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◇「周知」
「目玉焼き」*玲央
しおりを挟む「優月、明日の朝のパンとか買いにいこ?」
「うん」
マンションの下にある店に入って、カゴを持って2人で買い物。
「そーいえば……」
「ん?」
「オレ、こうやって明日の朝の食材一緒に買うのも、お前が初めて」
「そうなの?」
「そんな長く一緒に居ないし、一緒に何か作ろうとかないし」
「そっか」
優月はふふ、と笑ってオレを見つめる。
「オレ、玲央の初めてをいっぱい貰ってる感じ……?」
「そうだなー。オレ、今までやってねー事、結構あったんだなーと最近よく思ってる」
「そうなの?」
「オレさ、色んな事経験してると思い込んで生きてきたような気がする」
「でも、玲央はほんとに何でも知ってそうな感じがするけど……」
「……なんかそう思ってた。全然違ったみたいだけど」
「全然って事は、絶対無いと思うけど」
優月はそんな風に言いながら、オレを見上げてくる。
「色んな事知ってると思うけどな」
「どうだろうな。意外と普通の事、してない」
「……普通の事かあ。んー……普通の事、って、何が普通かって、難しくない? オレ、どれが普通なのかもよく分かんないけど……」
「……普通のデートとかも、そういえばあんました事ないかも。中高ん時に、学校帰りにどっか寄ったりとかはあったけど」
「じゃあ今度、どこかデートしよ? 映画とか見る? 遊園地とか、行く?」
「ん、行こ」
「即答だね」と笑ってから、「どこ行こうか決めようね」と、優月が楽しそうに言う。「ん」と頷いてから。
「なあ、優月、パンとご飯どっちがいい?」
「んー……パンかなぁ」
「OK。玉子買ってこう」
「うん」
カゴに玉子を入れてから、あ、と優月が笑った。
「何?」
「玲央は目玉焼き、どうやって焼くのが好き?」
「どーやって……普通にフライパンで焼くけど?」
「蓋する? 水入れる? 両面焼いたりする?」
「ああ、そーいうことか……そのまま裏がかりっとして白身が固まれば」
「うちの家族さー皆好きなの違うの。弟は両面焼いてかりっとして黄身も固いのがよくて、妹は、水入れて蓋して白身も黄身も柔らかいのが良いって。父さんは玲央と一緒で、母さんは、もうなんでもいいって言ってて」
「優月は?」
「オレほんとになんでもいいんだけど……どれも美味しいし」
「それどーやって焼くんだ?」
「だからね、ちっちゃいフライパンも使って、同時で違うの作るの」
「……大変だな」
想像して、クス、と笑ってしまう。
「でしょー? 母さんは、もーなんでも美味しいでしょ、て言うんだけどね」
オレもそう思うんだけど、と優月がクスクス笑う。
「明日、目玉焼きにするか?」
オレが言うと、優月は楽しそうに笑って頷く。
「うん。いーよ」
「どれで焼く?」
「玲央が好きなのでいいよ?」
「オレがやったことないやつ試してみるか。優月、どれが好き?」
「んー……黄身半熟で、白身パリパリ?」
「オッケ、じゃあ明日はそれで焼こ。で次はまた違うので」
「うん。分かった」
ふ、と笑んで見つめ合って。
「優月の家族、やっぱり、会ってみたい」
「……普通だけど」
「目玉焼きの話も、したい」
「え、したい?」
「したい。ていうか、その話してるとこ、聞いてみたい」
言いながら頷くと、優月はめちゃくちゃ楽しそうに笑って、うん、と頷く。
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