36 / 878
◇2人の関係
「セフレ?」*玲央
優月の髪の毛をドライヤーをかける。
優しくふわふわ撫でながら、乾かしてやってると。
ものすごく気持ちよさそう。
いつまでもやっていたかったけれど、乾いてしまったので、仕方なくスイッチを切る。
「ん、おわり。 お前の髪、フワフワな……」
髪に触れると、優月がふ、と微笑んでる。
ドライヤーを引き出しに片付けていると、名を呼ばれて、見上げると。
何だか神妙な顔。
「……玲央って、恋人はいないの?」
優月からのその質問に、一瞬で、ぱっと色々浮かぶ。
……恋人になりたいって事か?
――――……確かに優月は、可愛いけど……恋人……。
恋人にするのは、抵抗がありすぎる……。
……ってどんだけオレ、「恋人」が嫌なんだ。
ため息をつきたい気分になりながら。
「……恋人は居ない」
「そうなんだ……」
優月は、一度頷いて、俯いた。
「じゃあ、あの……」
「……ん?」
「……玲央は、こんな風に会う人、他にも居るよね?」
「――――……ん。セフレは居る」
「――――……じゃあさ」
「――――……」
恋人にして、と言われたら、何て言おう。
――――……。
優月がどうとかじゃなくて、
恋人は、当分、要らない。と、そう思ってる事を、伝えようか。
でも、それだと、優月はオレとは会わないのかもしれないし。
でも恋人――――…… 誰か1人に決める事への、煩わしいという感情が、一気に心に沸き上がってきた、時だった。
「オレも、セフレ、ていうのに、してくれる?」
「――――……は?」
思っていたセリフとは、全然違った。
つい、たった今まで、恋人と言われたら、何て断ろうか、どう伝えようかと考えていたのに。
……何だか一気に、不快な気持ちに陥った。
は?
セフレ???
――――…… 何、言ってんの、優月。
意味わかって言ってんのか?
恋人、は断ろうとしていたのに、セフレを求める優月になんでだかものすごくモヤモヤして。でもそんな自分勝手な言葉は、何も、出せなくて。
かなり長い事、無言で見つめあう。
すると、優月は、何を思ったのか、一気に真っ赤になった。
――――……つか、お前、すぐそうやって、真っ赤になって、恥ずかしがるくせに。セフレとか…… 何言ってんの。
「セフレって――――……そんなの、お前、なれるの?」
俯いてる優月に、そう聞いた。
「――――……っっ……」
びく、と震えて。でも、全然顔を上げない。
何だか、本当に、モヤモヤする、よく分からない感情が、止まらない。
「玲央、ごめん、オレ、図々しかっ――――……」
思い切ったようにオレを見上げた顔を、見た瞬間。
どうにも、感情が高ぶって。
引き寄せて、 何やら、ごめん、とか言いかけていた唇を、塞いだ。
「……っ……ん、う……っ……?」
舌を絡めて、中をなめる。優月は、すぐにぎゅっと目を閉じた。
「……っふ……っ……ん……?」
なんで今、キスなんかするんだ、と。思ってるんだろうな……。
喘ぎの最後が、何か、言いたそう。
「……っん、ぅ……っ」
息もできないようなキスをしてると逃れようとする。それを、さらに自分に引き寄せて、キスする。
「……っん……」
目が涙に濡れて。オレの服をきつく握り締めてる。
体から、力が抜けていく優月を抱き締めたまま、キスした。
何でイライラするんだか。
――――…分かんねえけど……。
キスされてる優月は――――……可愛い。
愛おしい、と思う位。
一生懸命なのも、苦しそうに歪むのも。でも気持ちよさそうなのも。
出さないようにしてる声が漏れるのも。
可愛くて、一度キスを離したけれど、もう一度唇を押し付けた。
ゆっくり、キスを離して、優月を見つめてると。
優月が瞳を開けて、見つめ返してきた。
「――……玲央?」
「……オレと、セフレに――――……なりたいの?」
本当に、オレと、セフレになんか、なりたいのか?
