置しといて」

 それだけ返して、机に組んだ腕につっぷした。





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