【恋なんかじゃない】~恋をしらなかった超モテの攻めくんが、受けくんを溺愛して可愛がるお話。

星井 悠里

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◇「周知」

「1人だったところ」*優月

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 食事を終えてからまた玲央の車に乗って、しばらく走った。
 目に映る風景に、海が現れてからも、結構走って、少し広い駐車場で玲央が車を止めた。

「着いたよ、優月」

「海だー」

 海、久しぶり。
 ――――……海の匂い、する。


「優月、あっちから、降りよ」
「うん」

 駐車場の端の階段から、砂浜に降りれるみたいで、玲央が指さしながら歩き始める。その隣に並ぶと。

 ふ、と見下ろされて。

「手ぇ、つなぐ?」

 ん、と手を差し出されて。オレは、嬉しくて、その手に触れた。
 きゅ、と繋がれて、そのまま砂浜に降りた。

 ちょっと沈んで歩く、独特な感覚。


「砂浜歩くの、久しぶり」
「オレも歩くのは久しぶり」

「歩くのはって?」

 オレが玲央を見上げると、笑いながら見下ろしてくる。

「ドライブしたい時はよく来るんだけど、1人じゃ降りないから」
「なるほどー……じゃあ、玲央も楽しい?」
「ん、そーだな」

 玲央とクスクス笑いあって、砂を踏み歩く。



「――――……月、すごい綺麗……」
「ん。そうだな」


「海にさ、月が浮かんでるみたいだね」
「そうだな」


 玲央が、くす、と笑いながら、優しく頷く。
 手がより絡んで、なんだか玲央にすごく密着してる感じ。



「――――……今日ね、どこに連れて行ってくれるのかなって……」
「ん」

「……すごく、楽しみにしてたんだ」


 くっついてる玲央を見上げながらそう言うと、ちゅ、とキスされた。

 人気が無い、海。遠くにいくつか人影が見えるけど。



「もっと遊ぶとこに行きたかった?」
「――――……ううん。そんな訳ないでしょ」

「ん。だよな」
「うん」

 クスクス笑いあって、そのまま、波打ち際にたどり着いた。


「サンダル履いてたら、入るのになぁ」
「今度また来よ。タオルとかも無いし」
「そだね。――――……海、キレイだね。波の音。いいなー」


 玲央の手を解いて、砂浜にしゃがんで、砂に指先で触れてみる。

 サラサラして、心地いい、感触。


「玲央、海まで、良く走るの?」
「ん。たまにな」


 頷きながら、玲央もオレの前にしゃがんだ。
 砂を指で辿ってると。
 玲央もオレの指先を見てる。


「1人で?」
「――――……1人で来てた」

「……そうなんだ」

 くるくるなぞってるのを止めて。
 同じようにしゃがんで、同じ目線に居る玲央を見つめた。



「……玲央が1人だった色んな所に」
「ん」


「オレを入れてくれるのって……」
「――――……」



「なんか、嬉しい」

 なんか本当に嬉しくて、ふ、と笑んでしまう。


「――――……オレ、優月を、他に何に入れてる?」
「ん?」
「1人だった色んな所って言ったろ」
「ああ……」

 んー、と考えながら。


「玲央の家に連れてってくれたり。一緒のベッドで寝てくれたり……」
「――――……」


「朝も早く起きて、一緒に食べて――――……とかさ? してなかったって言ってたでしょ」

 クスクス笑いながら、オレが言うと。

 ――――……そうだな、と玲央が静かに言う。


「……手ぇ繋いで歩くとかも、してねーしな」


 立ち上がった玲央に、手を差し出されて。
 その手に触れると、また近くに引き寄せられる。


「……なんか、オレ、そういうの聞いてると……」
「うん?」

「――――……1人で動けなくなってるみたいじゃねえ?」


 めちゃくちゃ苦笑いの玲央に、ぷ、と笑ってしまう。



「お前、横に居ないと、嫌なのかもな」


 そんな風に言って、また、顔が、近づいてくる。
 ほんとに。綺麗な顔……なんでこんなにカッコいいんだろ。


 じー、と見つめてると、柔らかくキスされて。
 それから、ぷっと笑われる。


「そんなマジマジ見てンのは、何で?」
「……カッコ良すぎるなーって、思って」


 はは、何それ。と玲央が笑う。


 ――――……オレ、本気なんだけど。
 と思いながら、ゆっくり唇が重なってくるのを、玲央を見つめたまま受ける。



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