【恋なんかじゃない】~恋をしらなかった超モテの攻めくんが、受けくんを溺愛して可愛がるお話。

星井 悠里

文字の大きさ
336 / 856
◇「周知」

「離れる気」*玲央

しおりを挟む

 車を運転してきて、駐車場について連絡を入れるとすぐ電話がかかってきて、優月がやって来た。片付けてくるように言うと、なんだか少し恥ずかしそうな顔をして、絵を見てくか聞かれて。もちろん見てみたいと思って。

 優月と教室に入って絵を見始めた所で、まさかのじいちゃんに遭遇。


 優月の絵の教室に、オレのじいちゃん、「蒼さんの父親」で「優月のおじいちゃんみたい」で「じいちゃんの親友」の先生、と優月とオレ。

 しかも優月とじいちゃんは、一回もう会ってて。希生さん、とか呼んでるし。 ほんと、謎すぎる空間。

 あっという間に、優月とのこと、バレるし。


 優月の先生とじいちゃんと別れて、車に優月を乗せて、しばらく走ってきた。色んな事話しながら。

 ――――……話してる事は、ほんとに色々で。
 教習所の話から夏休みの話になって、それからチョコ食べさせて。
 奏人の話だったり。
 これからオレ達の予定を、どうするか、ていう話をしたり。

 優月と居るといつも思う事なんだけど。
 なんか今余計に思う。


「――――……オレさぁ、優月」
「うん」

「……今までさ」
「うん……?」

「あんま深く、人と付き合ってきてない、というか」
「……うん?」

「まあ友達は居るし……幼稚園から一緒だからそこらへんの奴らとはまあ割と仲はいいし、結構お互いの事知ってる奴ら多いけどさ」
「うん」

「……全部自分の好きなように動いて、好きにしてきたんだよなー、オレ」
「うん……?」

 なんか不思議そうに、優月が頷きながら、オレを見てるのが分かる。
 信号が赤にならないので、優月の方、見れないけど。

 ずっと繋いでる手を少し握ってみる。


「……なんかお前みたいに、人のことばっか考えてるのが、不思議だけど」
「――――……? オレ、そんな事ないけど……??」

 ……まあ。自覚無いんだろうけど。


「…………お前と居ると、なんかほんと……」
「――――……」


「……和むし」
「……何それ」

 クスクス笑う優月。


「……なんかそういうのに和んでるオレが不思議なんだけどなー」



 なんか。
 ほんとに色んな話をしてても。


 ――――……なんの話をしてても。
 ずっと、なんか、和んでるし。オレ。
 

 何なら、奏人と優月が一緒に帰ったとか。
 普通に聞いたら、元セフレと、今の恋人とか。修羅場かよ、と思うとこだけど。なんか優月だから大丈夫かなと思いながら話を聞いた。
 で、聞き終わって思ったのは。


 張り合いなくて、腹立つとか。優月と話すと疲れるとか。
 ――――……奏人のセリフ、何となく、気持ちが分かる気がする。

 優月が迎え撃つタイプだったら、奏人は気ぃ強いし、きっとほんと修羅場かもしれないけど。

 きっと、奏人も戸惑ったんだろうな。
 ほわっと流されて、意味わかんなかっただろうなと想像すると、苦笑いすら浮かびそうになる。

 優月って呼びそうとか。
 奏人「くん」呼びが気持ち悪いとか。

 何あいつ。優月と名前で呼びあう気、あんのかなと思うと。
 ――――……いつかそんな事になるのかな、とか。

 普通ならありえない話だけど。

 ……なんか、ありそうな気もして。

 優月はところどころ話そうとして止まったり。
 きっと、全部は言ってないんだろう。分かんないとこは奏人と話して、とか言ってるし。――――……つか、普通、奏人と話してとか、言わねえだろ。
 普通に考えて、元セフレと話して、なんて、言う奴居ない。


 ――――……でも、言っちゃうんだよなー、優月は。


 なんかそんな事を思っていると。
 ……たまらなく、可愛いなーと、思ったりして。


 信号で止まって。
 隣の優月を見つめると、まっすぐ見つめ返して、にっこり笑ってくる。


「優月」
「うん?」

「……オレ、お前と離れる気、無いからな」
「え。……あ、うん」


 びっくりした顔をして。それから、ふわふわ笑って頷く。


「うん。オレも。無い、よ?」


 ちょっと恥ずかしそうに。
 笑みながら言うのがほんと可愛くて。


 その頭をよしよし、と撫でた。 


 
 
しおりを挟む
感想 830

あなたにおすすめの小説

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 全8話 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

隣国のΩに婚約破棄をされたので、お望み通り侵略して差し上げよう。

下井理佐
BL
救いなし。序盤で受けが死にます。 大国の第一王子・αのジスランは、小国の第二王子・Ωのルシエルと幼い頃から許嫁の関係だった。 ただの政略結婚の相手であるとルシエルに興味を持たないジスランであったが、婚約発表の社交界前夜、ルシエルから婚約破棄するから受け入れてほしいと言われる。 理由を聞くジスランであったが、ルシエルはただ、 「必ず僕の国を滅ぼして」 それだけ言い、去っていった。 社交界当日、ルシエルは約束通り婚約破棄を皆の前で宣言する。

ヴァレンツィア家だけ、形勢が逆転している

狼蝶
BL
美醜逆転世界で”悪食伯爵”と呼ばれる男の話。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

【完結済】「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。

キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ! あらすじ 「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」 貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。 冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。 彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。 「旦那様は俺に無関心」 そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。 バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!? 「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」 怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。 えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの? 実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった! 「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」 「過保護すぎて冒険になりません!!」 Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。 すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

若頭の溺愛は、今日も平常運転です

なの
BL
『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』続編! 過保護すぎる若頭・鷹臣との同棲生活にツッコミが追いつかない毎日を送る幼なじみの相良悠真。 ホットミルクに外出禁止、舎弟たちのニヤニヤ見守り付き(?)ラブコメ生活はいつだって騒がしく、でもどこかあったかい。 だけどそんな日常の中で、鷹臣の覚悟に触れ、悠真は気づく。 ……俺も、ちゃんと応えたい。 笑って泣けて、めいっぱい甘い! 騒がしくて幸せすぎる、ヤクザとツッコミ男子の結婚一直線ラブストーリー! ※前作『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』を読んでからの方が、より深く楽しめます。

処理中です...