「……オレ、玲央と居たいから。なれるなら、なりたい」
「――――……」
何て言うのがいいんだか。
過去に色々ありすぎて、恋人は欲しくない。
だけど――――……優月とは、居たい気がする。
恋人は欲しくないのに。
優月に、セフレになりたいなんて言われると……。
セフレが何人も居るって言ってるオレに、恋人になりたいなんて、優月は言わねえか、とも、思うのだけれど。
……それでも、なんだか、すげえ苛つくし……。
色々葛藤した後。
「――――……分かった。いいよ」
そう言った。
恋人は、いらない。
――――……優月とは会いたい。
優月がセフレでいいというなら――――……。
とりあえず、それで、会えるなら。
「――――……お前と会いたいって、オレ言っただろ……」
言いながらも、何だか納得しない自分。
なのにオレの言葉に、なんでだか嬉しそうに笑う優月。
つか……。
優月との間に、セフレなんて言葉、使わずに、会おうと、思ってたのに。
納得は行かないわ、モヤモヤするわ。
◇ ◇ ◇ ◇
連絡先を交換しながら学校まで歩き、1限に向かう優月と別れた後。
バンドの部室に入り、椅子に座ってテーブルに突っ伏した。
くっそ。
なんか――――…… 意味わかんねぇ。
「……って、うっわ、何、玲央! 早や! 何してんの!」
ドアが開くと同時に叫びながら入ってきて、目の前に立ったのは、勇紀。
「朝からうるせーよ……お前こそ何してんだよ」
「オレは彼女が1限だからって付き合って学校来て、暇だったからここで時間潰しにきただけ」
「……あ、そ」
また彼女できたのか。
もうそこに突っ込む気もせず。突っ伏したまま向けてた顔をまた、下に戻した。
「何、どーしたの?」
「――――……ちょっと整理してるから、黙ってろ」
「じゃ整理したら話して」
そんな声に、ああ、と頷いて。
ため息を吐いた。
突っ伏したまま。どれくらい経ったか。
「……なあ、玲央さ、今日オレと一緒の2限からだよね」
「……ああ」
「何で今ここに居んの?」
「……今朝まで一緒にいた奴が1限だったから」
「……うわ、気持ち悪」
「……うるせ」
「……だって、その子の為についてきてあげたって事だろ?」
「――――……」
優月の為についてきてあげた、というよりは……。
オレが、ここまで一緒に来たかったからな気がする。
そう思いながらも、そんな事を言ったらますます勇紀が騒ぎそうなので、黙ってスルーした。
その時、またドアが開いた。
「おー、勇紀、早いな? ……って、そこにつぶれてんの、玲央か?」
「おはよー、甲斐。そう、これ、玲央」
甲斐の声がして、ため息。
なんでお前らこんな朝早くからここに来るんだ。
オレは、この時間、1人で考えるつもりだったのに。
「甲斐、1限は?」
「休講。最悪。……昨日掲示板見て帰るの忘れた」
「うわー最悪」
勇紀と甲斐の会話を聞きながら、斜め前に座った甲斐に顔を向ける。
「おす、玲央。 つか、なに、どーした?」
苦笑いの甲斐。その隣で、勇紀が笑う。
「なんか考え事してるらしいよ。整理したら話すっつーから待ってるとこ」
「へー。……なあ、颯也は来てねえ?」
「来てないけどなんで?」
「颯也、オレと同じ授業だし。多分昨日、掲示板見てねーと思うんだよな、言ってなかったし。あいつもこの時間空いたと思うんだけ…」
その時。がちゃ、とドアが開いて。案の定というのか、颯也が顔を見せて。
玲央たち3人が揃っているのを見て、ドアの所で固まった。
「――――……何してんだ?」
「はは。おはよ、颯也。止まってねーで入ってきなよ」
勇紀が笑いながら颯也に話しかけてる。
「……甲斐は居るかなと思ったけど、勇紀も居たか――――……つか、玲央は、何してんだ」
「……」
朝は嫌だと、1限を取らなかった事を皆知ってるので、例にもれずこの反応。
「オレは彼女に付き合ってついてきただけ。 あ、玲央も、朝まで一緒だった子に付き合って、ついてきたらしいよ」
勇紀が言った瞬間。
甲斐と颯也が、は?と固まった顔で、オレを見た。
その顔を見て、勇紀がクッと笑い出した。
「……だよなー、そうなるよなー、はー、笑える……」
……なんでお前は朝からそんなテンション高くて元気なんだ。
突っ込みたいけど、それすら面倒。
「で、さっき甲斐にも言ったけど、玲央は、何か考えてて、整理中なんだってさ」
勇紀がそう言うと、すごい顔で玲央を見ていた2人は、顔を見合わせて、肩を竦めてる。
「……つか、お前がこの時間にここに居る事自体、異常事態……」
颯也がため息とともに言う。
「なに。またすごいのに手ぇ出しちゃったとか? ストーカー化した?」
