【恋なんかじゃない】~恋をしらなかった超モテの攻めくんが、受けくんを溺愛して可愛がるお話。

星井 悠里

文字の大きさ
166 / 856
◇週末の色々

「ライブ当日」*優月

しおりを挟む

   
 一緒にシャワーを浴び終えた。いつものようにドライヤーをかけ終えて。
 リビングに戻って水を飲んでると、玲央のスマホが震え出した。

「こんな時間に誰――――……あ……」

 少し眉を顰めてスマホを見た玲央は、ため息をつきながら、通話ボタンを押した。


「……もしもし、親父?」


 ――――……玲央の、お父さん。
 なんとなく、静かにしとこう、と思う。


「……あぁ、ん、そう。明日。ああ。…は? 母さん?」

 お水を飲みながら、大人しくしていると。
 少しして、玲央が電話を切った。

「……急に母さんが来たいとか言い出して」
「明日来るの?」

「断った。来ると面倒臭いんだよ……」
「めんどくさい?」

「いつも忙しくて放置してっから、思い出したようにたまーにうるさいんだよ……来ると、オレの知り合い皆に挨拶して回る感じ……」

 あは、と笑ってしまう。

「可愛いお母さんだね」
「いや、可愛くねえから。……人数も多くて相手も出来ねえからって断ったけど……来ると大変だから敢えて言ってねーのに……」

 ふふ。お母さん、玲央が可愛いんだろうなー。
 何かぶつぶつ言って困ってる玲央は、オレから見ても可愛い……。


「……笑ってねーで、寝よ」
 
 クスクス笑ってたら、苦笑いの玲央にそう言われた。

「あ、うん」

 髪も乾かしたし。歯も磨いたし。水も飲んだし。
 寝る準備完了、て事で、二人で寝室に向かう。

 ベッドに乗って、並んで布団に足を入れて。
 オレは、隣の玲央を見上げた。

「明日、頑張ってね、玲央」
「ん。待ってるから、なるべく早く来いよな?」
「うん」
「お前も仕事頑張れよ?」
「うん!」

「――――……おいで、優月」


 腕を優しく引かれて、ぎゅ、と抱き締められると、向かい合わせで横になって、少し見つめあった。

 なんだか、自然と、笑みがこぼれる。

「触りたいけど――――……明日早いから我慢する……」
「――――……」
 
 ふ、と苦笑いしつつ、うん、と頷くと、頬にキスされた。


「――――……おやすみ優月」
「ん。おやすみ……」

 髪に触れる優しい手に、すぐに眠気を誘われて。
 あっという間に眠りに落ちた。



◇ ◇ ◇ ◇
 

 翌朝、玲央と朝食を済ませてから、オレのマンションに寄ってもらった。
 久しぶりに着るので、ついたままだったクリーニングのタグを外してから、シャツを着て、パンツを履いてベルトをしめる。襟を立ててネクタイを締めていると、玲央がふ、と笑った。


「……似合わない?」
「いや。似合う」

「何で笑ったの?」

「スーツってさ……初めて思うんだけど」
「うん」

「すげえ脱がせたくなるんだなあって」
「……っ……着たばっかりだから、やめて」

「今じゃなきゃいーって事?」
「……そ、んな事は、言ってない……」

「きっちり着こまれると、崩したくなるなー……なんか、エロいな腰回りとか……」
「わー、触らないで……っ」

 腰に触れてくる玲央から一歩引きながら、ネクタイを締め終えて、ジャケットを着た。


「……崩さないでね」
「……今度崩させて」

「……えっと……いつかね」

 真っ赤にならないよう、何とか対応してるのに、楽しそうな顔をした玲央に手を引かれて、キスされてしまうと、また頬が染まる。

 もうどうしようもない……。



◇ ◇ ◇ ◇


 それから、駅に向かって、電車に乗った。
 ドアの隅に玲央と並んで立つ。


「チケットを受付に見せれば案内してくれるから。あと、打ち上げどーする?」
「とりあえず蒼くん来てからにする。あんまり玲央の近くに居れないだろうし、邪魔になっても困るから」
「分かった。……って、邪魔にはなんねーけど」
「うん」
「あのさ」
「ん?」

「オレ、もう誘いには乗らねーから」
「――――……」
「オレからも誘わないし」
「――――……」

「今日はまだ周りにそういう奴ら来ると思うけど……気にしなくていいから。その内来させなくするし」

 黙って玲央を見上げて。
 うん、と頷いた。

 とりあえず。
 今の玲央がそう思ってくれてるんだって事は分かった。

「じゃあな、優月。あとでな。気を付けて来いよ?」
「うん」

 ポン、と頭に手が置かれて、くしゃ、と撫でられた。

 さすがにこんなに人が居るとこでは、キスしないんだ。

 って当たり前か。なんて、可笑しくなりながら、玲央が電車を降りていくのを見つめる。
 玲央は、歩いて行かずに、電車が出るのを、待っててくれてるみたい。

「玲央、オレすっごく楽しみにしてるから」
「――――ああ」

 くす、と笑う玲央は。
 本当、カッコいいなと思う。


「ライブ終わったら、とりあえず電話するから」
「うん」

 頷いた所で、アナウンスが流れて、ドアが閉まった。ドア越しに見つめあって。ふ、と笑う。電車が進んで、離れていく玲央に、バイバイと手を小さく振った。


 こんなにずっと居るのに、離れるのが寂しいとかまた思っちゃうし。
 でも、別れる前の玲央を想うと、心が、ふわりと、弾むし。


 どんだけオレ、玲央のこと、好きなんだろ。



 今日。ライブ、ほんとに、楽しみだなあ……。




しおりを挟む
感想 830

あなたにおすすめの小説

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 全8話 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

隣国のΩに婚約破棄をされたので、お望み通り侵略して差し上げよう。

下井理佐
BL
救いなし。序盤で受けが死にます。 大国の第一王子・αのジスランは、小国の第二王子・Ωのルシエルと幼い頃から許嫁の関係だった。 ただの政略結婚の相手であるとルシエルに興味を持たないジスランであったが、婚約発表の社交界前夜、ルシエルから婚約破棄するから受け入れてほしいと言われる。 理由を聞くジスランであったが、ルシエルはただ、 「必ず僕の国を滅ぼして」 それだけ言い、去っていった。 社交界当日、ルシエルは約束通り婚約破棄を皆の前で宣言する。

ヴァレンツィア家だけ、形勢が逆転している

狼蝶
BL
美醜逆転世界で”悪食伯爵”と呼ばれる男の話。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

【完結済】「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。

キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ! あらすじ 「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」 貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。 冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。 彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。 「旦那様は俺に無関心」 そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。 バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!? 「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」 怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。 えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの? 実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった! 「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」 「過保護すぎて冒険になりません!!」 Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。 すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

若頭の溺愛は、今日も平常運転です

なの
BL
『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』続編! 過保護すぎる若頭・鷹臣との同棲生活にツッコミが追いつかない毎日を送る幼なじみの相良悠真。 ホットミルクに外出禁止、舎弟たちのニヤニヤ見守り付き(?)ラブコメ生活はいつだって騒がしく、でもどこかあったかい。 だけどそんな日常の中で、鷹臣の覚悟に触れ、悠真は気づく。 ……俺も、ちゃんと応えたい。 笑って泣けて、めいっぱい甘い! 騒がしくて幸せすぎる、ヤクザとツッコミ男子の結婚一直線ラブストーリー! ※前作『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』を読んでからの方が、より深く楽しめます。

処理中です...