313 / 878
◇「恋人」
「奏人くん」*優月 2/2
「……何かイライラするんだけど」
「……え?」
突然の、ちょっとムカムカした感じに。
戸惑っていると。
「何でお前は、玲央はオレのだし、みたいな顔しねーの?」
「……え、だって玲央、オレのモノではないし……」
「……玲央がお前が好きって言って、セフレと別れてんのに、なんで好きか分かんないとか、意味わかんねーし……」
はー、と奏人くんが、ため息を付いてる。
一応、セフレとかのところは、小さく言ってるから、まだ、冷静ではあるみたいだけど……。
「……いっつも、クールで、でもなんかたまに優しくてさ。――――見てるだけで目の保養だし。一緒に歩いてると、ほんと、すげーカッコいいし」
「――――」
玲央の事だよね。
……目の保養、は分かるけど……。
クール……。
……オレにとっての玲央は、クール、ではない。
もちろん見た目はそんなイメージあるんだけど。カッコいいし。
でも……どっちかというと、優しすぎて、熱っぽい。
でも、今までの玲央はきっと、ずっと、クールなまま、人と接してきたんだろうなと。それで良いと思ってたって、玲央言ってた気がするけど……。
「……なんか、何もかもどーでもいいみたいな冷めた感じが、めちゃくちゃカッコいいと思ってたし」
「――――」
「……それをこっちに振り向かせたいって、すげー思ってたんだけど……」
「そう……なんだね」
……そんな風に、好きだったんだ。
そっかー……。
――――ていうか、こんな風に、言ってるけど。
奏人くんはきっと、玲央の事、全部好きだったんだろうなあと感じてしまう。もうそれは感覚でしかないんだけど。
クールな玲央を振り向かせたいけど……セフレって関係だとそんなに動く事も出来なかっただろうし。玲央、好きになったら終わりとか、最初に、言っちゃってたんだろうし。
どんな気持ちなんだろう。
ずっと好きな人とそういう事だけはしてるけど、好きとも言えず、平気なフリして側に居るって。
オレ。
……玲央に、好きかって聞かれて。
好きって言えなかった時。 ――――あんなに、辛かったのに。
胸が痛くて、たまらなくなってくる。
「――――ってオレは何でお前にこんな話……」
はー、とため息をつきながら、オレを見て。
「……は?」
と言われて。あ、やばい、と思って、目を逸らそうとしてるのに、のぞき込まれた。
「……何で涙目??」
言われて、ああもう、ほんとオレのバカ、と思った瞬間。
「ごめん、なん、でもない……ゴミが……」
「――――」
絶対信じて無さそうな顔で、奏人くんはため息をついた。
「……こないだオレがキスして帰って、どー思った?」
「――――ほんとに好きなんだなあって思ったけど……」
「ムカつかないの?」
「―――― え……んー……難しいな。……嬉しくはないけど、ムカつくかって言われたら、ムカつくとは違うような……」
首を傾げていると。
「……あーもう、ほんとにライバルって思うには、張り合いなくて、ほんと腹立つ、何なの、お前」
「――――」
何なのって言われても……なんて答えるべきなのか……。
困ってると、奏人くんは、オレをじっと見る。
「オレ玲央といくつか授業一緒だし、話すからな」
「うん……」
「一晩とか、誘うかもよ」
「……う、ん」
「……うんじゃねえだろ、やめろって言えよ」
「そんな事言ったって……」
困ってる間に、駅前についてしまった。
なんとなく、駅の前で足が止まる。
「……何また、オレの勝手?」
「――――ん……というか……」
「――――なに?」
今まで隣で歩いていたけど、今は目の前。
まっすぐ見つめて。
「……オレが玲央を好きなのも、奏人くんが玲央を好きなのも、一緒だと思うから、オレにそれをやめてとか言うことは出来ないし……玲央が奏人くんとか、他の誰かをいつか好きになっても、それを止める事は出来ない……と思うんだけど」
「――――」
奏人くんは何も言わない。
「玲央がオレと居てくれる時間は、大事にする、から……」
「――――」
「なんていうか……あの……ごめんね……?」
もうなんか、最後なんて言っていいか分からなくてそう言ったら。
「……お前と話すとなんか、疲れるな……」
「……ごめん」
ごめんしか、言えなくて、俯くと。
「……なんかもう――――ホント疲れた」
もう一度同じようなセリフを言われて、うう、と思うと。
「……オレ、モテるんだよね」
「……そう、だろうね」
素直に頷けてしまう。
綺麗だけど。可愛くもあるし。カッコいいし。
見惚れちゃう位。
何だかものすごく長い沈黙があって。
え。どうしよう。
オレが、何か言うべき間なのかな。
え、でも、何を……??
と、内心めちゃくちゃ慌てていたら。
奏人くんが、大きなため息をついて。
「……玲央は好きだけど。――――もうオレ、他も探すし」
「――――え?」
「何だよ?」
「……他も探す???」
「他探す。……もうなんか、意味わかんねえもん、お前。こんなんを好きな玲央とか、もうほんと意味わかんないし。なんか、今すごいイライラしてるけど……」
うぅ。なんだか、あんまりな……。
こんなんて……。
「……もういいかなって、ちょっと、思った。ムカつくけど」
「――――」
なんだろう。
なんて答えるべき……??
