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◇週末の色々
◇嬉しい*優月
しおりを挟む詳しい事は分からないけど、高級そう、としか言えない外観と内装。
エントランスから、エレベーターホールも、なんか全部高級ホテルみたい。
豪華だなぁ。……でも、すごく派手って訳じゃなくて。
なんか、丁寧に作られてますって感じの、高級感が半端ない。
エレベーターのボタンとかまで、何だかすごくオシャレでじっと見つめてしまう。
何だかキョロキョロしながら、玲央についていく。
鍵を開けて、中に招き入れられて、広い玄関にちょっと圧倒される。
「なんか」
「ん?」
「キレイなマンション」
「気に入った?」
「んー……キレイすぎて、ちょっと緊張する」
そう言ったら、すぐ慣れるよと言って玲央が笑う。
「お邪魔します」
言いながら靴を脱いで、こっちだよ、と言う玲央についていく。
いくつかのドアを通り過ぎて、奥の部屋までの廊下を歩く。
こんなとこに一人暮らしって。ほんとにすごいなあ。
なんて思いながらリビングに通される。
広い。窓がやたら大きい。
全体の色としては、黒と白がメイン。
床と天井、壁は白。テレビの背面の壁だけ、黒い。
木製の濃い茶色のテーブルに、黒い椅子。
黒のレザーソファに置いてあるクッションが白や青。黒のラグが敷いてあって、間接照明があちこちで淡く光ってる。
落ち着いてて、玲央のイメージそのまんまの部屋。
「……感想は?」
先に入ってた玲央がオレを振り返って、見つめてくる。
「……なんか、玲央、って感じ。カッコいい」
思ってるそのまんま言うと、玲央はふ、と笑った。
ドアの所で部屋を見回してたオレの前に玲央が戻ってくる。
「オレは、お前がここに居るのが、すげえ嬉しい」
「え」
なんかいま、すごく嬉しい事、普通にさらっと言われた。
また、耳まで熱くなってしまう。
「また赤くなる……」
くす、と笑った玲央の手が、オレの背中に回って、抱き寄せられた。
ちゅ、と頬にキスされる。
「あっついなー、顔……」
クスクス玲央が笑って、頬を両手で挟んでくる。
少し冷たい玲央の手。ちょっとだけ、熱い頬が冷えるけど。
「だって……ここに居るのが嬉しいとか……さらっと言うから」
そう言うと、玲央は、ん? とオレを見つめて。
「そういうの恥ずかしい?」
「……照れるよ」
「……そっか。でも、さ。オレ、人をここに入れたくないとか思うような奴だったのにさ」
「――――……」
「初めて連れて来たいって思った相手が、ちゃんとついてきてくれてさ」
「――――……」
それから少し間が空いて、玲央がくす、と笑いながらオレをまっすぐに見つめる。
「実際ここに優月が入っても全然嫌じゃないし、ここに居てくれて嬉しいとか、思えるのが ――――……なんか、今までの自分からすると、不思議でしょうがないんだけど……」
玲央は、言葉を選びながら、ゆっくり、話してくれてる。
「不思議だけど、でも、そういう風に思えるお前が、ここに居てくれるのが、嬉しいンだけど。……意味わかる?」
「……ぅん」
……分かる。
多分。ちゃんと、分かってると思う。
なんか。
――――……よく分かんないけど。
胸の奥が。
ちょっと、痛い。
「……優月、すげー好き」
笑みを含んだ優しい声でそう言われて、ぎゅ、と抱き締められる。
「……っ……うー……」
――――……堪えようと、思ったのに。
「………………っ」
なんでか分かんないけど、堪えきれなくて、涙が溢れ落ちてきた。
「?」
なんか変な気配を察知したらしい玲央が、不思議そうにオレを覗き込んで。
は? と固まって。それからオレの顔を上げさせて、慌ててる。
「え。は??? 優月?」
「………………っ」
「何で泣いて――――……」
ものすごく困った顔して玲央がオレを見てるので。
多分、嫌がってるとか、思ってるんだろうなと思って。
オレは、違う、と首を振った。
手の甲で、溢れた涙をぐい、と拭った。
「――――……なんか……嬉しくて…………」
「――――……」
「……ごめ、んね、ちょっと、待って…………」
まだ涙が零れて来そうで、俯いて、息を押さえようと唇を噛みしめた。
すぐに、玲央の手に上向かされて。
「……優月」
名を呼ばれると同時に、深いキスが重なって、きた。
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