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◇「周知」
「離れる気」*玲央
しおりを挟む車を運転してきて、駐車場について連絡を入れるとすぐ電話がかかってきて、優月がやって来た。片付けてくるように言うと、なんだか少し恥ずかしそうな顔をして、絵を見てくか聞かれて。もちろん見てみたいと思って。
優月と教室に入って絵を見始めた所で、まさかのじいちゃんに遭遇。
優月の絵の教室に、オレのじいちゃん、「蒼さんの父親」で「優月のおじいちゃんみたい」で「じいちゃんの親友」の先生、と優月とオレ。
しかも優月とじいちゃんは、一回もう会ってて。希生さん、とか呼んでるし。 ほんと、謎すぎる空間。
あっという間に、優月とのこと、バレるし。
優月の先生とじいちゃんと別れて、車に優月を乗せて、しばらく走ってきた。色んな事話しながら。
――――……話してる事は、ほんとに色々で。
教習所の話から夏休みの話になって、それからチョコ食べさせて。
奏人の話だったり。
これからオレ達の予定を、どうするか、ていう話をしたり。
優月と居るといつも思う事なんだけど。
なんか今余計に思う。
「――――……オレさぁ、優月」
「うん」
「……今までさ」
「うん……?」
「あんま深く、人と付き合ってきてない、というか」
「……うん?」
「まあ友達は居るし……幼稚園から一緒だからそこらへんの奴らとはまあ割と仲はいいし、結構お互いの事知ってる奴ら多いけどさ」
「うん」
「……全部自分の好きなように動いて、好きにしてきたんだよなー、オレ」
「うん……?」
なんか不思議そうに、優月が頷きながら、オレを見てるのが分かる。
信号が赤にならないので、優月の方、見れないけど。
ずっと繋いでる手を少し握ってみる。
「……なんかお前みたいに、人のことばっか考えてるのが、不思議だけど」
「――――……? オレ、そんな事ないけど……??」
……まあ。自覚無いんだろうけど。
「…………お前と居ると、なんかほんと……」
「――――……」
「……和むし」
「……何それ」
クスクス笑う優月。
「……なんかそういうのに和んでるオレが不思議なんだけどなー」
なんか。
ほんとに色んな話をしてても。
――――……なんの話をしてても。
ずっと、なんか、和んでるし。オレ。
何なら、奏人と優月が一緒に帰ったとか。
普通に聞いたら、元セフレと、今の恋人とか。修羅場かよ、と思うとこだけど。なんか優月だから大丈夫かなと思いながら話を聞いた。
で、聞き終わって思ったのは。
張り合いなくて、腹立つとか。優月と話すと疲れるとか。
――――……奏人のセリフ、何となく、気持ちが分かる気がする。
優月が迎え撃つタイプだったら、奏人は気ぃ強いし、きっとほんと修羅場かもしれないけど。
きっと、奏人も戸惑ったんだろうな。
ほわっと流されて、意味わかんなかっただろうなと想像すると、苦笑いすら浮かびそうになる。
優月って呼びそうとか。
奏人「くん」呼びが気持ち悪いとか。
何あいつ。優月と名前で呼びあう気、あんのかなと思うと。
――――……いつかそんな事になるのかな、とか。
普通ならありえない話だけど。
……なんか、ありそうな気もして。
優月はところどころ話そうとして止まったり。
きっと、全部は言ってないんだろう。分かんないとこは奏人と話して、とか言ってるし。――――……つか、普通、奏人と話してとか、言わねえだろ。
普通に考えて、元セフレと話して、なんて、言う奴居ない。
――――……でも、言っちゃうんだよなー、優月は。
なんかそんな事を思っていると。
……たまらなく、可愛いなーと、思ったりして。
信号で止まって。
隣の優月を見つめると、まっすぐ見つめ返して、にっこり笑ってくる。
「優月」
「うん?」
「……オレ、お前と離れる気、無いからな」
「え。……あ、うん」
びっくりした顔をして。それから、ふわふわ笑って頷く。
「うん。オレも。無い、よ?」
ちょっと恥ずかしそうに。
笑みながら言うのがほんと可愛くて。
その頭をよしよし、と撫でた。
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