「……じゃあな。 優月だよな、名前」
「え。あ、うん」
「奏人くんって気持ち悪いから、やめて」
「え? きもちわるい……??」
「……今度そう呼んだら、蹴り入れるから」
「――――ん???」
その言葉に、奏人くんを見つめると。
何だか、ちょっと――――。
面白そうな顔で、少し笑って。
……苦笑いみたい、ではあったけど。
――――笑ってくれたの、初かも……。
返事が出来ないでいると。
「じゃあな。お前と話してると、マジで疲れるから、帰る」
そう言うと。 颯爽と、ていう言葉がぴったりな感じで。
――――改札に消えて行ってしまった。
えっと。
……えー……と。
よく分かんないけど。
……ちょっと普通に話せたかも??
――――「奏人くん」気持ち悪いって……。
今度そう呼んだらって……。
――――他の呼び方なら、呼んでいいのかなぁ……?
謎。
でも。
なんか、少し、笑ってくれた。
何となく嬉しい。とか。思っていいのかな。
よくわかんないけど。
分かんない事ばっかりだったけど。
ホームに向かう、足取りは。
なんとなく、軽かった。
あなたにおすすめの小説
『2度目の世界で、あなたと……』 ― 魔法と番が支配する世界で、二度目の人生を ―
なの
BL
Ωとして生まれたリオナは、政略結婚の駒として生き、信じていた結婚相手に裏切られ、孤独の中で命を落とした。
――はずだった。
目を覚ますと、そこは同じ世界、同じ屋敷、同じ朝。
時間だけが巻き戻り、前世の記憶を持つのは自分だけ。
愛を知らないまま死んだ。今度こそ、本物の愛を知り、自ら選び取る人生を生きる。
これは、愛を知らず道具として生きてきたΩが、初めて出会った温もりに触れ、自らの意思で愛を選び直す物語。
「愛を知らず道具として生きてきたΩが転生を機に、
年上αの騎士と本物の愛を掴みます。
全6話+番外編完結済み!サクサク読めます。
過保護すぎる家族に囲まれて育ったら、外の世界が危険すぎました 〜冷酷公爵の父と最強兄たちに溺愛される日々〜
由香
恋愛
過保護な父と兄たちに囲まれて育った少女。
初めての外は危険だらけ——のはずが、全部“秒で解決”。
溺愛×コメディ×ほんのり成長の、ほっこり家族物語。
『アルファ拒食症』のオメガですが、運命の番に出会いました
小池 月
BL
大学一年の半田壱兎<はんだ いちと>は男性オメガ。壱兎は生涯ひとりを貫くことを決めた『アルファ拒食症』のバース性診断をうけている。
壱兎は過去に、オメガであるために男子の輪に入れず、女子からは異端として避けられ、孤独を経験している。
加えてベータ男子からの性的からかいを受けて不登校も経験した。そんな経緯から徹底してオメガ性を抑えベータとして生きる『アルファ拒食症』の道を選んだ。
大学に入り壱兎は初めてアルファと出会う。
そのアルファ男性が、壱兎とは違う学部の相川弘夢<あいかわ ひろむ>だった。壱兎と弘夢はすぐに仲良くなるが、弘夢のアルファフェロモンの影響で壱兎に発情期が来てしまう。そこから壱兎のオメガ性との向き合い、弘夢との関係への向き合いが始まるーー。
☆BLです。全年齢対応作品です☆
不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!
ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。
その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。
しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。
何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。
聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)
転生天使は平穏に眠りたい〜社畜を辞めたら美形王子の腕の中でとろとろに甘やかされる日々が始まりました〜
メープル
BL
毎日深夜まで残業、食事はコンビニの冷たいパン。そんな社畜としての人生を使い果たし、過労死した俺が転生したのは――なんと、四枚の美しい羽を持つ本物の天使だった。
「今世こそは、働かずに一生寝て過ごしたい!」
平穏な隠居生活を夢見るシオンは、正体を隠して王国の第一王子・アリスターの元に居候することに。ところが、この王子、爽やかな笑顔の裏で俺への重すぎる執着を隠し持っていた!?
災厄の魔導士と呼ばれた男は、転生後静かに暮らしたいので失業勇者を紐にしている場合ではない!
椿谷あずる
BL
かつて“災厄の魔導士”と呼ばれ恐れられたゼルファス・クロードは、転生後、平穏に暮らすことだけを望んでいた。
ある日、夜の森で倒れている銀髪の勇者、リアン・アルディナを見つける。かつて自分にとどめを刺した相手だが、今は仲間から見限られ孤独だった。
平穏を乱されたくないゼルファスだったが、森に現れた魔物の襲撃により、仕方なく勇者を連れ帰ることに。
天然でのんびりした勇者と、達観し皮肉屋の魔導士。
「……いや、回復したら帰れよ」「えーっ」
平穏には程遠い、なんかゆるっとした日常のおはなし。