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◇「周知」
「ノロケ」*玲央
しおりを挟む「玲央さあ? すっげえ盛大なノロケだって気付いて喋ってる?」
「……ノロケ?」
ただの事実だと思って話してたけど。……ノロケてたか?
オレの声に出てない疑問がちゃんと分かったらしい2人は、ものすごく苦笑い。
「思い切り、ノロケだよー。優月の事が大好きで、すげー変わったって言ってるんだよね」
クスクス笑う勇紀。
「まあ、玲央が変わったのはもー今更なんだけど……なんか、改めて、すげーな。玲央が朝飯食べるっつーだけでもなんかおかしーのに作ってるんだもんな。どーせ、世話焼いてるんだろ?」
甲斐までそう言いながらオレに、愉快そうな視線を向けてくる。
「んー、まあ、盛大にのろけられたところで、授業いこーっと。じゃーねー」
「そうだな……じゃあな」
「あ、夏休みの事はまた後で決めよーね」
最後に勇紀が振り返りそう言う。二人はなんだかすごく楽し気に笑いながら、それぞれ自分の向かう教室の方へ散っていった。オレもゆっくりと歩き出しながら、少し考える。
――――……ノロケか。
……まあ言われてみれば、そうなのか?
でも、別に優月が可愛いとか、そういう事言ってノロケてるわけじゃねえよな。ちょっと生活変わったっていう話で……。
…………可愛いとこ、言いまくってたら、ノロケなんだろうけど。
今のってノロケに入んのか? よく分かんねえな。
……つか。可愛いといったら――――……。
……今朝の優月。
すげー、可愛かったな。
『玲央と、して寝ると……ものすごいぐっすり眠れるかも』
……あんなセリフ。あんなに真っ赤な顔をして言うとか。
なんなのアレ。
はー……。
マジで、最後まで襲わなかったオレをほめてやりたい。
めちゃくちゃキスしたけど。
よくあそこで耐えたよな。
――――……って、この話してたら、ノロケどころじゃねえのかな。
何て言われれるのか……。
まあ、あんな可愛いとこ、絶対ぇ誰にも、言わねえけど。
オレ、気持ちを煽られるとか、好きじゃなかった、気がする。
したい時はするし。したくねえ時に、煽られても面倒くせえだけだし。
だから、何でこんなに、優月にはその気にさせられるんだろうと、不思議でならない。しかも、本人にその気、ねえのに。
――――……と、そこでふと気づく。
……ああ、本人に、その気がねえからか。
優月に、オレをその気にさせようなんて気は――――……。
かけらもねえもんな……。
だから、嫌じゃないのか。
つかオレって。つくづく、めんどくせえよな……。
……その気にさせられるとか、嫌だとか。
――――……優月はその気がないから、嫌じゃないとか。
「――――……」
…………あれ、でも。
優月がオレを、その気にさせようとしてくるなら、
それはそれで、絶対すげえ可愛いかも。と思ってしまう。つーことは。
優月なら、別になんでもいいっつー事なのかもしれない。
「――――……」
これこそ、口に出したら、最大のノロケなんじゃねーのか?
……ほんと、どーかしてんな、オレ。
苦笑いが口元に浮かんでしまいそうになりつつ。
授業の校舎へと、足を速めた。
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