甲斐の言葉に、ため息をつきながら、首を振る。
「……つか、しばらく放置しといて」
それだけ返して、机に組んだ腕につっぷした。
あなたにおすすめの小説
売れないアイドルの俺が人気イケメン俳優とBL営業することになった理由
スノウマン(ユッキー)
BL
パン屋の息子で、売れないアイドルグループの中でも更に不人気の三井 恭弥(みつい きょうや)は、人気番組の数々を手掛けている有名ディレクターの動画配信サイトでの番組で、人気絶頂の爽やかイケメン俳優、鷹野 龍慈(たかの りゅうじ)と手作りパン対決をする事に。
パン屋の息子なのに惨敗した恭弥は自分の所為で実家のパン屋まで評判が落ちるのではと気づき、泣きながら実家のパン屋は美味しいと訴える。番組での自分の役割を放棄した態度を鷹野にきつく叱られるが、その後立て直し締めの映像を撮り切る。
その一件で鷹野に気に入られた恭弥。鷹野の作戦で実家のパン屋を助けられたことで、何故か世間で【DV彼氏と、彼氏と別れられないアイドル】としてバズることになり――。
『2度目の世界で、あなたと……』 ― 魔法と番が支配する世界で、二度目の人生を ―
なの
BL
Ωとして生まれたリオナは、政略結婚の駒として生き、信じていた結婚相手に裏切られ、孤独の中で命を落とした。
――はずだった。
目を覚ますと、そこは同じ世界、同じ屋敷、同じ朝。
時間だけが巻き戻り、前世の記憶を持つのは自分だけ。
愛を知らないまま死んだ。今度こそ、本物の愛を知り、自ら選び取る人生を生きる。
これは、愛を知らず道具として生きてきたΩが、初めて出会った温もりに触れ、自らの意思で愛を選び直す物語。
「愛を知らず道具として生きてきたΩが転生を機に、
年上αの騎士と本物の愛を掴みます。
全6話+番外編完結済み!サクサク読めます。
災厄の魔導士と呼ばれた男は、転生後静かに暮らしたいので失業勇者を紐にしている場合ではない!
椿谷あずる
BL
かつて“災厄の魔導士”と呼ばれ恐れられたゼルファス・クロードは、転生後、平穏に暮らすことだけを望んでいた。
ある日、夜の森で倒れている銀髪の勇者、リアン・アルディナを見つける。かつて自分にとどめを刺した相手だが、今は仲間から見限られ孤独だった。
平穏を乱されたくないゼルファスだったが、森に現れた魔物の襲撃により、仕方なく勇者を連れ帰ることに。
天然でのんびりした勇者と、達観し皮肉屋の魔導士。
「……いや、回復したら帰れよ」「えーっ」
平穏には程遠い、なんかゆるっとした日常のおはなし。
過保護すぎる家族に囲まれて育ったら、外の世界が危険すぎました 〜冷酷公爵の父と最強兄たちに溺愛される日々〜
由香
恋愛
過保護な父と兄たちに囲まれて育った少女。
初めての外は危険だらけ——のはずが、全部“秒で解決”。
溺愛×コメディ×ほんのり成長の、ほっこり家族物語。
『アルファ拒食症』のオメガですが、運命の番に出会いました
小池 月
BL
大学一年の半田壱兎<はんだ いちと>は男性オメガ。壱兎は生涯ひとりを貫くことを決めた『アルファ拒食症』のバース性診断をうけている。
壱兎は過去に、オメガであるために男子の輪に入れず、女子からは異端として避けられ、孤独を経験している。
加えてベータ男子からの性的からかいを受けて不登校も経験した。そんな経緯から徹底してオメガ性を抑えベータとして生きる『アルファ拒食症』の道を選んだ。
大学に入り壱兎は初めてアルファと出会う。
そのアルファ男性が、壱兎とは違う学部の相川弘夢<あいかわ ひろむ>だった。壱兎と弘夢はすぐに仲良くなるが、弘夢のアルファフェロモンの影響で壱兎に発情期が来てしまう。そこから壱兎のオメガ性との向き合い、弘夢との関係への向き合いが始まるーー。
☆BLです。全年齢対応作品です☆
異世界に来て10年、伝えられない片想いをしている――伴侶と認識されているとは知らずに
豆腐と蜜柑と炬燵
恋愛
異世界に来て、10年。
田中緑(26歳)は、町の食事亭で働きながら、穏やかな日常を過ごしている。
この世界で生きていけるようになったのは、あの日――
途方に暮れていた自分を助けてくれた、一人の狼の半獣人のおかげだった。
ぶっきらぼうで、不器用で、それでも優しい人。
そんな彼に、気づけば10年、片想いをしている。
伝えるつもりはない。
この気持ちは、ずっと胸の中にしまっておくつもりだった。
――けれど。
彼との距離が少しずつ変わっていくたび、
隠していたはずの想いは、静かに溢れはじめる。
これは、
10年伝えられなかった片想いが、
ゆっくりと形を変えていく物語。