【恋なんかじゃない】~恋をしらなかった超モテの攻めくんが、受けくんを溺愛して可愛がるお話。

星井 悠里

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◇「周知」

「本当に好き」*優月

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 キスを離した玲央が、その手でオレの頬に触れて、すり、と撫でた。


「毎日、色んな事しようぜ、夏休み」
「――――……」

 見つめられてくしゃくしゃ髪の毛撫でられる。


「その合宿で作るはずだった思い出とかは、オレとか皆と、作ろーな」

 なんで玲央は。
 いっつもオレを、ワクワクさせるのかなあ。

 ――――……どうして、こんな、気持ちを持ち上げてくれるんだろ。
 

 すぐに変わった信号に、玲央が、車を発進させて。
 オレはといえば。何だか玲央がカッコ良すぎて、ドキドキしすぎて。

 引き寄せられて崩れてた姿勢を、まっすぐ戻すのに、精一杯。


 そんな事も知らず、玲央は楽しそうに、ぷ、と笑う。

「夏休みまで、まだ結構あるけどな」

 クスクス笑いながら。

「それまでに6月に学内でライブもあるし。それの練習で、その前にライブハウスでもまたやるし。7月テストが終わんねえと、夏休みんなんねーしな」

 なんか色々あるんだなあと、聞きながらうんん頷いていると。
 ふと気づいた。

「あ。夏休みは、ゼミの合宿はあるよ」
「はー? あんの?」

 玲央がちょっと嫌そうに言う。

「確か2泊って言ってたような気がする……」

「んー、それもやめたら?」
「……それは無理」

 笑いを含んだ声に、オレも笑いながら答える。

「……知ってる」
 ぷ、と笑いながら、玲央がオレをちらっと見る。

「つか、オレもそれはあるな……」

 はー、とため息。

「めんどくせーな。つか。合わせると4泊位、優月と会えないじゃん」

 むー、と若干膨れながら、ハンドルを、長い指でトントンしてる。


 ――――……なんか玲央って。
 ……オレにそんなに会ってたいんだなー。と。


 一連の会話。
 なんか全部、ものすごい嬉しいんですけど。



「お腹すいてる? 優月」
「うん。そうかも」

「まだ食べるとこ、30分くらいかかるからさ」
「うん。大丈夫だよ」

「後ろの袋、取って」
「?」

 後ろの座席を振り返ると、真ん中に紙袋が置いてある。

「取れる?」
「ん。取れ、そう――――……」


 手を伸ばして、紙袋の取っ手を引っ掻けた。

「見ていい?」
「いいよ」

 中を開くと。何だか、透明のセロファンとキラキラしたリボンに包まれた、なんだかものすごく可愛い包装。

「開けていいの??」
「いいよ」

 くす、と笑う玲央が、なんか優しくて。
 好きだなあ、なんて思いながら、包装を開けていくと。中に箱が入っていて。

 とめてあるシールを外しながら。
 あ。この箱に書いてある名前って……。


 思いながら箱を開けると。
 美咲に貰った……昼休み、びっくりな食べ方をしてしまった、あのチョコレートだった。


「……買ってきてくれたの?」
「ん、ちょっと時間あったし、駅のビルに入ってるって言ったろ? 寄って来た」

「……ありがと」

 ああ。もうなんか。本当に好きなんだけど。
 と思いながら、お礼を言うと。


「味分かんないって泣いてたからなー。全種類2個ずつ買ってきたから好きなだけ味わえよ」

 クスクス笑われる。

「食べていいの?」
「もちろん」

「玲央は、何食べたい?」
「優月と同じの」


 ……じゃあさっき、味分かんなかったやつにしよ……。
 キャラメル。

「はい」

 玲央の口に、入れてあげて。自分も、食べる。



「――――……あ、美味しー」

 うん。確かに、さっきも、この味だったような気は、するんだけど。
 玲央のキスに、全神経もってかれてたから……。


「これ、キャラメル? さっき食べたやつ?」
「うん。そう。あたり」


「――――……なんか、味とキスが頭ん中に両方残ってねえ?」
「……ん?」

「これ食べるとキスしてたこと、思い出すな」
「――――…………」


 言わないでください。
 必死で、思い出さないように、してるのに……。


 そんな気持ちで、何も言わず玲央を見つめると。
 玲央はそんなオレをちらっと見て、分かってるのかなんだか、クスクス笑ってる。
 



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