【恋なんかじゃない】~恋をしらなかった超モテの攻めくんが、受けくんを溺愛して可愛がるお話。

星井 悠里

文字の大きさ
369 / 856
◇「周知」

「香水」*玲央

しおりを挟む

 道は空いていたので、早めに家について、服を着替えて学校の準備をして、のんびり出発。出発してから、思い出して、昨日買って鞄に入れたままだった香水を取り出した。

「なに?」
「つけて良い?」
「香水? 玲央の匂い?」
「違う。優月に似合いそうだなーと思って、昨日買ったんだけど」

 そう言ったら、目の前の優月の顔が嬉しそうに綻んだ。

「オレに似合いそうな香水ってなんだろう。付けてみて??」
「うなじでいい?」
「うん、どこでも……」

 後ろから項の辺りにつける。

「わー……いい匂い。レモン?」
「つけ始めはレモンで、時間が経つとムスク系になるって」

 へえ、そうなんだーと、優月が楽しそうに笑いながらオレを見上げてくる。

「優月はこの匂い、好き?」
「うん。好き。すっごく良い匂い」
「じゃあ、やるよ、これ」

 優月の手に、小さな小瓶を渡してやると、優月は、わー、ありがとう、と顔を輝かせている。


「オレ、いい匂い?」

 そう言って笑うので、少し近づいて匂いを嗅ぐ。

「ああ」
「ありがとね、玲央」

 嬉しそうな優月が、香水をつけたことが無いとか、そんな話をしている内に学校についてしまった。

 ずっと一緒に 居すぎる位に居るのに、ここで別れる時、いつも、別れたくないなと思うって、と、自分に少し呆れていると。

 優月が、苦笑いしながらオレを見上げた。


「まだ一緒にいたいなーって思っちゃうのって、おかしいよね……」

 少し言い辛そうにそんな風に言う。

 ――――……自分に呆れて、口に出さないオレと、反対に、素直にそう言って、オレをまっすぐ見つめる優月。比べると違いすぎて、笑ってしまう。


 ほんと、素直。

 ――――……可愛い。


「……オレも、そう思ってた」
「え。玲央も? ほんとに?」
「ああ」

 多分オレ。この類の事、言うのって――――……相当、珍しい。
 優月と居ると思うけど、今までは思わなかった。

 離れたくないとか別れ際に言われると、散々居たのに何で別れ際にまた、とむしろうんざりするような奴だったし、オレ。
 思いもしなかったんだから、他の奴に言った事は無い。


「そっかー、玲央も寂しいなら…… 頑張ろうかなぁ」
「何だそれ、どういうこと?」

「オレ1人が寂しいのはやだけど、玲央も寂しいって思ってくれてるって思えば、嬉しくなる気がする」
「――――……」


 キス、したい。
 こんなに周りに人目が無ければ。くそ。

「待ち合わせとか決まったら連絡するから」
「うん。分かった。じゃあね、玲央」

「あ、優月」
「ん?」

 香水、少し薄れたのかな。と思って、優月のうなじに顔を寄せて。

「あぁ、でもまだレモンのままだな」
「――――……っ」

 皆が周りに居るからなのか、優月が、うなじをぱ、と押さえて、かあっと赤くなってる。

「あ、悪い、匂い変わったかなと、おも――――……」


「こーらーー!」
「は?」

 横から、突撃を受けそうになって、咄嗟にかわすと。

「勇紀……」
「避けるなー! っか、玲央は朝から公衆の面前で、何で優月の首に顔埋めてんだー!」
「うるせー、騒ぐな」

 突然の勇紀の乱入に、優月が赤いままで、あわあわしてるし。


「ちがうって。優月のうなじに香水付けたから、その匂い、今どうなったのかなってかいだだけ」
「周りの人間は誰もそんな風には思わないからな!」

「って、別にお前以外誰も気にして無さそうだけど」
「皆大人だから見ないふりしてんだっつーの! かわいそうに、こんなに真っ赤になって」

 勇紀が優月を抱き締めて、ポンポン、と背中を叩いている。


「つか、抱き付くな」

 勇紀をはがしていると、優月が、おかしそうに笑い出した。





しおりを挟む
感想 830

あなたにおすすめの小説

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 全8話 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

隣国のΩに婚約破棄をされたので、お望み通り侵略して差し上げよう。

下井理佐
BL
救いなし。序盤で受けが死にます。 大国の第一王子・αのジスランは、小国の第二王子・Ωのルシエルと幼い頃から許嫁の関係だった。 ただの政略結婚の相手であるとルシエルに興味を持たないジスランであったが、婚約発表の社交界前夜、ルシエルから婚約破棄するから受け入れてほしいと言われる。 理由を聞くジスランであったが、ルシエルはただ、 「必ず僕の国を滅ぼして」 それだけ言い、去っていった。 社交界当日、ルシエルは約束通り婚約破棄を皆の前で宣言する。

ヴァレンツィア家だけ、形勢が逆転している

狼蝶
BL
美醜逆転世界で”悪食伯爵”と呼ばれる男の話。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

【完結済】「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。

キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ! あらすじ 「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」 貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。 冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。 彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。 「旦那様は俺に無関心」 そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。 バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!? 「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」 怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。 えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの? 実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった! 「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」 「過保護すぎて冒険になりません!!」 Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。 すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

若頭の溺愛は、今日も平常運転です

なの
BL
『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』続編! 過保護すぎる若頭・鷹臣との同棲生活にツッコミが追いつかない毎日を送る幼なじみの相良悠真。 ホットミルクに外出禁止、舎弟たちのニヤニヤ見守り付き(?)ラブコメ生活はいつだって騒がしく、でもどこかあったかい。 だけどそんな日常の中で、鷹臣の覚悟に触れ、悠真は気づく。 ……俺も、ちゃんと応えたい。 笑って泣けて、めいっぱい甘い! 騒がしくて幸せすぎる、ヤクザとツッコミ男子の結婚一直線ラブストーリー! ※前作『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』を読んでからの方が、より深く楽しめます。

処理中です...