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◇「恋人」
「誰のせい…」*優月
しおりを挟む「いらっしゃいませー! あ、優月くんと――――……」
レジにいたおばちゃんが微笑む。
「こんにちは」
挨拶をしていると、品出しをしていたおばちゃんも、ひょこ、と顔をのぞかせた。
「いらっしゃいー。あ、またお友達と一緒?」
「あ、オレ、玲央です」
玲央が、自分の名前を名乗ってるのを、何だか面白くて見つめていると、
おばちゃん達は、嬉しそうに笑った。
「玲央くんね。 優月くんとほんと仲いいのね」
「もしかして、猫好き?」
その質問、さっきも皆にされてたなあ……ふふ、と笑いながら玲央を見上げると。
玲央はオレを見て、ふ、と笑った。
流し目されると、瞳がキラキラする。玲央。
「――――……そうですね」
柔らかく、優しく笑って、オレを見ながら頷いてる。
さっきみたいに、優月が好きだから、とは言わなかったけど。
そんな、優しい顔でオレの事見つめてたら――――……。
かぁっと熱を持った頬に、玲央はぷ、と笑って。
オレの頭に手を置いて、少し前へ移動させながら、玲央はおばちゃんたちを振り返る。
「今日は、缶詰よりおやつの方がいいですか?」
多分、あまりに特殊な雰囲気のオレ達に、呆けていたおばちゃん達。
玲央の言葉に。「えっ、あ、うん、そう、おやつで」みたいに、言葉が切れ切れになりながら答えてる。
猫のエサの所に着くと、おばちゃん達から一応死角に入る。
「~~~っ……もー、玲央…」
オレは、しゃがみこんで膝を抱えながら、クロのおやつを見るふりをして。
顔を上げられない。
隣にしゃがみこんだ玲央は、クスクス笑いながら、頭を撫でて、オレを覗き込んでくる。
「顔、赤い、優月」
「誰のせいですか……?」
敬語で聞いてしまうと、玲央は、すごく可笑しそうに、ははっと笑う。
「オレ、お前の事見ただけじゃんか」
見ただけって。
まあ確かに、見ただけと言われたら、そうなんだけどさあ……。
「……玲央ね?」
「うん?」
「玲央の見た目とか、顔とかって、ちょっと、特別だからね? さっきのあれ、見ただけとか、絶対誰も言わないからね?」
「特別って……」
玲央はクスクス笑ってるけど。
「ほんとに、分かって?」
2人でしゃがんで、見つめ合って、そう言うと。
「――――……」
玲央は少しの間、オレをじーっと見つめていたけれど。
「そう言う風に困った顔して見てくんの、死ぬほど可愛いんだけど」
玲央は、はー、とため息で。小声でそんな事言ってくる。
なんか全然、論点がちがうよーー……。
しかもまたまた、恥ずかしいし。
しゅううう、と、自分から湯気でも出てるような気がしながら、俯いてると。ぽんぽん、と頭を撫でられる。
キスしたいと思ってる時に頭撫でてる。
さっき、そんな事を聞いちゃったから余計に、照れちゃうんだよう……。
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