【恋なんかじゃない】~恋をしらなかった超モテの攻めくんが、受けくんを溺愛して可愛がるお話。

星井 悠里

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◇「周知」

「希生さん」*優月

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 カーテンを閉めてる間にちょっと落ち着いて。
 皆の会話は、久先生が今日どこに行こうかって話にしてくれてたから、さっきの続きにはなっていなくて、少しほっとしつつ。

「店の予約とかしてないのか?」
「まだ店も決めてないな」

「でも車で来てんだろ?」
「帰りは代行頼もうかと思って。まあもしかしたら、蒼が来るかもって言ってたよな」

 玲央の質問に、希生さんが答えながら、久先生を見やる。

「そうだね」

 ふ、と笑いながら、先生が片付けを終えた。

「出ようか」

 その言葉に、皆で歩き出す。
 出入口の所で、玲央がふと振り返ってきて。

「あ、優月、それどっちか持つ?」
「え、大丈夫だよ」

「いいから、貸し――――……っと」

 言いながら前を全然見てなかった玲央が、出てすぐの段差で、かく、と足を取られた。


「っと……」
「わ」
「……ひっかかった」

 すぐ自分で元どおりになってたし、あんまり役に立ってないけど一応玲央を支えた手を離しながら、クスクス笑ってしまう。


「オレ、大丈夫って言ったのに。前見ないからだよ」


 ふふ、と笑いながらそう言ってから。
 なんかちょっと可笑しくなって、しつこく笑っていると。

「何笑ってンの」
「――――……玲央も転んだりするんだなーって思ったら」

「はー?」

 笑ってると、ちょっと嫌そうな顔で見られる。


「だって、なんか、転ぶとか、なさそう」
「つーか、転んでねーし」

 あ、認めないし……。

 ――――……なんかますます、笑ってしまうんだけど。


「持つから貸して」

 玲央が絵の道具、奪っていくみたいに持ってくれる。
 なんか。

 ほんとたまに、可愛い。

 ――――……とか。
 なんかこんなにカッコいい人に、可愛いとか、何でこんなに想っちゃうんだろうって思うんだけど。


 可愛い。
 ――――……愛しい? かなぁ。


 先生が教室に鍵を掛けて、門の所にも鍵を掛ける。
 玲央の車の隣に止まってたのが、希生さんの車だった。

 玲央が鍵を操作して、車の鍵が開く音。トランクに絵の道具を入れて、閉めた所で、希生さんが「玲央」と呼んだ。

「ん?」

 玲央が希生さんに視線を向けると。
 希生さんがふと、黙る。


 ――――……?

 なんとなく、オレも、玲央の隣で、立ち止まって。
 久先生も、希生さんの横で、止まった。
 4人で、車の側で向かい合う感じ。


「――――……今度、帰ってこれるか?」
「え? いつ?」

「近い内。連絡しろ。日を決めるから」
「実家に?」
「オレんとこに」

「……じいちゃんとこに?」

 あんまり無い事なのか、玲央が不思議そうにしてる。

「いいけど――――…… 何?」

 さっきまでポンポン軽く言いあっていたのに。
 何だか静かなやりとりなので、オレはただ黙って聞いていた。


「蒼の写真、どこに飾るか見たいだろ?」
「――――……んー。まあ」

 玲央は、ふ、と息をついて。


「いーけど、オレ結構忙しいけど」
「オレも忙しいから、合わせるんだろ」

 

「ん。まあ。 分かった」

 玲央が、何だかため息交じりに笑って、頷いた。
 何だか不思議な空気と会話だけど。

 この2人はきっと、これで仲良しなんだろうなぁと思いながら。
 何となく、黙ってたら。


「優月くんも連れて来ていいよ」

 希生さんの一言に。
 希生さん以外の3人で、え、と希生さんに目を向ける。

 オレ達の顔を見て、一瞬止まった希生さんが、ははっと笑い出した。


「そんなに驚かなくても良いだろ。 久も来ていいよ」
「……希生?」

 久先生はじっと希生さんを見て、名を呼んだ。
 玲央は、ちら、とオレを見下ろして。それから希生さんを見つめる。


「変な縁だよな。オレの孫と、久の孫みたいな子が、知り合いでさ」
「――――……」

 静かな場所だから。
 希生さんの声だけが、通る。

 ――――……なんとなく、誰も、返事をしない。




「……大事なら、連れて来なさい」


 急に変わった声と、口調。

 その言葉を理解するまで少しかかった。


 何となく誰のことも見つめられなくて、宙に泳がせていた視線。意味が分かってすぐに希生さんを見たのと同じタイミングで、玲央がオレを見た。
 それが分かったから、オレはすぐ玲央に視線を移した。


 ……どうしよう。
 バレてる……よね……?


 言葉には出せずに、玲央を見つめたら。


 見つめ合ってすぐ、玲央が、ふ、と微笑んだ。



 息を、飲む位。
 何だか、すごく、綺麗に。



「――――……」



 それから、希生さんの方をまっすぐ見つめて。


「分かった。連れてく」



 玲央が言う。
 静まり返った中で。




 何だか。
 何の音も、聞こえなくて。


 オレは玲央を、ただ、見上げた。









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